HYROX専門ジムでトレーニング体験。クロスフィットと何が違う?

HYROX専門ジムでトレーニング体験。クロスフィットと何が違う? DO

HYROX専門ジムでトレーニング体験。クロスフィットと何が違う?

スポーティ

2025年8月9日に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で日本国内初めてとなる「HYROX(ハイロックス)」のイベントが開催されました。続いて2026年1月30日〜2月1日にはインテックス大阪で関西初上陸の予定だそうです。読者の中にも参加を検討している人がいるかもしれませんね。

HYROX Japanのインスタグラム:@hyroxjapan 

2017年にドイツ・ハンブルグで誕生したHYROXはまずヨーロッパで広がり、アメリカ初開催は2019年。公式ウェブサイト(https://hyrox.com/)によると、2025年には全世界で80レースが開催され、競技参加者は55万人を超えました。

ゼロから始まったフィットネス団体が短期間で世界的に急成長。どこかで聞いたことがある話だなあと思いませんか?そう、2010年代に隆盛を極めたクロスフィットの推移にそっくりなのです。

2020年代に入り、世界がコロナ禍に見舞われた頃から、クロスフィットは組織の規模では凋落の一途を辿っています。その代わりを埋めるように現れたのがHYROXです。

HYROX=難易度の低い、だけどメチャクチャきついクロスフィット?

そもそもHYROXとは何でしょうか? その質問をグーグルやらchatGPTやらに訊ねると、大体次のように答えてくれます。

「ランニング(有酸素)とファンクショナルトレーニング(筋力・持久力)を組み合わせた、室内型(主に展示会場・ホールなどで実施)フィットネスレース/競技フォーマット」です。

具体的には1㎞走るたびに異なるワークアウトを行います。1km走→ワークアウト#1→1km走→ワークアウト#2、、、、と続き、合計8ラウンド。走るだけでも合計8kmですので、けっして容易なことではありません。

HYROXのワークアウト(1㎞走を除く)

HYROX のワークアウト。上段左から1~4,下段右から5~8

1. Ski Erg(スキーエルグ):上半身を中心に、クロスカントリースキーの動作でケーブルを下方向に押し下げる。距離は1km。
2. Sled Push(スレッドプッシュ):重りの載ったスレッド(そり)を前方に押して進む。距離は50m。部門によって重量は異なる。
3. Sled Pull(スレッドプル):ロープを使って重いスレッドを後方に引き寄せる。距離は50m。部門によって重量は異なる。
4. Burpee Broad Jump(バーピーブロードジャンプ):バーピーを行ったあとに前方へ両足立ち幅跳びの要領でジャンプする。その繰り返しで、距離は80m。
5. Rowing(ローイング):ローイングマシンを使い、ボート漕ぎ動作を行う。距離は1km。
6. Farmers Carry(ファーマーズキャリー):両手に重いダンベルあるいはケトルベルを持って歩く。距離は200m。部門によって重量は異なる。
7. Sandbag Lunges(サンドバッグランジ):肩にサンドバッグを担ぎ、ランジ・ウォークで進む。距離は100m。部門によって重量は異なる。
8. Wall Balls(ウォールボール):メディシンボールをスクワットからの反動で壁の高いターゲットへ投げ上げる。回数は100回。部門によって重量は異なる。

こうしてずらずらと書き連ねてみても、経験のない人には何が何だか分からないかもしれません。しかし、少しでもクロスフィットをやってことがある人はきっと「な~んだ」と思うでしょう。どれもこれも、クロスフィッターなら日常的に行っているトレーニング種目なのです。その証拠に、私はHYROXのレースに出たことはありませんが、上のワークアウトはすべてやったことがあります。

これらのワークアウトをよく見ると、「動作は難しくない。だけどキツイ」という共通項が見出せます。クロスフィットでは体操動作(マッスルアップ、逆立ち歩き、など)、あるいは重量挙げ(スナッチ、クリーンなど)のような難易度の高いワークアウトも含まれますが、HYROXが採用するワークアウトは技術的なハードルに関してはどれも高くありません。

しかし、1km走を間に挟んで、上に書かれた距離や回数をこなすとなると、これはかなり大変です。あえて単純な表現をするならば、主に「体力と根性」が試されます。むろんテクニックが不要というわけではありません。走るという動作にしてもフォームの良し悪しがあるように、どのワークアウトにもレベルアップのために習得するべきものは少なからずあります。

それでも押しなべて述べるならば、HYROXは耐久型のスポーツです。人によって目標とするペースやタイムは異なりますし、レースではそれを競うわけですが、大体2時間くらいをずっと動き続けることになると考えてよいでしょう。「フィットネス系のマラソン」と称されることもあります。

HYROXのためのトレーニングとは?

さて、レースの人気が高まっているわりには、HYROXの名前を冠したジムというものはアメリカではまだ数か所しかないようです。日本ではおそらく皆無でしょう。多くのHYROX参加者はクロスフィットやF45など既存のフィットネスジムでトレーニングをしてレースに挑んでいるようです。

なにより、クロスフィットのジムにはHYROXで必要とされる器具がほぼ一通り揃っています。ある日突然「今日からウチのジムでもHYROX用のクラスを設けます」ということが十分に可能で、実際にそうしたケースは多いようです。

私の近所にも「全米初めて、かつ唯一のHYROX専門」を謳うジム(https://orangecounty.hyrox-pc.com/vip-optin)が2025年11月にオープン予定です。とは言っても、以前はクロスフィットだったジムが看板を変えたものです。

HYROX Performance Center(旧Crossfit Vibe)外観

このジムでは正式オープンの半年ほど前から初期メンバーを募集していました。登録は無料ということでしたので、名前と連絡先をウェブサイトから入力しておいたところ、忘れていた頃に「プレ・オープンの無料体験レッスンに来ませんか?」というお誘いのメールが送信されてきました。喜んで招待に応じたのは言うまでもありません。

ジムに行ってみると、外壁にはかつてクロスフィットだった看板の跡がまだ壁に残っていました。内部はたぶんクロスフィット時代とまったく変わっていません。中央にスペースが広く取られ、一方の壁には鉄棒やスクワットラックが並び、その反対側にはローイングマシーンやスキーエルグが並んでいます。走る部分では、「ジムの外に出て歩道をあそこまで走ってきな。そこからまた走って戻ってきな」と言われることも同じです。

HYROX Performance Center(旧Crossfit Vibe)内部

体験レッスンのトレーニングメニューは以下の通りでした。

ウォームアップ:1kmジョグ、ダイナミック・ストレッチ
メイン:4分間ごとに以下のワークアウトを2ラウンド
1) 800m走
2) ダンベル・スナッチ20回の後、残りの時間はスキーエルグ
3) 800m走
4) バービー20回

やはりクロスフィットの耐久型ワークアウトそのままです。私にはまったく違和感がありません。他のメンバーも同じように慣れた様子でした。クロスフィットにしては走る距離がやや長いかもしれませんが、私はマラソンランナーでもありますので、それも望むところです。

私の認識では、HYROXはクロスフィットに含まれますが、逆は必ずしもそうではありません。それでも、今後しばらくの間はHYROXの人気が高まり、それに対応するクロスフィットのジムが日本でもアメリカでも増え続けると思います。HYROXに興味のある人は、クロスフィットへ行こう。けっして宣伝ではありません。

Hyrox クロスフィット トレーニング