日本女子フットサルのトップリーグが開幕!関東の雄、さいたまSAICOLOが担うものとは?

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日本女子フットサルのトップリーグが開幕!関東の雄、さいたまSAICOLOが担うものとは?

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6月2日(土) 東京都立川市のアリーナ立川立飛で、「GAVIC presents 日本女子フットサルリーグ2018」が開幕しました。同リーグは、「WOMEN’S F.LEAGUE」として、2016年に誕生した女子フットサルの全国リーグです。

2016年度は、プレ大会として6チームで行われ、2017年度から、正式大会として7チームによってスタート。今年度は、2シーズン目となり、8チームによる、セントラル方式の1回戦総当たりのリーグ戦が12月まで行われ、上位3チームによるプレーオフが2019年2月に開催されます。

2018年シーズンのオープニングマッチは、さいたまSAICOLO(サイコロ)とエスポラーダ北海道イルネーヴェの顔合わせとなり、さいたまSAICOLOが5-1で勝利しました。

さいたまSAICOLOは、日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)1部に所属する浦和レッドダイヤモンズレディースのOGやそのサッカー仲間が中心になって2011年に結成されました。チーム名は、ホームタウンである、さいたまの「サイ」とボールが「コロコロ」転がって人と人をつないできたことから「サイコロ」と名付けられました。

チームを指揮する小野直樹監督は、Fリーグの湘南ベルマーレやアグレミーナ浜松の監督を歴任。その後はシュートアニージャ(関東女子フットサルリーグ所属)の設立に携わり10年間に渡って女子選手を指導してきました。さいたまSAICOLOの監督には2015年度に就任しています。

さいたまSAICOLOの小野監督と選手の皆さんに、開幕戦を終えたばかりの試合会場でお話を伺うことができました。


チームを指揮する小野直樹監督

多様なスタイルのチームと対戦できるのが全国リーグの魅力

小野監督は、日本の女子フットサルにトップリーグが誕生したメリットをこう話します。

日本女子フットサルリーグによって、あらゆるタイプのチームと対戦できるようになったことは大きな変化です。今まで(さいたまSAICOLOは)関東リーグを中心に活動をしていましたが、地域リーグには似たようなスタイルのチームが多くなりがちです。対戦する中でお互いの良さを吸収するからなのでしょう。ところが、全国リーグともなると全く違うスタイルの対戦が多くなります。攻撃や守備、それぞれのチームが持つスピードもバラバラです。また、多くのチームはフィジカルの強度が高く、簡単な試合になる対戦カードはほとんどありません。

背番号11番・吉川紗代選手も「確かに地域によってフットサルのスタイルは全然違います。関西のチームは個の力を全面に押し出してガツガツと戦ってくる印象があります。どんどん前に来ますね。一方、関東のチームはキレイに相手を崩そうとする傾向が強いですね。」と教えてくれました。

吉川選手は、日本女子フットサルリーグのプレ大会から2年連続でチーム最多得点を記録しているゴールゲッターです。吉川選手の言葉を受けて、他のメンバーからも「丸岡(RUCK)のように、若くてスピードのあるチームもいる。」「今年は流通経済大学のように、大学のチームも入ってきた。」「エスポラーダ北海道も去年のスタイルとは、違い組織力が上がっていた。」など様々な意見が上がっていました。

さらに小野監督は、全国リーグができたことで「チームからクラブに変化しつつある」と言います。

アウェイのときには、前の日に飛行機や新幹線などで移動しなければならないこともあります。アウェイでは、コンディションの整え方が、とても重要になるので、選手個人としても、クラブとしても、規律を正すようになります。そういう流れの中で、今まではチームだったものが、ようやくクラブという組織になってきたのだと感じます。選手にとっても、このような経験をすることで、うちのチームでの活動に限らず、日本代表に選ばれたときにも、すんなりとホームアンドアウェイでのスタイルや規律の中で対応できるようになります。

これまでは、関東圏内で試合をするだけだったものが、日本女子フットサルリーグでは、北海道函館市、福井県福井市、愛知県一宮市、兵庫県神戸市などのアウェイゲームをトップパフォーマンスでこなすためのタフさが求められるのです。

忙しい日々の中でフットサルの普及や育成に携わろうとする選手たち

一方で、ほとんどの女子フットサル選手は、競技に専念できる環境に身を置いているわけではありません。遠征が多くなれば、あらゆる負担が選手にかかります。オンシーズンも平日は朝から晩まで仕事があります。アウェイで前泊が必要となれば金曜日は仕事を休まなければなりません。また、遠征費用も自腹というケースがほとんどです。開幕戦で先制弾を含む2ゴールをあげて勝利に貢献した背番号9番・安奈希沙選手はこう話します。

多くの選手が、月から金まで働き、土日に試合を迎えるというサイクルで戦っています。日本女子フットサルリーグ以外にも関東女子フットサルリーグの試合もありますし、さらには、全日本女子フットサル選手権大会もあります。去年は8週連続で試合のときもありました。そうなると、例えば小学生や中学生の女子を対象としたフットサルクリニックを開きたいという考えがあっても、日程的な難しさがあり、定期的に開催する難しさも出てきてしまいます。また、不定期ではありますが、小中学生を対象としたイベントやフットサルクリニックを行っていて、参加してくれた子どもたちにサイコロの試合を観戦に来る流れもつくりたいのですがなかなか難しいのが現状です。

安選手から課題として話しが及んだ『女子フットサル選手の育成や普及』については、小野監督から踏み込んだ話を聞くことができました。

中学生や高校生の中には、高いポテンシャルをもった選手がたくさんいると思うのですが、育成年代の女子がフットサルをプレーするクラブも少ないので、リーグ戦を開催する文化もまだ根付いていません。小学生のうちは男子と一緒にボールを蹴ることができても、女子の場合、中学生になった途端にボールを蹴る環境を失ってしまうケースが多々あります。ホームタウンのさいたま市は130万人都市なのですが、中学校の女子サッカー部は1校しかありません。僕らの想いとしては、我々のフットサルに対するノウハウを提供する環境として、中学校と協同しながら学校の体育館・グランドなどのハードを使った練習会からスタートできないかと模索しています。それがやがてクラブ(フットサル部)という環境にしていけたらという考えは持っています。

小野監督は、育成面や普及面の課題の解消策として「クラブとしても自前でU-20のセカンドチームを立ち上げて選手育成を手掛けてみたいと思っています。」と今後の展望を語りました。

「さいたまSAICOLO」のチーム名の由来には「観る人、応援する人が、サイコロを振るときの何が出るかわからない、ワクワクするような感覚を味わえるプレーをする」とありますが、チームは今後、周りを巻き込んでいくような熱く、人を惹きつける活躍がますます求められることでしょう。
 
2018年の日本女子フットサルリーグを白星発進したさいたまSAICOLO。続く6月16日の関東女子フットサルリーグの第1節でもカフリンガボーイズ東久留米を相手に5-0と完封しています。

今シーズンも忙しい週末が待っている選手たちに「どうしてフットサルを続けているんですか?」と愚問と知りつつ聞いてみると、「やっぱり好きなんですよ。だから、やっていけるんですよね」「いろいろときついことがあっても、フットサルのない日常では、あんな興奮を味わうことはできないよね!」「もしフットサルがなくなったら、何をしていいのかわからなくなっちゃうね。抜け殻になっちゃうかもね(笑)」との答えが返ってきました。
どの選手も充実した表情を浮かべていました。