スペイン女子プロバスケットボールチーム Perfumerías Avenida Baloncesto Salamanca – 小さな街の強豪チームとファンとの絆 –

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スペイン女子プロバスケットボールチーム Perfumerías Avenida Baloncesto Salamanca – 小さな街の強豪チームとファンとの絆 –

スポーティ

ヨーロッパ有数の学生街・サラマンカ。この街の名物は、スペインで最も古い大学であるサラマンカ大学と、女子バスケットボール界の強豪チームのPerfumerías Avenida Baloncesto Salamanca(パルフメリアス・アベニーダ・バロンセスト・サラマンカ)です。街の人は、このチームを親しみを込めて「アベニーダ」と呼んでいます。

人口わずか15万人ほどの街であるにもかかわらず、アベニーダはスペインの女子プロバスケットボールのトップリーグで連続優勝しているだけでなく、ヨーロッパでの大会でも優勝経験のある強豪チームなのです。

なぜ、サラマンカにこれほどまでに強いバスケットボールのチームがあるのでしょうか。それを解くカギは、毎試合熱い声援を送るファンの存在にありました。

TOP写真: Photo by Yukari TSUSHIMA

「アベニーダ」の歴史


Photo by Yukari TSUSHIMA

アベニーダの女子バスケットボールチームとしての歴史が始まったのは、1988年のことです。そのころすでに活動していた、サラマンカ大学の女子バスケットボールチームが、このチームの前身となりました。

実はこの年から、スペイン政府は1992年に開催されたバルセロナオリンピックに向けて、バスケットボール選手の強化に乗りだしていました。才能のある選手を獲得するため、スペイン各地方で女子バスケットボールのチームが結成されます。サラマンカでの動きもそうしたオリンピックに向けての流れの一つだったということができるでしょう。

サラマンカ大学女子バスケットボールチームは、スペイン女子バスケットボールリーグの第2部からスタートします。その後、1991-92年のシーズン終了時にスペインのトップリーグへと昇格します。そして、それ以来26シーズン、チームは一度も降格を経験していません。

1994年にスポンサーが旅行会社のHalcon Viajes(アルコン・ビアへ)へと変わりましたが、本拠地はそのままサラマンカにおかれます。このアルコン・ビアへは9年間にわたりチームのスポンサーとなりました。その間、このチームは2回スペインリーグで第2位になるも、リーグ優勝することはかないませんでした。

しかし、2003年にPerfumerías Avenidaがスポンサーになると、チームの成績が一気に改善します。その結果、アベニ―ダが初めてスペインリーグを優勝したのは2005年のことでした。それから今まで、スペイン国内リーグで3位以内をキープし続けています。

また、2004年のシーズンからはスペイン国内だけでなく、ヨーロッパの他の国とも試合をすることが普通になりました。毎年、ヨーロッパではユーロリーガ(Euroliga)という、女子プロバスケットボールのヨーロッパ・チャンピオンを決める大会があります。ヨーロッパ各国のトッププロチームが集まるこの大会にも毎年アベニ―ダは出場し、2008年には準優勝、2011年にはヨーロッパチャンピオンに輝きます。

2011年のユーロリーガ優勝時、サラマンカのプラザマイヨールはアベニ―ダのチームカラーである、青いマフラーを持ったファンで埋め尽くされました。そのマフラーが揺れる様子を表現した言葉が「Marea Azur(マレア・アズール)」。日本語に訳すと、「青いめまい」という意味です。以後、この言葉は、アベニーダのファンを意味する言葉として、スペインのバスケットボール界に定着しました。

ファンと選手との絆


Photo by Yukari TSUSHIMA

このような活躍を見せるアベニーダ。このチームでプレーする選手の多くは、各国代表としてオリンピックや世界選手権でプレーするような、一流選手ばかりです。そのような世界のトップレベルの選手たちが、なぜ、サラマンカのチームでプレーすることを望むののでしょうか。

その背景にあるのは、経済的な要因よりも、むしろ環境的な要因と言ってもよいでしょう。というのも、多くの選手がサラマンカへの移籍する理由の一つとして、このチームを支えるファンの存在を挙げることも少なくないのです。

スペインの女子バスケットボールは、男子ほど注目されていはいません。熱心に応援する人が決して多いとは言えないスポーツであるにもかかわらず、サラマンカでアベニーダのホームゲームが開催される時には、毎回3000人近いファンが応援に駆け付けます。

もっとも歴史のあるファンクラブはかれこれ25年前からアベニーダを応援しています。そのファンクラブの名前は「La Ranita(ラ・ラニータ)」。サラマンカ大学の建物にある有名なかえるの彫刻がその名前の由来です。

25年前のアベニーダは、スペイン女子バスケットボールのトップリーグに昇格したばかり。スペイン国内での優勝はもちろん、ヨーロッパで優勝できるチームになるなど、だれも想像もしていませんでした。

そんなアベニーダを2人のサラマンカ在住の男性が熱心に応援し始めます。彼らはアベニーダの試合があれば、スペイン中どこにでも車を走らせました。そして試合中は太鼓やトランペットを休むことなく演奏し、アベニーダを応援し続けたのです。


現在のラ・ラニータの応援団。Photo by Yukari TSUSHIMA

はじめはたった2人で始まった応援団でしたが、25年後の今、メンバーの数は約200人。スペイン女子バスケットボール界有数の大応援団となりました。しかし、その精神は、たった2人でアベニーダを応援し続けていた頃と変わりはありません。「チームが勝ていても負けていても、選手と同じ場所にいること」それがこのラ・ラニータのメンバーの誇りなのです。

そのため、アベニーダの選手は熱心なファンの顔をよく憶えています。中には選手とファンというよりも、友人同士のような関係になることも、珍しくはありません。

しかし、選手たちはみんなプロ。毎年シーズンが終わると、他のチームへと移籍する人も現れます。そして移籍した後、敵のチームの一員として、アベニーダと対戦することも珍しくありません。しかしそのような時でも、サラマンカのファンは野次をとばすこともなく、いつも暖かな拍手で元アベニーダの選手を迎えます。

そんなこともあってか、一旦アベニーダを去った選手が、数年後またこのチームに戻ってくることもよくあります。そのような選手がコートに現れたとき、アベニーダのファンたちは、とても力強い拍手で選手を迎えます。

スペインの小さな街の強豪チームは、ファンと選手たちとの距離がとても近く、強いきずなで結ばれているのです。

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