今年で53回目の開催を迎えた、スペイン有数のアンダー23の自転車レース―ブエルタ・ア・サラマンカ―

今年で53回目の開催を迎えた、スペイン有数のアンダー23の自転車レース―ブエルタ・ア・サラマンカ―
毎年、確実に若い選手をトップのプロチームに送り込む、スペインの自転車界。その原動力の一つとして、通称アンダー23と呼ばれる世代の選手が主役となるチームの存在が挙げられます。アンダー23のチームはプロの自転車選手になるための最後のカテゴリーで、このカテゴリーで走る選手たちは近い将来にプロになることを具体的に考えることができる段階にあることを意味します。
この世代の選手が主役となる、スペインの自転車レースの一つである、ブエルタ・ア・サラマンカの様子をレポートします。
TOP写真:今年のブエルタ・ア・サラマンカの表彰台。総合優勝したガリ・ウガルテ選手(フンダシオン・エウスカディ、写真中央)、第2位のマクシム・ビルイ選手(エキーポ・コルティソ、写真左)、第3位のホセ・アウトラン選手(スーパーメルカード・フォーリス、写真右)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
最初の開催は1935年、ミゲル・インデュラインも優勝経験あり
総合優勝したウガルデ選手のタイムトライアル。この日のベストタイムをたたき出す。Photo by Yukari TSUSHIMA.
ブエルタ・ア・サラマンカの第1回目が開催されたのは1935年、いまからちょうど90年前の話です。非常に古くからある自転車レースではありますが、経済的な問題などで何度もキャンセルされているレースであることも事実です。とはいえ、何度レースをキャンセルしても、その数年後には復活していることからも想像できる通り、数多く存在するスペイン国内のアンダー23の自転車レースの中でも重要度の高いレースでもあります。
かつてこのレースを総合優勝したサイクリストの中には、ミゲル・インデュライン(1985年)の名前がありますし、2001年には現在のスペイン代表監督のアレハンドロ・バルベルデが表彰台に立っています。
サラマンカ出身の往年の名選手、アウグスティン・タマメス氏。Photo by Yukari TSUSHIMA.
しかし、なんといっても、歴代のこのレースの優勝者の中でもっとも有名なのは、サラマンカ出身の名選手のアウグスティン・タマメスでしょう。1965年から1967年まで3年連続でこのレースを優勝したタマメス氏は、1975年にブエルタ・ア・エスパーニャでリーダージャージを着たこともある名選手です。いまでもお元気で、今回もブエルタ・ア・サラマンカに応援に来ていました。
最終ステージはサラマンカ市内の名所が舞台に
サラマンカのローマ橋を走る選手。路面は古い石畳。Photo by Yukari TSUSHIMA.
今年のブエルタ・ア・サラマンカは3日間の日程で開催されました。1日目は比較的平坦なスプリンターのためのステージ、2日目はサラマンカ南部のを舞台とした山岳ステージ、最終第3ステージは、サラマンカ市内を走る約4.2kmの個人タイムトライアルです。タイムトライアルのコースは、サラマンカの名所を巡るもので、途中に石畳などがありますが、基本的に平坦なコースとなりました。
選手の向こう側にあるのは、「カサ・リス」と呼ばれるアールヌーボーの博物館。Photo by Yukari TSUSHIMA.
タイムトライアルのゴール地点となったプラザマヨ―ルには、日曜日の午前中という時間にも関わらず大勢の観客が集まり、選手たちに声援を送ります。この日は、選手の1人がゴールしたあとに、そのままバールのテラス席に突っ込むという事故があり、現場は一瞬騒然としました。しかし、幸いにも、該当選手は大きなけがをすることもなく、無事にレースを終えていました。
サラマンカの生ハムがよいモチベーションに?
賞品のサラマンカ産生ハムを掲げるウガルデ選手(写真右から2人目)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
サラマンカは、生ハムの産地として有名です。そのため、今回のレースの賞品として、表彰台に立った選手にはサラマンカ産の生ハムが送られました。
表彰台で生ハムを受け取る選手たちの表情はとても嬉しそうで、第3ステージで優勝し同時に総合優勝も成し遂げたウガルデ選手は、「2つもサラマンカの生ハムを家にもって帰れるなんて、とてもうれしいです」と表彰台で本音を漏らすほどの喜びようでした。
今年のブエルタ・ア・サラマンカに出場したのは18チーム。すべてスペイン国内のチームですが、選手は非常に国際色豊かです。総合2位となったヒルイ選手はウクライナ出身ですが、スペイン語は非常に堪能です。また、ラテンアメリカの選手をこうしたアンダー23カテゴリーの自転車レースで目にすることは、もはや珍しいことではありません。
世界中から自転車のプロ選手になりたいという青年たちが集まるアンダー23のカテゴリーの自転車レースには、プロの世界とはまた一味違う、学びと経験の機会となっていることがよくわかるサラマンカでのレースとなりました。