マトリックスパワータグのスペイン遠征最終戦 ブエルタ・マドリード・レポート

マトリックスパワータグのスペイン遠征最終戦  ブエルタ・マドリード・レポート WATCH

マトリックスパワータグのスペイン遠征最終戦 ブエルタ・マドリード・レポート

スポーティ

毎年5月に開催される自転車レースのブエルタ・マドリード。意外と登りの厳しい山があるスペインの首都を、サイクリストたちが3日間かけて走り抜けます。

このレースに、今回は日本からマトリックスパワータグが参戦。同チームにとって、このブエルタ・マドリードが3週間にわたるスペイン遠征の最後のレースとなりました。マトリックス・パワータグの奮闘ぶりをレポートします。

TOP写真:ブエルタ・マドリードの第1ステージのスタート前のマトリックスパワータグ。写真左から順に、ホセビセンテ・トリビオ選手、安原大貴選手、小森恭平選手、オールイス・アウラール選手、フランシスコ・マンセボ選手。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

ブエルタ・アストゥリアス

当初、今回のスペイン遠征でマトリックスパワータグが出走予定だったのは、先日お伝えしたブエルタ・カステーィヤ・イ・レオン(Vuelta a Castilla y León)とブエルタ・マドリード(Vuelta a Madrid)の2戦のみでした。

しかし、ブエルタ・カステーィヤ・イ・レオン終了直後、その翌週に開催されるブエルタ・アストゥリアス(Vuelta a Asturias)へのマトリックスパワータグの出場が急きょ決定します。事前に出走予定がなかったレースだったにも関わらず、アストゥリアスでの結果は、チーム関係者も満足できるものでした。

まず、ベテランのフランシスコ・マンセボ(Francisco Mancebo)選手が、連日の大逃げを決めて、山岳賞ジャージを獲得しました。また、スプリンターのオールイス・アウラール(Orluis Aular)選手は、第1ステージで第2位になりました。

アストゥリアス地方はスペインの北に位置し、数少ない野生の熊が住んでいるほど厳しい山岳のある地域です。そのため、例え比較的平坦なステージであっても厳しい登りを超えなくては、ゴール前のスプリント合戦に加わることはできません。

そうした中でのマンセボ選手の山岳賞とアウラール選手の2着を、スペインの自転車関係者も高く評価していました。

ブエルタ・マドリード


Photo by Yukari TSUSHIMA.

ブエルタ・マドリードの初日は、マドリード市内から少し離れたアランフェス(Aranjues)がスタートおよびゴールとなりました。この日のコースは3級山岳を7つ超える167㎞。スタート時点では、風が強めに吹いていました。

スタート時間は午前9時。その約1時間前に出走サイン台に来たマトリックスパワータグの選手たちは、長袖を着こんでレースに備えます。


Photo by Yukari TSUSHIMA.

出走サイン台で、司会はマトリックスパワータグを紹介しながら、

今日は、一番最初にマンセボ選手が集団から飛び出しますよ。

と言います。すると、マンセボ選手の答えは、

一番最初には逃げません。だれかほかの選手が逃げたら、それについてきます。

マトリックスパワータグのライバルチームの一つが、このチーム・コメタ(Team Kometa)。この日は創立者であるアルベルト・コンタドール(Alberto Contador)氏がチームを率います。


チーム・コメタ。コンタドール氏とともに。Photo by Yukari TSUSHIMA

そして、この第1ステージで優勝したのは、トータル・ダイレクト・エナジー(Total Direct Energy)のニッコロ・ボニファツィオ(Niccollo Bonifazio)選手。


Photo by Yukari TSUSHIMA

翌日の第2ステージのコースも、6つの3級山岳を超える少々ハードなもの。しかしこのステージで、スタート直後からマンセボ選手が先頭集団に入り、ゴール直前まで逃げ続けます。そしてこのステージ終了後、マンセボ選手が山岳賞ジャージを獲得しました。


Photo by Yukari TSUSHIMA

安原選手と小森選手は第3集団でこの山岳ステージを乗り切ります。


Photo by Yukari TSUSHIMA

最終ステージは周回コース。スタートおよびゴール地点は、サッカーチームのレアル・マドリードの本拠地である、サンティアゴ・ベルナデウ・スタジアムです。

この日、スタート直後から先頭集団を形成したのは、ホセ・ビセンテ・トリビオ(José Vicente Toribio)選手と安原大貴選手の2人。最後の周回まで、強豪チームがコントロールする大集団から逃げ続けました。


Photo by Yukari TSUSHIMA

また、前日に山岳賞を手にしていたマンセボ選手は、この日のレースを手堅くまとめ、最後まで山岳賞ジャージを守り切ることに成功しました。3ステージ中、2ステージで先頭集団に選手を送りこむことに成功したマトリックス。同じレースに出走していた他のチームにも、強く存在感をアピールしたマドリードのレースでした。

3週間のスペインのレースの成果は?


Photo by Yukari TSUSHIMA

ブエルタ・マドリードの全ステージ終了後、トリビオ選手にこの3週間のスペインでのレースの成果について伺いました。

日本のレースと比較すると、スペインのレースは距離も長いし、特にレース終了前の最後の1時間なんて集団のスピードが一気に上がるんです。だから、自分も含めたマトリックスの選手がスペインのレース展開に順応するのは大変だろうなと、スペイン入国前には考えていました。でも、レースを重ねるごとに、みんなうまくスペインのレースに対応できるようになりました。それは今回の遠征の成果と言ってもいいと思います。


Photo by Yukari TSUSHIMA

一方、安原選手と小森選手にスペインでのレースの印象を聞いたところ、

スペインでのレースって、楽しいですよね。

と頼もしい言葉が返ってきました。

マトリックスパワータグがスペインで出走した3戦のうち、2レースで山岳賞ジャージを獲得したマンセボ選手は、ブエルタ・マドリードでの表彰式の後、こう話しました。

来年のこの時期、またこのチームでスペインのレースを走りたいと思っています。だから、このレースでは山岳賞ジャージを着ることにこだわったんです。でも、正直言って、逃げた昨日のステージより、今日の最終ステージの方がきつかったです。


山岳賞ジャージのマンセボ選手 Photo by Yukari TSUSHIMA

スペイン遠征が終わった選手たちは、今年のツアー・オブ・ジャパンに出走予定です。スペインのレースを経験した選手たちの日本での走りに、どうぞご注目下さい。