「大事なのは学ぶ姿勢をやめないこと」、フェンシング日本代表 徳南 堅太選手が考える“これからのアスリート像”とは

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「大事なのは学ぶ姿勢をやめないこと」、フェンシング日本代表 徳南 堅太選手が考える“これからのアスリート像”とは

スポーティ

新型コロナウィルスの影響で、多くの大会が中止され、アスリートたちが一斉に活躍の場を失う中、競技で活躍するだけがアスリートじゃないと言わんばかりに、オンライン勉強会やSNSでの情報発信を続けてきた徳南 堅太選手。

その取り組みは競技の枠を超え、アスリートたちにコロナ禍における自身のあり方を考えさせるものになってきており、アスリート以外の人々からも注目され始めています。

活躍の場を失いながらも、新たな挑戦を続けてきた徳南選手が大切にしてきたことは『常に学び、挑戦し続けること』。

その姿勢が、これからのアスリートにとって大切なのだと同選手は言います。

今回は、徳南選手が考える“これからのアスリート像”について、本人から直接お話を聞くことができました。

常に学び、挑戦し続けることに意味がある

私は取り組みを始めるうえで、考えるよりもまず行動を起こすことを意識しています。どれだけ行動を起こせたかという意味の”多動”ができているかが、今後の未来を大きく左右すると思っているからです。

そう語るのは、フェンシング日本代表の徳南 堅太選手。新型コロナウィルスが蔓延した今年4月から、いち早くオンライン勉強会を開催し、自身でMCを担当するなどして、人々へ学びの機会を提供してきました。

徳南選手は現在、外資系コンサルティングファーム『デロイト・トーマツ・コンサルティング』に所属しながら、選手として活動しています。同社にスポンサーになってもらった経緯として、コネクションなどない状態から、飛び込みでサポートの依頼をしたところ、その思い切りの良さが功を奏して、企業側の理解が得られたそうです。

コロナ禍では、様々な競技の現役アスリートたちが対談するトークセッション『この指と~まれ』や、新しいアスリート像を考える『HiVe』といった学びの機会を提供すると共に、SNSや音声配信アプリでの情報発信にも取り組んできました。

ー取り組みを始めたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?

オンライン勉強会を開いたのは、コロナ禍で困っている人の役に立ちたかったという思いが根底にあります。『この指と~まれ』はその名の通り、待ちの姿勢ではなく、自らが指を差し出して周りの人たちを巻き込みたい、指に止まる側ではなく差し出す側になるというのをコンセプトとしています。コロナ禍で参っているアスリートたちに、自分の考えやノウハウを共有し、参加してくださった人の人生に少しでも役立ててもらえればと思い始めました。新しいアスリート像を考えるチャリティイベント『HiVe』に出演したのは、フェンシング競技のアナリストをして下さっている千葉 洋平さんに声を掛けてもらったのがきっかけです。また、アスリートのSNSの発信に詳しい五勝出さんも同席して頂けると聞いていたので、僕自身も現役のアスリートとしても沢山聞きたい事がありましたし、実際に学ぶことが多かったです。

SNSはどれが自分と合うのか分からなかったので、色々と試していたんです。FacebookやTwitterはもちろん、noteやアメーバブログなども使って、自身の日々思ったことを発信したりしていました。最近では自分にしかできないことをやろうと、9月26日に行われた全日本フェンシング選手権大会 決勝に残った選手をインタビューして、音声配信アプリ『stand.fm』で試合中に思っていたことや、選手の人柄がわかる情報を発信していたんです。私は全日本で決勝に残ることはできませんでしたが、日本代表の中でも古株で、他の選手も身近にいるので、選手の内面を知ってもらうことができれば、全日本が盛り上がり、さらにはフェンシング競技の活性化にも繋がると思い、始めた取り組みでした。

『stand.fm』は、太田雄貴会長も情報発信のツールとして最近始めたそうですが、自分は結構前からこっそり配信していたと徳南選手。

できるだけ早く、効果的に行動を起こすことが大切なんですと、筆者に熱く語ってくれたのが印象的でした。

コロナ禍だからこそできる“恩返し”

新型コロナウィルスが蔓延してから今日に至るまで、選手は大会が無くなったばかりか、感染予防の観点から、満足に練習できない日々が続いています。

徳南選手が行うフェンシング競技でも、コロナ前は8時間やっていた練習が、4時間にまで短縮されるという事態が、今なお続いています。

そんな徳南選手が、コロナ蔓延後に感じたのが、まさにその“練習環境”についてでした。

コロナが蔓延し始めて最初に感じたのは、自宅待機が長期に渡り、今までの練習環境が無くなってしまった事ですね。特に緊急事態宣言中は、練習施設等も閉鎖してしまった為、自宅に運動器具を揃えたり、オンラインでトレーニングしたりしていましたが、普段やっていた練習に比べるとやはり劣ってしまいます。体力や筋力も落とすまいと努力はしていたつもりでしたが、やはり自宅の中だと動きが限られる部分もありますし、激しい運動をする事は難しかったですね。

自宅という限られた環境の中、これまで通りにトレーニングをすることができなかったと漏らす徳南選手。しかしそれ以上に苦労したのが、試合が無い中での、モチベーションの維持だったと言います。

僕たちは国際大会が年間10試合、国内大会が4試合ほどあります。だいたい月に一度のペースで試合があるスケジュールで活動しています。毎試合ピークを合わせるのも大変ではあるのですが、逆に試合が無いなら無いでモチベーションの維持をするのがキツいのが正直な所です。現時点(2020年9月)ではまだ国際大会の開催の目処もたっておりませんが、いつか開催されるであろう試合に向け、コンディションは常に整えておかなければなりません。

アスリート、特にトップ選手であるならば、普段から厳しいトレーニングを積み重ねなければなりません。しかし、あるかどうかもわからない大会を目標に頑張り続けることがどれだけ大変なことか、想像に難くありません。

2021年初めに、国際試合が再開されるのではと囁かれるフェンシング業界。確定情報ではないにしろ、少し希望が見えつつありますが、このコロナはアスリートにとってのあり方そのものを変えてしまいました。

コロナ前のアスリートは、多くの人に応援され、支えられながら大会で活躍することが代表的なあり方でしたが、コロナ禍では、逆にアスリートがこれまで支えてくれた人々に、勇気と希望を与える役割が求められてきています。

そのあり方について徳南選手はこう言います。

今、人々を苦しめている新型コロナウィルスが蔓延して最初に思ったのが、自分たちの存在が世間から必要とされなくなるんじゃないかということです。アスリートが活躍の場としているスポーツ競技は、安定した日常があるからこそ成立するもの。人々に余裕がない今、アスリートの存在意義は、薄れつつあります。そんな今だからこそ、社会に必要なものと認知して欲しかった。そこで行き着いた答えが『学びを止めない』ということです。アスリートは競技でしか活躍できないのか?私はそうは思いません。私たちはそこに至るまで本人でさえ気付いていない経験・知恵があるはずです。それを必要としている人が今このコロナ禍では多くいるということを、私を含めたアスリートは忘れてはいけません。

コロナの中だからこそできる恩返し。これまでのアスリート像では想像できない逆転の発想が、徳南選手の考える新しいアスリート像なのだと言います。

常に学び、オンラインを通して人々に貢献しようと考える姿勢は、並大抵の覚悟ではできません。

しかし、このコロナ禍で塞ぎ込んでいる人々がいるのが多いことも事実。今年、話を聞いた高校3年生のフェンシング選手も、今後の先行きが見えないと塞ぎ込んでいました。

そうした人たちに、一流アスリートだからこそ与えられる学びを届けることが、コロナ禍におけるアスリートたちの使命なのかもしれません。

▼徳南選手への応援メッセージはコチラから!
https://twitter.com/TOKUNAN

真剣な面持ちで、試合に臨む徳南選手

フェンシング 徳南堅太