何故!?ブラインドサッカーとゾンビサッカーの意外な関係性

何故!?ブラインドサッカーとゾンビサッカーの意外な関係性 SUPPORT

何故!?ブラインドサッカーとゾンビサッカーの意外な関係性

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7月9・10日に開催される『第15回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権』。
その盛大な日本一決定戦と同じ場で、ゆるスポーツ「ゾンビサッカー」の記念すべき第1回日本選手権も行われようとしています。でも一体何故!?
謎を解くために、ブラインドサッカー日本代表強化指定選手の寺西一さんと、ゾンビサッカー開発者である世界ゆるスポーツ協会の堀田高大さんの対談を実施しました。「ガチ」スポーツと「ゆる」スポーツ。2つの日本選手権同時開催という異例の挑戦の裏に隠された、それぞれの思いや意図に迫ります。

トップ写真:ブラインドサッカー日本代表強化指定選手の寺西さん(左)と、ゾンビサッカー開発者の堀田さん(右)

ゾンビ誕生のきっかけは、ブラインドサッカーの体験会だった!

ーまず最初に、ブラインドサッカーとは何か教えて下さい。(インタビュアー:日本ブラインドサッカー協会山本康太氏)

寺西ー5人対5人でやるサッカーです。ゴールキーパー1人は目が見える状態、残りの4人はアイマスクをして全く見えない状態で行います。ボールは転がると音が鳴り、ゴールの位置を教えてくれる「ガイド」がいて、コートサイドには壁があります。視覚障がい者もできるように工夫されたサッカーが、ブラインドサッカーです。
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ーでは、ゾンビサッカーとは何ですか?堀田さん。

堀田ーゾンビサッカーは、人間とゾンビが人類の生き残りをかけて戦うという設定になっています。映画でよくあるパターンのやつです。

ルールが全く想像つかないですが(笑)

堀田ー人間とゾンビは5人対5人。ゾンビは目隠しをしてゾンビマスクを被り、両手を前に突き出して、うめき声をあげます。ゾンビが人間に触ると、人間がゾンビに食べられるというイベントが起きます。

ー試合中にイベント?

堀田ーはい。その時みんなで両手を合わせて「いただきます」と言い、人間が1人フィールドから減ります。人間を絶滅させるかボールを奪うと、ゾンビチームの勝利です。人間は逆にボールをゾンビに取られないようにパスを回し、3分間生き残ると勝ちとなります。また、ゾンビサッカーのボールは中にスピーカーが入っていて、悲鳴をあげます。

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「ゾンビサッカーのボールを是非ブラインドサッカーでも使って欲しい」と語る堀田さん

ーゾンビサッカーは、堀田さんが『OFF T!ME』(日本ブラインドサッカー協会主催の体験会)に参加されたのがきっかけで生まれたと伺っています。

堀田ーはい。ブラインドサッカーをゆるくできないかと考え、参加しました。その時、視覚を奪われた健常者が両手を前に出して何かを探すように彷徨いながら歩くのを見て、「あ、これ、ゾンビだな。」と気づき、瞬く間にゾンビサッカーが生まれました。

ー発想が飛躍していますね(笑)。寺西選手は、実際にやってみてどんな印象を受けましたか?

寺西ー普段ブラインドサッカーをやっているので、最初は似て非なるものなのかなぁという印象を受けたんですけど、自分がゾンビになった時に周りにどう見られてるのかを想像して、どう面白く見せるか、みたいなところに僕はゾンビサッカーの面白さを見出しました。

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寺西さんは選手として活躍する傍ら、日本ブラインドサッカー協会にも所属し、ブラインドサッカーの普及にも努める

健常者が「目隠しをして動く」というハードルも、ゾンビになることで一気に消える

ーブラインドサッカーは、体験自体は簡単ですが、試合を見て実際にプレーしたいと思う人はあんまり出てこないんです。健常者にとっては、ハードルが高いのかなって思います。

寺西ー実際にプレーしたいと言う人は強者が多いですね(笑)。一方でゾンビサッカーは、「これなら自分でもできるかもしれない」という気持ちを起こさせてくれる。ブラインドサッカーへのいい橋渡しなんじゃないかなと思います。

堀田ーそうですね。まさに、そのハードルを下げるためにゾンビサッカーがあると思っています。目隠しをして走ったりボールを蹴ったりすることが健常者にとって非日常のことなので、ここに一つハードルができてしまう。だけど、ゾンビサッカーを体験した人に聞くと、「ゾンビの真似をして」って言われると動きが一発で伝わるので、目隠しをしていても動きやすいと言われます。

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見ていて「面白い!」から、「やってみたい!」につながる

堀田ーゾンビサッカーの魅力についてお話するともうひとつ。さきほど寺西さんもおっしゃってましたが、ゾンビサッカーって周りで見ているとすごく面白いんですよ。ゾンビが彷徨うように歩く光景だったり、みんなで「いただきます」って言う時に妙な統一感があったり。見た人に、「あ、なんか自分でもできるんじゃないか」って思ってもらい、実際にやってもらうきっかけにする。

寺西ー今の話を聞いて思い出したんですけど、昔現代アートをかじってた頃に、見えない人同士がにらめっこをするという作品を撮ってコンテストに出したんですよ。当然ながら表情が見られないので、じゃあ何で笑うんだろうねっていう興味から。で、何が起こったかというと、ひとつは「間」に耐えられなくて笑ってしまう。あとは、周りで見ているギャラリーが言う面白いことを想像して笑ってしまう。ゾンビサッカーを初めてやった時に、これと一緒だなと思ったんですよね。

堀田ーなるほど。

寺西ー周りにいかに面白いことを言わせて、相手を笑わせるかが大事っていう。だから今言われた、周りから見て面白いっていうのは、にらめっこと近いものがあって、すごく懐かしい感覚があったんですよね。

ー周りから見て笑えるというのは、競技を考える上でのポイントだったりするんですか?

堀田:そうです。世界ゆるスポーツ協会は、写真を撮って面白い、見ている人にとっても面白いという点は大事にしています。「やってみたい!」という気持ちに繋がるので。

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「喋りづらい」と言いながらも、アイマスク・ゾンビマスクをすると生き生きとする二人

ゾンビサッカーを体験することで、ブラインドサッカーの凄さを感じて欲しい

ーゾンビサッカー日本選手権を開催することに対しての思い、今後の展望を教えてください。

堀田ーゾンビサッカーはそもそもブラインドサッカーをゆるくしたスポーツなので、色々な人がブラインドサッカーを観るきっかけになって欲しいなと思います。
ゾンビサッカーをすると、目隠しをした時に思うように動けないという気付きがあり、ブラインドサッカー選手はその中であれだけの動きをしているという感動が得られる。その凄さを肌で感じてもらいたいです。将来的には、日本選手権を続けていって、もっと規模の大きな大会になるといいなぁと思っています。

ーゾンビサッカー参加者や観戦者に対して、寺西さんからもお願いします。

寺西ー参加する方には全力で楽しんで頂きたいですし、観戦する方には思いっきり笑って帰ってもらいたいと思います。で、ゾンビサッカーの発展形として、また、ある種同じものとしてブラインドサッカーも観戦していただけるといいですね。せっかく同じ場所でやっていますし。

ー最後に、ブラインドサッカー大会への意気込みをお願いします!

寺西:私たちブラインドサッカーの選手は、この日本選手権に向けてみんな一生懸命練習してきています。歴史ある大会ですし、最もチームが集まる大会ですので、選手の1年間が凝縮されたハードなプレーっていうのを見てもらいたいと思います!

ーありがとうございました!

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text by 杉浦愛実
photo by 杉浦愛実

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