生涯スポーツの祭典、カリフォルニア・シニア・ゲームズ挑戦記
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生涯スポーツの祭典、カリフォルニア・シニア・ゲームズ挑戦記
2027年5月に「ワールドマスターズゲームズ2027関西」が開催されます。「なにそれ?」という人は、ぜひ大会公式ウェブサイト(https://wmg2027.jp/)を見ていただきたい。
ワールドマスターズゲームズとは「概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる生涯スポーツの国際総合競技大会」と説明されています。2027年大会は5月14日から30日まで17日間にわたって関西各地で開催され、公式競技だけでも35競技59種目。陸上、水泳、野球、サッカー、テニス、ゴルフなど、さまざまなスポーツが一つの大会に集まります。
というと、オリンピックや国民スポーツ大会のようですが、そうではありません。予選などなく、誰でも希望すれば参加できるからです。かつて競技経験のある人も、趣味でスポーツを続けている人も、年齢を重ねてから新しい競技を始めた人も、同じ時間に同じ場で競うことができるのです。基本的な参加条件は年齢だけです。
私としては、「大人の運動会」と呼びたいと思います。昔懐かしい、小学校の運動会で万国旗が飾られていたように(今でもやっていますか?)、世界中のスポーツを愛する人たちが、「スポーツが、好きだ。スポーツが、したい」(大会キャッチフレーズ)という、ただそれだけの理由で関西へやってくるわけですので。
私自身はこの大会には何の利害関係もない、ただの一個人に過ぎませんが、心から応援したいと思います。
ワールドマスターズゲームズの第1回大会は1985年にカナダのトロントで開催されました。2027年の関西大会は第11回目になります。そして実はアメリカにも、一定以上の年齢を対象にした総合スポーツ大会がほぼ同じ時期に誕生しています。1987年にミズーリ州セントルイスで開催された「National Senior Games(全米シニア・ゲームズ)」です。
ロサンゼルスから始まったアメリカの「シニア・ゲームズ」
サンディエゴ・シニア・ゲームズの陸上競技が行われたSan Diego Mesa Collegeのフィールド遠景。
全米シニア・ゲームズと同じ形式で行われる各州の地方大会があります。全米大会の予選という位置づけでもあるのですが、私が参加しているカリフォルニア州については、少し事情が異なります。
というのは、カリフォルニア州のシニア・ゲームズ(のようなもの)は全米大会よりも古い歴史があるのです。1969年にロサンゼルスで始まった「シニア・オリンピック」がそのルーツとされ、その後アメリカ各地へ広がっていったという経緯です。
むしろこちらの方が老舗なのです。元祖と呼べるかもしれません。まるでラーメン屋みたいな話ですけど。
私はカリフォルニア州内で行われる大会のひとつ、サンディエゴ・シニア・ゲームズ(https://www.sdseniorgames.org/)に昨年から参加しています。50歳以上が対象のこの大会、今年59歳になった私でもじゅうぶん若手選手なのです。
50m走80歳以上の部決勝。第1レーンのランナーは91歳!
数ある競技の中から、私が選んだのは陸上競技の短距離走。昨年は100m走のみ、今年は100m走と200m走に出場しました。
私は学生時代に陸上競技の経験はありません。大人になってからマラソンを走り始め、そのうちウルトラマラソンまで走るようになりましたが、短距離走に関してはまったくの素人です。
とくに長距離走が好きだったわけではないのですが、大人になって参加できるランニングのイベントといえば、たいていは長距離走になりますよね。5kmから初めて、ハーフマラソン、フルマラソンとだんだん距離を伸ばしていくのが一般的です。私もそうでした。
それも悪くはないけど少し飽きたなとか、人とは変わったことがしたいとか、その辺りのもやもやした気持ちが、私を短距離走に興味をもつきっかけになりました。そんな人でも参加できるのがシニア・ゲームズのよいところです。
50代からでもかけっこは速くなれる
ハードル走者。たぶん経験者。
昨年の大会で、生まれて初めて100m走のタイムをきちんと計測してもらった結果は15秒台でした。思ったよりだいぶ遅いタイムで、かなりのショックを受けました。私はとくに足の速い子どもではありませんでしたが、それでもクラスの平均よりは速かったと思いますし、大人になってからの草野球でも俊足で通っていたからです。
だれでも年齢を重ねると運動能力は落ちます。とくに瞬発力やスピードは、持久力や筋力に比べても、加齢の影響を大きく受けることを、一般的な知識としては知っていました。それでも俺はまだまだ速いぜ、若いものにも負けないぜと、不遜にもそう考えていたのです。
言うまでもありませんが、私はアホです。しかし、ただのアホではありません。諦めの悪いアホなのです。今からでもどうにか短距離を速く走れるようになれないかと、この1年間創意工夫を重ねてきました。
瞬発力を鍛える筋トレ、プライオメトリクス、スプリンターが行うドリル、ランニングフォームの研究、などなど、思いつくことはなんでもやりました。
詳細は省きますが、すべてが上手くいったわけではありません。ケガもありました。というかケガの連続でした。短距離走ほどケガをしやすいスポーツはないと、今になっては思います。
そうしたプロセスを経て思ったのは、年齢とともに失われていく能力がある一方で、自分のなかにはまだ使われたことのない能力も眠っているのではないかということです。だって、短距離を速く走るための練習はそもそもやったことがなかったのですから。
結果として、今年の大会では100m走のタイムを1年前に比べて1秒近く短縮できました。14秒台というのは、同年代のトップ選手と比べると、まだまだお話にならないほど遅いです。それでも進歩は進歩です。
この調子で1年に1秒ずつタイムを縮めていけば、5年後には10秒の壁が見えてくるぜ、と考えるほどのアホではありませんが、それでもまだ伸びしろは残っているかもしれないなとは思います。来年は60歳以上の部に「昇格」するので、順位も狙えるかもしれません。
そんな「年甲斐のない」挑戦を可能にしてくれる場があることには感謝の気持ちしかありません。
年齢はただの数字か?
大会名物「おじいちゃん・おばあちゃんと孫のリレー」。
ところで、世の中にはもっともっとすごい人がいます。今年の大会でも、50m走レースの最高齢ランナーは91歳でしたし、70~74歳の部には私より速いタイムで100m走を走った人がいました。続く200m走でも同様の結果を出していました。ナカムラさんという名の日系人です。年齢は73歳と大会パンフレットにありました。
あまりにも感心したので、競技終了後にご挨拶をしてお話を伺いました。そしてさらに驚くことになりました。
ナカムラさんも、もともと短距離走の選手だったわけではありません。それどころか、生まれて初めて陸上トラックを走ったときは70歳を過ぎていたそうです。それからまだ3年しか経っていないのです。58歳で始めたことを秘かに誇っていた私など、7回生まれ変わったとしても足元にも及ばないのでした。
私が試したのは陸上競技ですが、「大人の運動会」はそれだけではありません。水泳、テニス、ゴルフ、卓球、バドミントンなど、さまざまな競技があります。
それがどのようなスポーツであれ、自分がまだ知らない能力を試してみるのも悪くありませんね。

