スペイン女子・バスケットボールの意外な強豪国
WATCHスペイン女子・バスケットボールの意外な強豪国
スペインは、バスケットボールの強豪国として有名です。Pao Gasol(パオ・ガソル)とMark Gasol(マーク・ガソル)の兄弟、Manuel Carderon(マヌエル・カルデロン)、Ricky Rubio(リッキー・ルビオ)など、スペイン国内だけでなくNBAで活躍する選手も少なくありません。
同時に、実はスペインは、女子バスケットボールの強豪国でもあるのです。この記事では、スペインの女子バスケットボールの歴史を見て行きたいと思います。
スペイン・テネリフェでの女子バスケットワールドカップ
今年の9月22日から9月30日にかけて、スペインのテネリフェで女子バスケボールのワールドカップが開催されていました。優勝したのは、アメリカ代表、第2位は、オーストラリア代表、そして第3位になったのが、スペイン代表でした。
このように、スペインは女子バスケットボールでも、強豪国なのです。リオ・デ・ジャネイロのオリンピックでは、アメリカに次いで銀メダルに獲得しましたし、2014年のトルコでのワールドカップでも、銀メダルを獲得しました。いつも決勝でアメリカ合衆国の厚い壁に跳ね返されてしまいますが、ヨーロッパでも有数の強豪国です。
スペイン女子バスケットボールの歴史
スペインの女子バスケットボールが、世界の表舞台に登場するようになったのは、1993年からです。この年のイタリアで開催されたヨーロッパ選手権で、スペイン代表は決勝戦でフランス代表に勝利し、初めてヨーロッパチャンピオンに輝きました。
実はこの金メダルは、スペインバスケットボール界全体にとって、非常に意味のあるものでした。というのも、*¹この時までバスケットボールのスペイン代表は、男子も女子も、ヨーロッパあるいは世界レベルで金メダルを獲得したことがなかったのです。
1988年から、スペイン政府は、バルセロナ・オリンピックに向けて、女子バスケットボール選手の育成に着手しました。その時、選手と同時にスポーツ・マッサージ師やコーチなどの育成も同時に手掛けることで、1992年のバルセロナ・オリンピック以降も見据えた、女子バスケットボールの強化策に乗り出したのです。
しかし、1992年のバルセロナ・オリンピックでは、スペイン代表は、良い成績を残すことができず、予選リーグで敗退してしまいます。そのため、1993年のヨーロッパ選手権はスペイン代表にとって、彼女たちの存在意義すらも問われるほどの、重要な試合であったのです。
幸い、前述のように、1993年のヨーロッパ選手権で、女子スペイン代表は、金メダルに輝きます。そして時期を同じくして、この頃、スペイン国内でのスポーツ熱が盛り上がります。しかし、それは男子スポーツに限った話でした。
ヨーロッパでナンバーワンになった競技があったにも関わらず、この後しばらくは、スペインの女子スポーツにとって苦しい時期が続きます。まず、1990年代のスペインの家庭の多くでは、*²女性がスポーツに打ち込むことを良しとしない風潮がありました。加えて、多くの女子スポーツ選手は、結婚して家庭を持つと、競技から引退せざるを得ない環境にもありました。
また、TVやラジオをはじめとするマスコミ関係も、女子スポーツの報道に熱心ではありませんでした。また、スペイン国内での景気後退などの影響により、女子スポーツのスポンサーになりたいと思う企業は多くはなかったのです。
このような環境で、スペインの女子スポーツ選手は国内だけでなく、海外に活躍の場を求めます。それはスペイン・女子バスケットボール界でも同じことでした。
*¹参考資料:https://as.com/baloncesto/2018/06/12/mas_baloncesto/1528831746_605107.html
*²参考資料:http://www.lokosxelbaloncestofemenino.com/index.php/mundial-2018/8374-las-campeonas-del-93-eran-invisibles
新世紀のスペイン・女子バスケットボールの使命
しかし、スペインの女子バスケットボール界は、21世紀にはいると変化の兆しを見せ始めます。まず、スペインの景気が回復し始めると、多くの企業が、女子バスケットボールのスポンサーに名乗りを上げ始めます。その結果、スペイン各地に、女子バスケットボールのチームができ始めました。
加えて、女子スポーツへの人気や理解もスペイン国内で高まります。例えば、サラマンカに本拠地を持つPerfumerías Avenidaは、ホームの試合の時には、3000人以上の観客をスタジアムに集めます。このチームのスタジアムは、「スペイン女子バスケットボール界で、最も強力な地元ファンがあつまるスタジアム」として有名です。これは同時に、「他のチームにとって、最もプレーしにくいスタジアム」であることを意味します。
また、TVによる女子バスケットボールの試合中継も頻繁に見ることができます。スペインのスポーツ専門チャンネルの週末のプログラムは、サッカーとバスケットボールで埋め尽くされますが、両競技とも、男子だけでなく、女子の競技も頻繁に中継されるのです。
このように、女子バスケットボールにかかわる環境は改善されていはいますが、それでも、まだ様々な問題を抱えています。例えば、男性と女性のバスケットボール選手の収入の格差は、*³現在最も大きな問題の1つです 。
また、スタジアムなども、男子チームの環境と比べると、女子バスケットボールの環境は決して質の高いものではありません。
スペイン女子バスケットボールの使命は、国際試合に勝ち続けることだけではなく、プレーヤーとして誇りを持てる環境を作り上げることでもあるのです。