“神の左”は「狙って打つ」。 WBC世界バンタム級王者 山中慎介インタビュー

“神の左”は「狙って打つ」。 WBC世界バンタム級王者 山中慎介インタビュー WATCH

“神の左”は「狙って打つ」。 WBC世界バンタム級王者 山中慎介インタビュー

スポーティ

2015年9月にWBC世界バンタム級タイトルマッチ。チャンピオンの山中慎介選手は2−1の判定勝ちを収めました。この勝利で山中選手は、2011年にWBCの世界タイトルを手にしてから実に9度目の防衛に成功したのです。

26戦24勝、無敗。そのうち17のKO勝利を積み重ね、KO率は実に65%以上。「神の左」と呼ばれる左ストレートでの豪快なKO勝利が多い山中選手にとって、9度の防衛のうち判定勝ちは今回を含めてわずかに3度。判定が割れたのはチャンピオンになってから初めてのことでした。

試合前からやりにくいと予想はしていた。実際に、リングの上で相対してすぐに、距離の取り方が上手い、チャンスは少ないと感じた


山中選手は振り返ります。
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苦しい中で見せた勝負師の真価

挑戦者のアンセルモ・モレノ(パナマ)はWBA王者を12度も防衛した実力者。今回の試合、モレノ選手の出方を慎重に見てしまったため、後手に回ってしまったと山中選手は分析しています。

4ラウンド終了後の途中採点では山中選手が僅かにリード、しかしながら8ラウンド終了後ではモレノ選手に逆転を許します。更に、反撃を狙った9ラウンドに山中選手は強烈な一撃を被弾。形勢はモレノ選手に傾いたように見えました。

しかしここから山中選手の反撃が始まります。

山場となった10ラウンド。「ギアを上げて気持ちで強引にいった」という山中選手の左ストレートがようやくヒットし、モレノ選手のリズムが崩れ始めました。

右のジャブで自分の距離で試合を支配し、チャンスで左を打ち込むのが山中選手のファイティングスタイルですが、今回は試合巧者のモレノ選手が相手。ジャブの刺し合いで苦労をし、自分のペースで試合を運べなかった山中選手が我慢を重ねて、この勝負どころで前に出ます。

試合後半に攻め立てた山中選手は主導権を握り、そのまま勝利を手にしました。

終盤、判定を視野に入れて消極的な試合運びが目立ったモレノ選手に対して、攻めの姿勢を強めた山中選手。終盤の攻勢が、2対1とスプリットデシジョンとなった僅差の判定に与えた影響は少なくないと言えるでしょう。
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まるで詰め将棋。左を当てるプロセスを考える。

もともとは右利きで、ボクシングを始めた頃はオーソドックススタイルだった山中選手ですが、左ストレートは一番しっくりきたパンチでひたすら練習したそうです。

本人いわく「腕の力など、筋力の数値でいえばそんなに高くない」とのことですが、大事なのは全身を使って最も力が乗る位置に打ち込むこと。体重移動をスムーズに行い、上半身との連動でストレートを繰り出します。

足で踏み込んでパンチを遠くに飛ばす


左ストレートを打つ際のイメージをこのように語ります。

自分のスタイルはペース配分をしっかり把握し、ストレートとジャブを上下にちらしながら、最後に左ストレートで仕留めること。
試合の中で左ストレートを出すタイミングというのは逆算をしながら試合を進めている


常に冷静さを保ち続ける精神力。ペース、距離を支配する技術の高さ。詰将棋のように逆算して試合を進めるインテリジェンス。そして、練習に裏打ちされた必殺のパンチ。
これらが揃って山中選手の左ストレートは、まさに「神の左」となるのです。
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30歳を過ぎても戦える体づくり。

身長は約170cm、体重50kg前半、今年で33歳となった山中選手。一般的な30代男性でいうと数字上は細めの印象ですが、二の腕や太ももの筋肉、腹筋などはTシャツの上からでも分かるほど鍛え上げられています。

山中選手の1日のトレーニングは朝のロードワークを50分、ジムワークを2~3時間程度実施します。これを月曜日から土曜日まで行い、日曜日は休養です。

30歳を過ぎてからのトレーニングの変化について、山中選手は

試合後は特にそうだが、疲労が残りやすくもなったため、ケアに重点を置くようになった。ストレッチやマッサージは多く取り入れている


と話します。

今回、同年代の男性におすすめのトレーニングを聞いたところ、

やはりボクシングがおすすめ。ジムトレーニングは自分のペースで楽しみながら出来るし、続ければ目に見えて体型も変わってくる。最近は女性向けのエクササイズとしても広まっているし是非やってもらいたい


と答えてくれました。

インタビュー中、山中選手が着用していたのがナイキの新商品「ナイキ プロ ハイパークール マックス タイツ」。
多様なトレーニングに対応するように開発されたこのタイツは、足首から腰までしっかりとサポートし、同時にジムや屋外の高温の中でも暑くなりすぎないよう軽量DRI-FITメッシュ素材が、空気の流れを作り、素早く熱を逃がします。

山中選手も

フィット感が素晴らしく、ロードワークに最適。体幹トレーニングなどの際にも是非着用したい

と話しています。
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「どれだけインパクトのある試合ができるか。それが今後につながっていく」

今後の目標を聞くと「相手あってのもの」と控えめながらも「KOで勝ちたい」と明確に答えた山中選手。

統一戦は興味があるけれど、一試合一試合しっかり戦っていきたい。その中でインパクトのある試合ができれば、それがつながっていくと思う


と、左拳をポンポンと叩きながら話しました。

2016年3月4日に河野公平、亀田大毅と対戦をしたソリスとの試合を予定している山中選手。豪快な神の左を期待しつつ、それを打つまでのプロセスを観るのも一興ではないでしょうか。

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