コース変更で何が変わった? シルクイート・デ・ゲッチョ・レースレポート

コース変更で何が変わった? シルクイート・デ・ゲッチョ・レースレポート WATCH

コース変更で何が変わった? シルクイート・デ・ゲッチョ・レースレポート

スポーティ

毎年7月末に開催される夏のスペイン名物レースの一つ、シルクイート・デ・ゲッチョ(Circuito de Getxo)。今年はコースが若干変更され、1周当たりの距離が昨年より長くなりました。

自転車好きのバスクのファンが大集合する、このレースの様子をレポートします。

TOP写真:優勝したジョン・アベラストリ選手(左)。第2位は昨年のこのレースの優勝者のアレックス・アランブル選手(右)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

コースの変更


Photo by Yukari TSUSHIMA.

夏にバスクで開催されるレースの一つ、シルクイート・デ・ゲッチョ。その名の「シルクイート」が示す通り、ゲッチョの街中の周回コースがレースの舞台となります。

昨年までは、1周15㎞のコースを10周するコースでしたが、今年からコースを変更。1週あたりの距離を4㎞ほど長くする一方、周回数を8回に減らしました。

この新しいコースを設計したのは、現役サイクリストでチーム・イネオス(Team Ineos)所属のジョナサン・カストロビエホ(Jonathan Castroviejo)選手。彼はこのゲッチョ出身のため、トレーニングコースの一部がレースの会場になりました。

レースのスタートは朝10時。その1時間前から出走前サイン台に選手たちが集まります。今年は晴天の下での開催となったこのレースですが、朝9時の時点ではまだ涼しく、快適な気温。

しかし、この日レース中は、気温が上がることが予想されていました。


スタート地点に向かうエウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス(Euskadi Basque Country Murias)。 Photo by Yukari TSUSHIMA.

昨年優勝したのは、カハ・ルラル・セグロス・RGA(Caja Rural Seguros RGA)アレックス・アランブル (Alex Aranburu) 選手。今年も彼の家族が応援に駆け付けました。

今年の優勝候補も筆頭は、彼のチーム。レース前、カハ・ルラルのチーム監督の言葉には、下記のような意思表示が明確にありました。

このレースは、体調のいいアランブル選手とアベラストリ選手の2枚看板で、優勝を狙いに行く。


カハ・ルラルの出走前サイン台。Photo by Yukari TSUSHIMA.

唯一のワールドツアーチームであるモービースターも、登りに強い選手が出走します。しかし、昨年このレース2着のカルロス・バルベロ選手が2週間前のレースで転倒し、鎖骨を骨折。

このレースに出走することはできませんでした。そのため、モービースターは、このコースを最も得意とするサイクリスト不在のまま、この日レースを迎えました。


モービースターのハイメ・カストリーリョ(Jaime Castrillo) 選手(写真右)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今回出場したチームは、全部で13チーム。フランスやポルトガル、アメリカといった海外国籍のチームも参加し、国際的なレースとなりました。

レース展開


選手は皆このような表情でゴールします。Photo by Yukari TSUSHIMA.

スタート直後、数人の選手が飛び出そうとするも、しばらくすると、メイン集団に吸収されることを繰り返すため、なかなか逃げ集団が決まりません。というのも、モービースターやムーリアス、カハ・ルラルといったスペインのチームが集団しっかりとコントロールしていたため。

特にモービースターは、選手全員が手段のほぼ同じ場所に位置し、メイン集団を高速でコントロールします。


モービースターの集団。Photo by Yukari TSUSHIMA.

そんなメイン集団から、本格的な逃げ集団が形成されたのは、スタートして40㎞を過ぎてから。6人の選手が飛び出します。


逃げ集団。Photo by Yukari TSUSHIMA

このコースの最大の見どころは、ゴール地点に向かうラスト500mからの上り坂です。周回数を重ねるごとに集団のスピードが上がり、ペースについていけない選手が続出します。

そして、メイン集団が逃げ集団を吸収すると、スプリント勝負に持ち込みたいカハ・ルラルが集団のスピードを上げて、レースをコントロールします。

最周回になると集団は崩れ、サイクリスト一人一人の余力が試されます。多くの選手はこの最後の1周を自分の限界までスピードを上げて走るので、ゴール後は倒れこむ選手が続出します。

今年は気温が高かったこともあり、例年より多くのサイクリストが苦しそうな表情でゴールしていました。


ゴール後、倒れこむ選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

今年のこのレースを制したのは、カハ・ルラルのスプリンターのジョン・アベラスツリ (Jon Aberasturi) 選手。

第2位になったアランブル選手と共に飛び出し、そのままゴールしました。第3位はフランス人のロレンツォ・マンザン(Lorrenzo Manzin/Vital Concept)選手。上位6人までが、10秒差でゴールするという接戦でした。

表彰式


表彰式にて。Photo by Yukari TSUSHIMA.

このレースが終わるころになると、沿道にたくさんの観客が集まります。そんな観客の中に、アベラストリ選手のご家族がいました。レースの間はずっと沿道から熱心に選手たちを応援していました。また、アベラストリ選手の愛犬も、応援に駆け付けていました。

このレースが終わると、多くのチームはスペイン国外で秋のレースを戦うことになります。そのため、この日が今季最後のスペインのレースになるチームもあります。

秋のシーズンに向けての各選手の体調が確かめられた、この日のレースでした。