建築&改修ラッシュ!プレミアリーグの新スタジアム、どこが変わる!?
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61000人を呑み込むトッテナムの新スタジアムは2018年夏にオープン予定、チェルシーはスタンフォード・ブリッジを6万人収容のスタジアムに改築。エヴァートンも125年の長きに渡ってサポーターに愛されたグディソン・パークに別れを告げようとしており、プレミアリーグのビッグクラブはスタジアム建築&改修ラッシュです。
TOP写真/PHOTO by Hzh
トッテナムは施設充実の新世代スタジアムを建設
「ノーサンバーランド開発プロジェクト」と呼ばれているトッテナムのスタジアム建設計画は、2007年に検討が開始されました。2009年には、ダニエル・レヴィ会長が「56250席のスタジアムを建設し、2012-13シーズンには移転する」と語ったものの、その後プランニングが難航。正式に建設許可が下りたのは2015年で、来シーズンの開幕にお目見えするスタジアムは61559席と発表されています。
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「私たちは世界中のスタジアムを視察してきました。前例がないこのスタジアムは、観客のみなさんに新しい体験を提供します。トッテナムのファンにふさわしいワールドクラスの設備があり、地域の活性化にも貢献していくはずです」。ダニエル・レヴィ会長が胸を張る新スタジアムには、クラフトビール醸造所やベーカリー、「ミシュラン」掲載のレストラン、カフェ、180室のホテルなどが併設されており、付帯設備を含む総工費は約7億5000万ポンドポンド(約1132億円)といわれています。
シーズンで9000ポンド(約136万円)、1試合339ポンド(約51000円)のスペシャルシートからは選手たちが入場してくるトンネルを見ることができ、チケットはレストランでの食事付き。最上階のスカイウォーク、超高速Wi-Fiなど最新の技術を駆使した新世代のスタジアムです。ピッチは天然芝・人工芝を切り替ることができ、コンサートやアメリカンフットボールにも利用可能。トッテナムは、アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)と10年間のパートナー契約を締結し、スタジアム建設費の回収をもくろんでいます。
2017年5月に撮影された新スタジアムの工事風景。ホワイト・ハート・レーンのウェストスタンドの一部は既に取り壊されています(PHOTO by Ed g2s)
気鋭のデザイナーが築く新しいスタンフォード・ブリッジ
チェルシーがハマースミス&フラム地方議会にスタジアム改修の認可を得たのは、2017年1月。3月にはサディク・カーンロンドン市長の承認も下り、総工費は5億ポンド(約755億円)で、4万1623人しか収容できなかったスタジアムは、2021-22シーズンより60000席に拡張します。
デザインを手がけたのは、「鳥の巣」と呼ばれる北京国家体育場や、バイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナなどの実績がある建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロン。ゴシック様式やヴィクトリア朝のレンガ造りにインスパイアされたといわれる外観は、スタジアム周辺の建築物との調和も考慮されています。
1876年に建設された現在のスタンフォード・ブリッジが見られるのは2018-19シーズンまで。チェルシーは、工事開始から2年に渡って使用できるスタジアムを探さないといけないわけですが、最近の報道で「スタジアムの近くを走る鉄道の影響で、完成がさらに2年ずれ込む可能性がある」とも伝えられています。これが事実だとすれば、チェルシーの間借り生活はトータル4年。選手もサポーターも、モダンな新スタジアムを夢見て耐える長い時間を過ごさなければなりません。
以前にチェルシーが発表した移転計画は、スタンフォード・ブリッジの所有権を持つサポーター団体「チェルシー・ピッチ・オーナーズ」が否決(PHOTO by Brian Minkoff-London Pixels)
エヴァートンの新スタジアムの経済効果は年間1億ポンド弱!?
1888年に始まった世界最古のフットボールリーグの創設メンバーだったエヴァートンは、1892年より苦楽をともにしてきたグディソン・パークを離れることになりそうです。新しいスタジアムの候補地ブラムリー・ムーアドックは、海商都市リヴァプールとして世界遺産に指定されているエリアにあります。リヴァプールのシンボルともいえるエリアに52000万人収容のスタジアムを建設することで、インターナショナルなクラブに成長しようとする野心に満ちたプロジェクトは、工期3年、総工費3億5000万ポンド(約529億円)。
今年の3月にリヴァプール市議会とアンダーソン市長の賛成は得たものの、正式な認可は下りておらず、世界遺産を管理するユネスコなどが反対する可能性があるといわれています。世界最大の事業用不動産サービス企業CBREは、「スタジアム建設によって12000人の雇用が創出される」「年間9400万ポンド(約142億円)の経済効果がある」と猛烈アピール。エヴァートンのロバート・エルストンCEOは、2021年8月完成というスケジュールについて「チャレンジングだが達成可能」と語っています。
元々はリヴァプールの現在の本拠地アンフィールドを使っていたエヴァートンは、レンタル料の値上げを拒否してグディソンパークへ(PHOTO by Biloblue)
好景気のプレミアリーグに次世代スタジアムが急増?
各クラブが新しいスタジアムの建設を急ぐのは、テレビ放映権料で潤うプレミアリーグが優良な投資案件として認められており、中小規模のスタジアムで戦うクラブにとってはマッチデイ収入(チケット、ユニフォーム、グッズ等スタジアム関連の販売収入)の伸びしろが大きいからです。
2015-16シーズンのチェルシーのマッチデー収入が7000万ポンド(約106億円)だったのに対して、76000人収容のオールド・トラフォードを持つマンチェスター・ユナイテッドは1億700万ポンド(約162億円)。そのマンチェスター・ユナイテッドにも、本拠地のスタンドを90000人規模に増設するという噂があります。10年後のプレミアリーグには、現在とは見違えるような最新技術を駆使した次世代スタジアムが揃っているのかもしれません。