日本チャンピオンの與那嶺恵理選手が出走、ブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナ
WATCH日本チャンピオンの與那嶺恵理選手が出走、ブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナ
3月8日から10日の日程で、スペインのエクストレマドゥーラ地方で、自転車レースのブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナが開催されました。今年で2回目の開催となるこのレースに、現日本チャンピオンの與那嶺恵理選手(ラボラル・シュンタ)が、出走しました。このレースの様子をお送りします。
TOP写真 最終第3ステージの個人タイムトライアルでスタートする、與那嶺恵理選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
エクストレマドゥーラ地方とは
エクストレマドゥーラ地方で最も南にある街の一つ、サフラ市内にある城壁。 Photo by Yukari TSUSHIMA
今回のレースの舞台となったエクストレマドゥーラ地方があるのは、スペインの内陸部。西はポルトガルと国境を接し、南はアンダルシア地方が広がります。町中を通り過ぎると、この時期にはコウノトリが空を飛ぶような、のどかな草原が続きます。スペイン内陸部に位置し、アンダルシア地方の北側に位置するエクストレマドゥーラ地方は、夏はとても暑く、冬は非常に寒い地方の一つです。
毎年8月から9月にかけて行われるブエルタ・ア・エスパーニャでは、この数年間エクストレマドゥーラ地方の山岳がコースに組み込まれることが増えています。2021年のブエルタ・ア・エスパーニャの第14ステージでゴール地点に設定されたピコ・ビリュエルカは、今回のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナでも、第2ステージのゴール地点に設定されていました。
このエクストレマドゥーラ地方を舞台にした、今回のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナには、15チーム92人の選手が出走しました。その中に、スペインの老舗チームであるラボラル・シュンタに所属する、日本チャンピオンの與那嶺選手の姿がありました。
悪天候の中、與那嶺恵理選手が力走
個人タイムトライアルでゴールする與那嶺選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
今年のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナに出走した與那嶺選手は、このレースが今年4レース目、そして今年最初のステージレースとなりました。
今年すでに3レースに出走している與那嶺選手は、すでにスペインのチームに溶け込んでいる様子で、スタート前には、チームメイトと笑顔で会話する様子が、毎日見られます。しかし、レース自体は3日間とも雨と強風の中での開催となりました。
特にエクストレマドゥーラ地方は、町中を抜けると森や建物が少なく、広大な草原の中にある道を走ることになります。そうした場所では、強風の影響をまともに選手たちが受けることになり、選手の集団が思わぬ形で分裂され、有力選手が遅れてしまうことも珍しくありません。このような自体を避けるため、與那嶺選手をはじめとするラボラル・シュンタの選手たちは、連日緊張感が高い中でレースを進めることになりました。
また、3月に入ってから、スペインの天気は不安定だったため、レースの間はエクストレマドゥーラ地方でも大雨が降りました。そしてこの雨が、山間部では雪に変わります。実は今年のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナの第2ステージは、2021年のブエルタ・ア・エスパーニャでもゴール地点となった ピコ・ビリュエルカの上りゴールとなる予定でした。しかし、レース前日に雪がゴール地点に降り積もったため、レースオーガナイザーは急遽最後の上りゴールを取り消し、レースの距離を短縮して第2ステージを開催しました。
このような悪天候とコース変更がありながらも、與那嶺選手は終始チームメイトをアシストしながら、レースを進めます。しかし、レース経験豊富な富與那嶺選手が「この地域がこんなに風が強い場所だとは、思いませんでした。」と話すほど、風に苦しめられた3日間となりました。
オーガナイザーの努力の向こう側にあるものとは
ベスト・チーム賞を獲得したリディ・トレック。Photo by Yukari TSUSHIMA
実は、このブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナが開催されている間、スペインでは「トラクター・デモ」と呼ばれる、農業関係者によるスペイン政府への抗議活動が活発に行われていました。この抗議活動の影響で、今回のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナと同時期に、この地方の別の都市で予定されていた大規模な市民マラソン大会が、最終的には開催中止に追い込まれました。また、このレースの3週間前に開催された男子の自転車レースであるブエルタ・ア・アンダルシアが、やはり「トラクター・デモ」の影響により、5日間のレースの予定が1日に短縮されました。
このような不安定な情勢を受け、レース前にはブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナの開催を危ぶむ声もありました。しかし、オーガナイザーは悪天候によるコース変更を決断したものの、レースを全日無事に開催することができました。
ブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナは、大きな大会ではありません。出場した15チームのうち、ワールド・ツアー・チームと呼ばれるトップクラスのチームは2チームのみ。その一方で、プロのカテゴリーではない、クラブチームが5チーム出走していました。若い選手の多いクラブチームが、トップレベルの選手と同じ集団で走り、「プロ」のレースを体験する貴重な機会が、今回のブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナのようなレースなのです。
地道にこのような機会を守り続けていくことの重要性が、ブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェミナ開催を後押しする大きな原動力となっていたのです。