大海原に漕ぎ出せ! スタンドアップパドルボード 金子ケニーの挑戦

大海原に漕ぎ出せ! スタンドアップパドルボード 金子ケニーの挑戦 SUPPORT

大海原に漕ぎ出せ! スタンドアップパドルボード 金子ケニーの挑戦

スポーティ

カヌーのようなパドルを使って、立って漕ぐサーフィン“スタンドアップパドルボード”

安定して漕げるようにサーフィンより一回り大きく浮力が強い板を使い、ときには波に乗って、そしてときには大海原へ漕ぎだして行く気分爽快なマリンスポーツです。最近は湘南などでもよく見られるようになりました。

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湘南から大島まで行けるサーフボード

スタンドアップパドルボードは一般的なサーフィンと比べて、大きく分けて3つのメリットが有ります。

◯波がなくても楽しめる!

サーフィンは波に乗るスポーツ。つまり「乗れる波」が無ければ成り立ちません。そのため風がなく波の小さい日は、1時間海上で待ち続けて乗れる波が2〜3本、なんてのもざら。

スタンドアップパドルボードでは自分で漕いで進めるので、小さな波でも乗ることが可能。10分あれば5本は波に乗れる、と言われています。

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↓こんな感じで漕いで進みます

◯海の上のおさんぽは気持ちいい!

立って漕ぐためカヌーやサーフィンの移動時よりも視界が広く、その感覚はまさに「海の上のおさんぽ」。

中には釣りざおを持って沖に出て、サバやシイラなんかを釣り上げる人もいるとか。また岩に当たっても大丈夫な空気を入れた板を使えば、川下りにもチャレンジできます。

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◯遠くまで旅ができる!

うねりに乗せてれば漕がなくても進むため、3キロぐらいならば少しの練習で誰でも移動できるようになるとのこと。湘南から大島までの片道60キロを、流れにもよりますが約6時間で渡航することもできるとか。

サーファーにとっては海が混んでいるときは誰もいない波のあるポイントまで移動して、ひとりでまっさらな波に乗れることも大きなメリット。また本気のパドリングは1時間で600カロリー、1日2000カロリー程度を消費するので、サーフィンオフシーズンのトレーニングにも使えます。

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↓朝焼けの中のクルージング

日本の海をもっと身近に 日本代表金子ケニーの想い

スタンドアップパドルボードは5〜6年前ぐらいからハワイでブームになり、競技化されました。大会は基本的に海上の決められた導線内での早さを競います。ハワイでは、普通のおじさんおばさんがボードショーツを着て大会に出ている姿も見られると言います。

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2015年5月メキシコで行われるスタンドアップパドルボードの世界大会に、日本代表として出場するのはオーシャンパドラーの金子ケニーさん。

もともとアウトリガーカヌー(浮き付きカヌー)の選手として活動していたケニーさんは、ハワイでカヌー仲間に誘われて競技を開始。国内大会でいきなり全日本2位になったことをキッカケに、2014年から本格的にスタンドアップパドルボードのプロとして活動を始めました。

昨年11月に開催された第3回全日本選手権では見事優勝

昨年11月に開催された第3回全日本選手権では見事優勝


アウトリガーカヌーはハワイの伝統的な文化とされていますが、日本だって島国だしハワイアン以上の海洋民族。もともと海からたくさんのことを学んで生活していたんです。その証拠に八丈島に行くと漁船にはリガーが付いてるし、小笠原に行くとどこの浜にもカヌーがあるんです。

ケニーさんが生まれ育ち、今でもなお多くの仲間とサーフィンを楽しむハワイ。しかし現地の人から見ると日本人は「海を汚す観光客」扱いだといいます。

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しかしケニーさんは日本人こそ、自分たちの周りにある海を身近に感じて、もっと海に出てほしいと考えています。「海は危ないもの」ではないと教えるために、子どものためのカヌー教室を無料で開いたりもしています。

日本人も海とコミュニケーションをとれて、自然の一部になって海を渡れると証明したいんです。そのために僕が世界で活躍することによって、より多くの人に海を漕ぐ素晴らしさを知ってもらえればと。

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クラウドファンディングで世界へ

スタンドアップパドルボードは日本ではまだまだマイナー競技。スポンサーが付きづらく、海外を中心に行われる大会の遠征費は全てアスリートが負担することになり、出場するレースが限られてしまうのが現状です。

特に今回の世界大会は南米・メキシコで開催となり莫大な渡航費がかかるため、ケニーさんはクラウドファンディングでの支援募集を始めました。クラウドファンディングとは、企業ではなく個人ひとりひとりのスポンサーをインターネット上で集めるサービス。出資してくれた支援者には額によってさまざまなリターンがあります。

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今までに集まった金額は約35万円(2月中旬現在)。出資者の中には普段サーフィンを共に楽しむ知り合いや、スポンサー企業の社員が個人で出資してくれた、という話も聞いていると言います。

1000円でも自分が血と汗を流して稼いだお金を出してくれるのは、すごくエネルギーになるなと。資金が必要だから始めたんですけど、それ以上に“一人じゃない”というのを感じています。これだけのバックアップがあるなら世界大会でも実力以上のものが出せると思いますし、優勝以外目指すものは無いです。

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さまざまな想いを背に、世界の大海原へ漕ぎだしていくケニーさんの活躍が、日本の“海”を変える日も近そうです。