まくら投げがスポーツに!『全日本まくら投げ大会in伊東温泉』の魅力と展望
DOまくら投げがスポーツに!『全日本まくら投げ大会in伊東温泉』の魅力と展望
いつの時代も、修学旅行の定番として親しまれているまくら投げ。
温泉地として知られる静岡県の伊東市では、まくら投げを競技化し、『全日本まくら投げ大会in伊東温泉』を毎年開催しています。
今年の2月18日(土)・19日(日)に第5回大会が開催されたこの大会の魅力とともに、スポーツツーリズムとしてのまくら投げの可能性を紹介していきたいと思います。
見た目だけじゃない!競技性の高いまくら投げのルール
まずは、気になるまくら投げのルールを紹介します。
- 畳のコート上でまくらを投げ合う、ドッジボールに似た競技。
- 1チームの人数は6〜8人。
フィールドプレーヤーは5人(うち大将1人、リベロ1人)で、残りの1〜3人はサポート。- 相手チームが投げたまくらに触れたり、畳から落ちたりしたらアウト。キャッチもNG。アウトになった選手は、コート後方の布団で寝たふりをする。
ただし、リベロは布団を持って自分のコートを守ることができ、まくらに当たってもアウトにならない。- 先に相手チームの大将をアウトにした方の勝ち。
1セット2分間で、時間内に決着がつかない場合には、生き残っている人数が多いチームの勝ち。
1試合あたり、2セット先取の3セットマッチ。- 残り30秒でリベロ終了となり、通常の選手と同様の扱いになる。
- サポートは、コート外のまくらを中に入れたり、「先生がきたぞォ〜」コールをしたりする。
「先生がきたぞォ〜」コールをすると、10秒間、そのチームの大将が相手コートに侵入してまくらを回収することができる。その間、相手の大将は布団で寝ていなければならず、その他の選手はその場に正座をする。
競技の様子
次から次へと飛んでくるまくらを避け続けるのは、結構ハードでスリリング。選手たちのダイナミックな動きに、観客から歓声が上がっていました。
また、試合中は10個のまくらが飛び交うので、技術だけでなく、チームワークや戦術がとても重要に。「先生がきたぞォ〜」コールも試合の流れを大きく左右するポイントとなり、見た目以上に奥が深いスポーツと言えます。
布団に入って寝ている状態から競技スタート。試合前は緊張感が漂います。
リベロの守り方も、チームによってさまざま。
こちらのリベロは、“ムササビ戦法”で自陣を守ります。
地元の高校生による「まくら投げのすすめ」が観光イベントに
実はこのまくら投げ、地元の高校生がビジネスコンテストで準優勝を獲得したアイデアをもとに、伊東市が観光イベント化したもの。
伊東市内にある伊東高校城ヶ崎分校の生徒が考案したこのアイデアは、『まくら投げのすすめ』と呼ばれるもので、最初は“ストレスを溜め込みがちな現代人がストレスを発散できるもの”としてまくら投げの競技化が提案されました。
2010年の全国高等学校デザイン選手権大会(通称:デザセン)において、準優勝・市民賞・高校生賞を受賞。その後は、伊東温泉の魅力の発信に繋がるとして、伊東市と伊東観光協会が主体となり全国大会を開催するようになりました。
“まくら投げ発祥の地”伊東を目指して
大会は『一般の部』と『子供の部』に分けられ、『一般の部』は2日間にわたっての開催。
会場の近くには温泉街が広がり、試合の後は、ゆっくりと疲れを癒すことができます。また、伊東には数多くの観光スポットがあるため、たとえ初日で敗退してしまっても、翌日は観光を楽しむことができます。
身軽に動き回る子供たち。布団の大きさが際立ちます。
家族で一般の部にエントリー。大人に混ざって活躍する子供の姿に、注目が集まります。
メディアなどの影響で応募チーム数は年々増えており、観光イベントとして盛り上がりを見せていますが、目指すのはそれだけではないと伊東市の職員は言います。
まくら投げという競技を全国・全世界に発信し、今後はもっと大きな大会にしていきたい。各地で予選を行い、本戦を伊東で実施できたらいいなと思います。「まくら投げといえば伊東が発祥だよね!」と思ってもらえるくらいにしたいですね。
“伊東温泉”と書かれた色鮮やかなはっぴを羽織った審判。
一つの市で大会を運営するには、開催規模に限界があります。大会の出場者を増やすだけではなく、まくら投げという競技自体を日本中、世界中に拡散していくことで、まくら投げ発祥の地として伊東をPRしていく狙いです。
浴衣姿で行うまくら投げと、試合の疲れを癒やしてくれる温泉の相性はバツグン。チームで泊まれる旅館やホテルが豊富にある温泉地なら、予選の開催地に最適かもしれません。
若者の心を掴む、まくら投げによるスポーツツーリズム
伊東は温泉に加えて自然景観もウリの観光地で、観光客の中にはリピーターも多いとか。ただ、若い世代の観光客が少なく、まくら投げ大会の開催は若者の心を掴む狙いもあるそうです。
試合前に円陣を組む、大学生チーム。
今大会、一般の部の参加者は20代くらいの若者が目立っていました。高校や大学時代の友達、大学のサークル仲間、職場の同僚など、チームのメンバー構成はさまざま。
また、会場で意気投合したチーム同士がお互いに応援し合う姿も見受けられ、大会を通して知り合った戦友たちが絆を深める姿は、スポーツの大会ならではの光景でした。
優勝チームは、おそろいの浴衣姿で出場。
まくら投げ自体は誰もが知っている遊びですが、メジャースポーツと違って競技経験に差がないため、上手い・下手を気にすることなく誰でも参加して楽しむことができます。それに加えて、SNSで目を引くようなインパクトの大きさや話題性の高さが、若者を中心に人気が高まっている秘訣のように感じられました。
今大会、一般の部は48チームの出場枠に対して応募が84チームもあり、抽選の結果残念ながら出場できなかったチームも。
果たして、日本各地でまくら投げの大会が開催される日は来るのでしょうか。
大人も子供も夢中になれる、まくら投げというスポーツの今後の発展に、期待が高まります。