これを読めば基本はバッチリ!意外と細かい?球種のおさらい
WATCHこれを読めば基本はバッチリ!意外と細かい?球種のおさらい
今年のプロ野球は広島カープの黒田博樹や、日本ハムファイターズの大谷翔平などピッチャーの活躍がチームを率いる原動力となりました。さて、そんなピッチャーの魅力といえば大谷翔平のような160kmを超える速球と並び、打者の手元で鋭く曲がる変化球も魅力の一つと言えます。同じ球を投げてもサイドスローとオーバースローでは違う変化になるため無限に種類があるとも言える変化球。今回はそんな変化球について代表的なものを紹介したいと思います。(今回はすべてオーバースローでの投球を前提としています。)
メジャーで活躍するには縦の変化球?
まずは縦方向に変化する変化球を見ていきましょう。
この変化球で代表的なのは、日本人メジャーリーガーの先駆者となった野茂英雄が得意としていたフォークボールです。人差し指と中指の間にボールを挟み、手首を固定して投げることから、ボールの回転が少なくなり、重力の影響を受けやすくなることで、ストレートよりも放物線の軌道を描いていきます。ストレートと同じ投法で投げることが容易で、変化も大きいため、空振りを取るためによく用いられる変化球です。
野茂のトルネード投法と呼ばれる独特のフォームから繰り出されるフォークは、当時のメジャーリーグを席巻。デビューの年には、新人王と最多奪三振を獲得しています。
フォークボールの代わりとして最近では、スプリットフィンガー・ファストボールが主流となってきています。その頭文字からSFFと呼ばれたり、単にスプリットとも呼ばれる変化球は、フォークと比べると変化が少なく、その分球速は上。フォークよりも見極めが難しい球種だと言われています。田中将大を始め、黒田博樹や上原浩治、岩隈久志などメジャーで活躍した日本人選手が得意としている変化球です。
分類の難しい利き腕方向に変化する変化球
ピッチャーの利き腕方向に変化する球種の代表例には、シュートとシンカーがあります。例えば、右投げのピッチャーが右打ちのバッターを相手にすると、バッターの内角をえぐるような軌道になります。シュートの軌道は、投げた直後はストレートですが、バッターの近くで利き腕方向へと変化。そのため、内角へと攻め込まれた場合は体が開いた打ち方になってしまい、打ち損じさせることができます。ピッチャーによってはストレートより速いことある変化球です。
変化球の分類にはメジャーリーグ、日本プロ野球ともに様々な方法があり、メジャーではシュートをツーシーム・ファストボール(一般にはツーシーム)と呼ばれる速球の一種に分類されています。
日米の変化球の分類で最も異なるのが、日本では落ちるシュートとも呼ばれるシンカーです。似た変化をする変化球にスクリューがありますが、日本では一般的にシンカーが直線から落ちながら曲がる軌道に、スクリューが弧を描く軌道として区別されます。
日本でいうシンカーは、メジャーではスクリューに分類。一方、メジャーでいうシンカーとは、シンキングファストボールと呼ばれる速球の一種を言い、注意が必要です。
シンカーを得意としていたピッチャーには、メジャーのオファーを断り広島を優勝に導いた黒田博樹、ヤクルトで活躍した高津臣吾、西武で活躍した潮崎哲也の名前があげられるでしょう。
ピッチャーの利き腕と逆方向への変化球は?
利き腕と反対方向、振り下ろす腕の方向に変化する球種がカーブとスライダーです。右投手対右打者では、バットから逃げるような変化をするため、空振りを取りやすいと言われています。
投球に緩急の変化をもたらすカーブは、球速自体は速くないものの、速球に目が慣れることを反らすために効果的に使われます。スローカーブやドロップカーブ、ナックルカーブ、パワーカーブなど速度や縦方向への変化で細かく分かれます。打者のタイミングをずらすカーブの名手といえば、巨人で活躍した江川卓、桑田真澄、西武や巨人を渡り歩いた現スフトバンク監督の工藤公康があげられるでしょう。
スライダーもカーブと並び、現在最も主流の変化球の一つです。カーブよりもスピードがあり、打者の手元で変化。横スライダー、縦スライダー、高速スライダーなど変化の方向やその球速などの特徴により分けられます。スライダーの名手は、中日の岩瀬仁紀、ヤクルトの伊藤智仁が挙げられます。
この他代表的な変化球!
ここからはこれまで紹介した以外の代表的な変化球についていくつか紹介していきます。まずはナックルボールから。ナックルボールはほぼ無回転で投げられる球種です。イレギュラーに変化し、コントロールはほぼ不可能なのでキャッチャーにとっても捕球の難易度の高いボールです。
ナックルの名手R.A.ディッキー。
ナックルと似た変化球にパームボールがあります。パームボールは、手のひらで押し出すように投げ、あまり回転しないため、投げた直後から落ち始めてゆっくりとキャッチャーミットへと弧を描いて進みます。回転が少ないので、風速や風向、湿度などに大きく左右され、その軌道を読みにくいとともに投げにくいという特徴があります。
最後はチェンジアップです。チェンジアップとは速球と同じ腕の振りから投げられる回転の少ない遅い変化球のこと。失速しながら変化して手元に来るため、打者のタイミングをずらすためにも有効な球種です。その握り方によってサークルチェンジ、スプリットチェンジ、バルカンチェンジ、パームボール・チェンジ、高速チェンジアップなどに分類されています。中でも高速チェンジアップはダルビッシュ有が2010年ごろから使い始めたこともあり注目されました。
なお、アメリカでは速球全般をファストボール、変化球全般をチェンジアップと大きく2つに分類されるようです。
ひとくくりに変化球といっても、その変化はまさに多種多様。握り方による分類や回転軸による分類、変化方向での分類など様々な方法があり、今回紹介した以外にも多数の球種があります。球種を知ることで、ピッチャーの特徴やピッチングの組み立てなどにも興味が沸き、野球をもっと楽しく観戦することができるのではないでしょうか。