アメリカの高校部活動で盛んなクロスカントリー走とは?

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アメリカの高校部活動で盛んなクロスカントリー走とは?

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私は、アメリカの高校でクロスカントリー部のヘッドコーチ(監督)をしています。そう自己紹介しますと、スキーをやっているのかと勘違いされることが多いのですが、そうではありません。アメリカでクロスカントリーと言えば、普通は陸上競技の1分野で、野山を走る長距離走レースのことを指します。

このクロスカントリー走という競技、アメリカでは、殆どの高校や大学で行われているメジャーな部活動です。例えば、2016年リオ・オリンピックで、マラソンのアメリカ代表選手になった男女6名は、全員が高校か大学でクロスカントリーの経験者です。

学生スポーツとしての長距離走と言えば、日本では駅伝が大人気ですが、アメリカでそれに相当するのがクロスカントリー走と言えるでしょう。

全員が代表ランナー

クロスカントリー走のルールは単純です。前述の通り、陸上トラックではなく野山を走ります。あるときは、起伏の多い山間部であったり、フラットの芝生であったり、ダートであったり、その組み合わせであったりします。レース距離は、4~12キロと様々ありますが、カリフォルニアの高校部活動では、公式レースの距離は一律3マイル(4.8キロ)と決まっています。

レースは、よ~いどんで各部門ごとの参加者全員が一斉に走り、順位は個人と団体の両方で競われます。団体戦は、チーム内の上位5人の総合順位を合計し、ポイント数が最も少ないチームが勝ちというルールです(個人総合1位だと1ポイント、10位だと10ポイント)。仮に、2チーム以上が上位5人までの合計ポイントで同点になった場合は、6位目と7位目の順位合計で勝敗を決めます。

正式なクロスカントリー走レースの国際ルールでは、1チームの人数を7人までと規定しますが、アメリカの高校の大会では一部を除き、部員全員参加のレースが殆どです。例えば、ある学校から100人で、レースに参加したとしても、団体戦の成績に反映されるのは、チーム内の上位5人だけです。5人ギリギリで参加する学校のチームも同じやり方で計算します。従って、人数が多いチーム、つまり生徒人数が多い学校が当然有利です。

3マイル(4.8キロ)という距離はまあ誰でも走れます。レギュラーも補欠もなく、入部さえすればレースに出場することが出来ます。チーム内で5位以内でなければ、どれだけ遅くても、チームに迷惑はかかりません。参加するにあたってのハードルが最も低い部活動と言えるでしょう。

フットボール、野球、バスケットボール、サッカーなどがアメリカで人気のあるスポーツですが、それらは全て試合に参加できる人数に限りがあります。そもそも高校のチームに入部するために、選抜試験(トライアウト)があったりします。その点、クロスカントリーは誰でも入部できるので、部員数は学校内で一番多いケースが殆どです。

ある弱小チームの例

私が指導するチームは、小中高一貫の小規模な私立学校です。高等部の生徒は、全員で200人ほどしかいません。その中から15人程度の男女がクロスカントリー部に入ってきます。生徒数からの比率では悪くありませんが、人数が多い方が有利な団体戦では不利は否めません。チーム内に1人か2人速いランナーがいても、3番目以降のランナーが遅ければ、チームとしての順位は下がってしまいます。そのようなわけで、地区大会でもなかなか上位には入れません。

ある強豪チームの例

実は、私の息子が別の公立高校でクロスカントリー部に入っています。たまたまですが、その高校は地域では、トップクラスに入る強豪チームらしいです。クロスカントリー部員は、男女合わせて200人ぐらいいますので、団体戦の成績に反映される上位5人に入るのはかなり大変です。

前述した通り、レースの距離は3マイル(4.8キロ)。これを男子なら16:40、女子なら20:00を、この高校では標準タイムとしています。それより遅いとレギュラー選手(Varsity)として認められません。レギュラーでも補欠でも全く同じことをやるのですが、レギュラーになれば大学の入学願書で部活動としての箔がつきます。

この標準タイム、陸上選手から見れば全く大したことはないでしょうが、一般の人からすると、かなり速いです。私はフルマラソンを3時間半で走り、5キロ走のベストは20分ちょっとです。女子の標準タイムに届くかどうか微妙な位置です。男子の標準タイム(16:40)は多分一生無理ではないかと思います。

さすがに強豪チームだけあって、さらにトップクラスの男子ランナーともなりますと、タイムは15分を切ります。1キロ3分以下ですから、これは速いです。

夏に鍛えて、秋にレース

このようにクロスカントリー部と言っても、学校の規模によって人数やレベルは様々なので、カリフォルニア内にある全ての高校を生徒人数によって1部から5部までに分け、それぞれの部ごとに、州チャンピオンを決めています。それでも普段の練習でやっていること自体は、弱小高校でも強豪高校でもあまり変わりはありません。

クロスカントリーのシーズンは、学年が始まる9月から11月末までの約3か月です。シーズン中は、ほぼ毎週末のようにレースがありますので、平日の練習は、放課後に長くても2時間。週末のレースに向けた調整がメインの目的になります。シーズン前、夏休みの6~8月が実際に走力をあげる鍛錬期間になります。夏の暑さを避け、早朝に練習をする学校が多いようです。夏休みを利用して、1~2週間程度の合宿を行う高校も数多くあります。

誰でも入れるクロスカントリー部ですので、新入生の中には、それまで長距離走の経験がなく、始めは1キロも走り切れないような生徒でも入部してきます。そんな生徒でも、ひと夏の練習を過ぎた頃には、皆10キロぐらいは歩かずに走れるようになりますので、高校生の成長ぶりの早さには目を瞠るものがあります。

長距離走ランナーのピラミッド

このように、裾野が広い高校クロスカントリー界で優秀な成績を収めたランナーが大学チームにスカウトされ、さらにそこで抜き出た一握りのエリートランナーが、マラソンなどでアメリカのオリンピック代表選手になっていくのです。


アメリカ クロスカントリー 部活動