3種目総合で予想が困難?東京2020オリンピック新種目「スポーツクライミング」
WATCH3種目総合で予想が困難?東京2020オリンピック新種目「スポーツクライミング」
2020年の東京オリンピックで、新種目として行われるスポーツクライミングは、ほぼ垂直の壁をホールドと呼ばれる突起物に使って登る競技です。高さ15メートルの壁を2人の選手が同時に登り、速さを競う「スピード」、高さ4メートルの壁を制限時間内にいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、制限時間内に高さ15メートル以上の壁をどこまで登れるかを競う「リード」の3つの種目があります。東京2020オリンピックではこの3種目の合計点で順位が決まります。
今回は、日本でも人気が出てきたスポーツクライミングのルールや注目選手を紹介します。
Photo by ColdSleeper
勝負は10秒以内で決着の「スピード」
高さ15メートル、95度に前傾した2つの壁を、ロープを装着した(安全の為)2人の選手がタイムを競う競技です。優勝タイムは男子では5~6秒、女子で7~8秒と言われています。
とにかくスタートの瞬発力が必要なのですが、フライングは、一発で失格となる為、かなりの集中力を必要とします。この「スピード」は日本人選手が、最も苦手としている種目。このスピードの克服こそが、メダルへ向けた大きなステップとなります。
速く登った方が勝ち、単純明快でわかりやすいです。ものすごいスピードで壁を登っていく様は圧巻です。
身体能力と知力が必要な「ボルダリング」
高さ4メートル程度の壁に、設定されたコースを4分の制限時間内にいくつ登れるかを競うのが、ボルダリングです。事前に練習ができないため、手や足のかける場所やコースを制限時間内に考えながら登らなければいけません。
トップと呼ばれる最上部のホールドを両手で保持することができれば、その課題は完登となります。ロープはなく、途中で落下しても再度トライすることができます。
日本人選手は、このボルダリングが得意で、常に上位で成績を残しています。頭脳と手足を上手に使いながら登っていく選手たちに注目です。
再トライなしの一発勝負「リード」
制限時間内6分の間に、高さ15メートル以上の壁のどの地点まで登れるかを競うのがリードです。選手は安全のために、ロープをクイックドロー(ロープを引っ掛ける器具)に掛けながら登り、トップのクイックドローにロープを掛ければ完登となります。
もし途中で落ちてしまった場合は、そこが記録となります。完登した選手、あるいは同じ高さまで登った選手が複数いる場合は、タイム順で順位が決まります。
ボルダリングとリードは、後半の選手に登るコースを見られてしまうと、先に登る選手が不利になる為、自分が登る前は他の選手のクライミングを見ることができないことになっています。
3種目総合で予想が困難?
これまで上記の3種目は、それぞれ別に競技が行われてきました。今回の東京2020オリンピックで実施されるように、3種目総合で競う方式は少なく、どの選手にとっても、あまり経験がありません。さらに選手によって得意不得意があります。
得意な競技で成績を伸ばし、いかに苦手な競技の成績を底上げできるかが勝負の分かれ目となるでしょう。
東京2020で期待の注目選手
楢﨑智亜選手・明智選手
楢﨑智亜選手は東京2020オリンピックは24歳で迎えます。智亜選手は小学生の頃に器械体操をしており、柔軟性やキレの良い動きを駆使して数々の大会で優勝してきました。2016年にフランスで行われた世界選手権で、日本人初の優勝を成し遂げました。そこからも主要大会で成績を残しています。
2017年に行われたスポーツクライミングのワールドカップで、総合優勝を飾っており、3種目総合で行われるオリンピックでも期待されている注目選手です。
智亜選手の弟である楢﨑明智選手にも注目です。智亜選手より3歳年下の明智選手は東京2020オリンピックは21歳で迎えます。兄同様に器械体操をしていた明智選手でしたが、智亜選手の影響で小学3年生の頃からスポーツクライミングをはじめました。柔軟性はもちろんですが、高身を活かした登りが特徴的です。
2017年の世界ユースでは複合部門で1位を獲得し、ユース世代では常にトップで競っています。日本人選手が苦手とするスピードでも強さを見せる明智選手、東京オリンピックでは兄弟揃っての活躍に期待しましょう。
野口啓代選手
東京2020オリンピックは31歳で迎えます。野口選手は小学5年生の時にフリークライミングをはじめ、小学6年生の時にはなんと中高生を抑えて全日本ユース選手権で優勝!2008年には日本人女性で初めてワールドカップ ボルダリング種目で優勝し、3種目総合で争われるオーバーオール部門でもチャンピオンを獲得しました。
野口選手は、日本のクライミング界のパイオニアでもあり、最強のクライマーなのです。ホールドをキープし続けられる指先や握力が野口選手の強みであり、握力はなんと55kg!さらに柔軟性にも優れており、これまで多くの難コースを攻略してきました。東京オリンピックでは金メダル大本命の野口選手から目が離せません。
野中生萌選手
東京2020オリンピックは23歳で迎えます。野中選手がクライミングに出会ったのは9歳の頃で、負けず嫌いな性格で練習に打ち込み、16歳で日本代表に選ばれワールドカップに出場。19歳で世界ランキング2位なるなど目覚ましい成長を続けています。
そして今年のワールドカップでは、最強と言われる野口選手や世界の強豪を振りきり、初の年間王者に輝きました。「クライミングだけでなく、メンタルも鍛えられた大会だった」と語る野中選手。東京オリンピック2020では野口選手だけではなく、野中選手も金メダル候補となります。
伊藤ふたば選手
東京2020オリンピックは18歳で迎えます。小学3年生で競技をはじめた伊藤選手は、14歳でボルダリング日本一を決める「ボルダリングジャパンカップ」を史上最年少で制覇するなど期待の若手ポープです。今年から高校と競技の両立する大変な時期ですが、柔軟性と長い手足を活かしたクライミングで常に上位で成績を残しています。
東京オリンピックの次の2024年に行われるパリ大会、世界選手権とワールドカップの三冠が目標と語る伊藤選手ですが、東京オリンピックでもメダルが期待できる注目の選手です。
世界トップレベルの選手がたくさんいる日本。メダルに向けての闘いに期待しましょう!