世界に教えたい日本語「ノーサイド」 素晴らしきラグビー文化 6つの流儀
DO世界に教えたい日本語「ノーサイド」 素晴らしきラグビー文化 6つの流儀
「2試合を終え1勝1敗となった日本のラグビーW杯……」。実はアイルランド戦の前に一旦このように原稿を完成させていた筆者は慌てて書き直しました。2連勝です!!!まさか4年前の南ア戦に続き二度目の奇跡が起きるなんて想像もしていなかったのです!!!失礼致しました!!!日本ラグビー万歳!
そんな中、筆者は、フランスVSアルゼンチン戦を見に行って感激しました。外国同士のゲームを見るのは初めてでしたが、何が驚いたって、日本にアルゼンチン人こんなにいるのかってこと。フランス人も大勢いたので、スタジアムはまるで外国のような雰囲気。ノリも声援も日本戦では体験したことのないもので、これがワールドカップかと実感した次第です。
ところで、サッカーのW杯で日本人の観客がスタジアムを掃除して帰ったり、選手もロッカーを綺麗にして帰ることで世界中から賞賛されたことがありました。日本人として誇らしい気分になりました。
そんなことがラグビーW杯でも起こっています。是非多くの方に知って頂きたい素晴らしいラグビー文化をご紹介したいと思います。
メイン写真 photo by Mark Meredith
その1 世界が感涙! 外国の国歌斉唱で歓迎 言い出しっぺは浜畑
「日本人はマジ、アメージング」
「スゴすぎ!」
「日本のファンが大好きだ」
スタジアムで国歌を歌う日本人客。「君が代」ではありません。相手国の国歌です。日本VSロシアならロシア国歌、VSアイルランドならアイルランド国歌。アイルランドVSスコットランドでは、両国国歌を熱唱する日本人客まで。
さらに世界が感涙したのは、写真の青いジャージ、ウルグアイのマスコットキッズに選ばれた8才の日本人少年。なんと彼は、ウルグアイ国歌を一緒になって全力で唄ったのです。その映像は、ツイッターを通じて一瞬で世界を駆け巡り、「なんで知ってるの」「これだけで涙が出る」と、絶賛コメントが殺到しました。
実はこの活動は、ラグビー日本代表の元キャプテン・廣瀬俊朗さんの一言で始まりました。ドラマ「ノーサイドゲーム」の浜畑と言えば、ピンと来る方もいるでしょうか。
彼が中心になって活動する団体「スクラムユニゾン」が、外国の国歌を覚えて外国チームやファンを歓迎しようと提案し広めたのです。
スタジアムのある駅前やスタジアム内で、その日戦うチームの国歌を練習するグループを目にすることがあるかも知れません。その時には筆者も輪に入って一緒に練習してみたいものです。そうした日本ファンのおもてなしが見られるのも、ラグビーの素晴らしさだと思います。
その2 海外チームにお辞儀ブーム
オールブラックス(ニュージーランド)、オーストラリア、ナミビア、イタリア……ほぼすべてのチームが試合終了後、スタジアムのファンに向かってお辞儀をするようになりました。こんな光景は、これまでのW杯では見たことがありません。
当然のことながら外国にはお辞儀の習慣はありません。たとえるなら、それは我々日本人が家の中に靴のまま入るような違和感のある行為です。なのに、多くの外国チームがスタンドにお辞儀をしてくれるのです。
おそらく、相手国の国歌を歌ったりする日本人へのお返しだと筆者は思っています。さすが紳士のスポーツ、ラグビーの素晴らしさが感じられる一面に涙が出そうです。日本のファンがラグビー選手たちを動かしたと信じています。
もちろんラグビーの選手たちもロッカーを掃除して帰ってくれているのは言うまでもありません。
その3 トライ後も派手なパフォーマンス無し
たとえば「カズダンス」など、サッカーではゴールを決めた選手のパフォーマンスも見どころの1つですが、ラグビーではトライした選手が、ファンやカメラに向かって派手なパフォーマンスすることは絶対ありません。
ロシア戦で3トライを取った松島幸太郎選手(写真右)。トライ後、チームメイトが集まって抱き合ったりはしましたが、松島選手が派手なパフォーマンスでアピールすることは一切ありません。淡々と自陣へ帰って行くだけです。アイルランド戦で決勝トライを決めた福岡選手も同じです。
サッカーに比べてサービス精神が無いと言われればその通りかも知れません。ではなぜラグビー選手はそうしないのでしょうか。
それは全員が分かっているからです。このトライは「俺のトライじゃない」と。ボールを取って来たフォワードのお陰、最後のパスをくれた選手のお陰と。最後にボールを貰ったのが、たまたま「俺だった」だけだと。誰もが他の選手に感謝しリスペクトする。
まさに“One For All, All for One”(1人はみんなの為に、みんなは1人のために)。ラグビー精神の神髄は、トライシーンにも表れています。
その4 ブーイング無し!敵キックでも“シーッ”
今回、日本代表でゴールキックを任されているのが背番号10番、ジャパンの司令塔の田村優選手です。当然、彼がキックを蹴るとき、ファンは固唾を飲んで見守ります。さっきまで歓声で沸いていたのが嘘のようにシンと鎮まります。
ファンが素晴らしいのはそれだけではありません。敵のゴールシーンでも、まるで18番ホールのパターシーンのように、息を潜めて静かに見守ります。これが決まれば逆転で負ける!というシーンであったとしても、ブーイングなど絶対にしません。
それがラグビーのマナーとして世界中に定着しているのです。選手だけでなく、お客さんも紳士・淑女なのです。
その5 隣に敵のファンなのに “NOフーリガン”
上は前回2015年のラグビーW杯で有名になった1枚の写真です。カナダVSアイルランド戦のスタジアムの一コマ。おそらくアイルランドがトライを決めた瞬間なのでしょう。緑の女性が満面の笑みを浮かべる隣で、赤い女性の失意の絶叫が聴こえて来そうです。
ラグビーのスタジアムでは、ファンの座り位置は決まっていません。両チームのファンがごちゃ混ぜに座ります。つまり自分だけ日本ファン、周りは全員敵のファンというケースも起こり得るわけです。それでも自由に声を出し応援してOK。誰に気を使う事もありませんし、敵のファンに文句を言われることも一切ありません。逆に周りの人は微笑みを返してくれるでしょう。
太った人、背の高い人、小さい人、足の速い人、足は遅いがスタミナはある人……ラグビーは15人それぞれに違った個性が求められるスポーツです。国籍が違ってもその国の代表になれるスポーツです。
互いの違いを認め合いリスペクトする精神があるからでしょう。客席においてもそれは同じように認められているのです。これもまた素晴らしきラグビー文化の1つです。
その6 日本独自の言葉「ノーサイド」を広めよう
試合終了のことを、ラグビーでは「ノーサイド」と呼びます。ゲームが終われば、敵味方関係なく互いを称え合うというラグビー精神の象徴です。
実際、アイルランド戦では負けた選手の方から日本に握手を求めに行きました。グランドを去る時は、グリーンのジャージの選手が作った花道の中を日本選手が通り抜け、次に日本選手が2列に並んだ中をグリーンのジャージの選手が通り抜けました。拍手したり、掌でタッチしあって敵の奮闘を称えるのです。これはラグビーあるあるの1つですが、まさにノーサイドの精神を象徴する風景です。
しかしこの「ノーサイド」という言葉が、実は「日本だけの呼び名」だと知っている方は少ないのではないでしょうか。海外では普通に「フルタイム」というだけです。
日本でのW杯を機会に、日本で根付いたこの素晴らしい言葉が、世界中に広がってくれることを願ってやみません。ツイッターでつぶやこう! Full-Time is called “NO SIDE” in Japanese Rugby World.
INFORMATION
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