港町でのロードレース Circuito de Gexto

港町でのロードレース  Circuito de Gexto WATCH

港町でのロードレース Circuito de Gexto

スポーティ

今年の優勝者、Caja Rural Seguros RGA(カハルラル・セグロス・RGA) の Alex Aranburu(アレックス・アランブル)選手。応援に駆け付けた家族の目の前での勝利でした。

毎年7月末に、スペイン・バスクの港町Gexto(ゲッチョ)で開催される自転車レースのCircuito de Gexto(シルクイート・デ・ゲッチョ)は、今年で73回目の開催を迎えた歴史のあるレースです。(メイン写真 photo by Yukari TSUSHIMA.)

コース解説

レースの名前の一部である「シルクイート」という言葉が表す通り、このレースは、ゲッチョとその近隣の町を舞台としたサーキット形式のレースです。選手たちは、1周18㎞のコースを10周します。

一般的に港町には、海に向かって開かれた坂道がたくさんあるものですが、ゲッチョの町もその例外ではありません。そうした坂が、このレースの主役の一つとなります。特にゴール前500m地点から続く上り坂はカーブも多く、レースの流れを変えるポイントとなります。

加えて、ゴール前100mは石畳区間があります。よく整備された新しい石畳なのでプロの選手にとっては大きな問題ではないでしょうが、ゴール前の最後のスプリントで誰が優勝するかを左右する要素になります。

ゴール直前の石畳区間(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

またこのレースは、なぜか雨の日に開催されることが多いのです。通常は現地バスク語で「シリミリ」と呼ばれるような、若干強めの霧雨程度の雨がふりますが、時には土砂降りのこともあったりします。雨に加えて、ここは港町なので、絶えず海から吹く風が選手たちを苦しめます。

とはいえ、上り坂の斜度も厳しいものではなく、距離も短いため、このレースの歴代優勝者のほとんどはスプリンターです。坂も登れるスプリンターがこのレースの主役になります。

出走チームと優勝候補


チーム右京もこのレースに出走。朝から元気なのはMarc De Maar(マーク・デマール)選手とOscar Pujol(オスカル・プジョル)選手(右2人)。(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

このレースに、今年は9チームが出走しました。日本からは前の週のオルディジアでのレースに引き続き、チーム右京が参戦しました。写真でもわかる通り、朝8時半の出走前サインにも関わらず、このチームは朝からとても元気でした。

優勝候補と目されていたのは、モービースター(MOVISTAR)のスプリンターであるCarlos Barbero(カルロス・バルベロ)選手。去年のこのレースの優勝者でもあります。


モービースターの出走前サイン台。右から2人目がCarlos Barbero選手(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

しかし、最も観客が盛り上がったのは、Caja Rural Seguros RGA(カハルラル・セグロス・RGA)がサイン台に立った時でした。このチームの選手のご家族が、応援に駆け付けていたためです。


Caja Rural Seguros RGA (カハルラル・セグロス・RGA) (Photo by Yukari TSUSHIMA.)

実は、この出走前サイン台でのチーム・プレゼンテーションの時点で、ゲッチョの空は黒い雲に覆われていました。選手や大会関係者は」口々に「雨、降るのかなぁ」と心配そうに話していました。

レース展開


先頭集団の4選手。1周目のゴール前(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

9時15分にレースは、スタートします。スタートしてすぐに、4人の選手が先頭集団を形成しました。優勝候補を抱えるモービースターは、この逃げ集団を容認したため、最大で2分の差が付きます。


メイン集団、ゴール前を通過中(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

レース中盤まで、4人の選手が快調に逃げ続けました。

7周目から8周目にかかるころに、とうとう雨が降りはじめました。幸いにも雨脚は、バスク語で「シリミリ」と呼ばれる程度のものでしたが、その雨が、選手たちが走っている路面を濡らします。雨と同時に、海からの風も強く選手たちに吹き付け始めました。


デマール選手と吉岡直哉選手(Photo by Yukari TSUSHIMA)

そして、スプリンターを擁するチームがメイン集団を本格的にコントロールし、先頭集団との差を詰めようとした時です。同じメイン集団のグループの後方で、落車が発生します。

この時点ですでに、ゴールまでは残り約40㎞ほどになっており、レースのスピードも上がりはじめていました。このような状態の中、落車に巻き込まれた選手をバックアップするために、各チームのアシストの選手たちが奮闘します。


レース終盤にBenjamin Prades(ベンジャミン・プラデス)選手(右)を引っ張る平塚吉光選手(左)(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

こうした集団後方の動きの一方で、落車の影響を受けなかったメイン集団の前方は、スピードを上げつつ周回を重ねます。そして、最後のゴール前スプリント。

石畳を乗り切り、一番最初にゴールしたのは、Caja Rural Seguros RGAの Alex Aranburu(アレックス・アランブル)選手。彼の家族がレースにこのレースの応援に駆け付けていました。もちろん、この「ファンクラブ」も大喜びでゴールした選手を迎えます。


優勝したAranburu(アランブル)選手と彼の家族(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

表彰式と応援団

ちなみに昨年の優勝者のCarlos Barbero選手は惜しくも2位、3位はEUSKADI BASQUE COUNTRY – Murias (エウスカディ・バスク・カントリー・ムリアス)のJon Aberasturi (ジョン・アベラスツリ)選手でした。


表彰式の様子。(Photo by Yukari TSUSHIMA.)

ちなみに、熱烈な応援団がゲッチョまで駆け付けたのは、優勝したアランブル選手だけではありませんでした。チーム右京の人気者、Oscar Pujol(オスカル・プジョール)選手に、こんなかわいい女の子が応援に駆け付けていました。


オスカル・プジョール選手の応援団はこの女の子。選手が左手に持っているイラストは彼女が描いたもの(Photo by Yukari TSUSHIMA.)