ヨーロッパ 自転車ロードレース・シーズン開幕戦 チャレンジ・マヨルカ2020

ヨーロッパ 自転車ロードレース・シーズン開幕戦 チャレンジ・マヨルカ2020 WATCH

ヨーロッパ 自転車ロードレース・シーズン開幕戦 チャレンジ・マヨルカ2020

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ヨーロッパの自転車シーズンの開幕を告げるのは、通称チャレンジ・マヨルカ(Challenge Mallorca)と呼ばれる、4日間連続で開催される1DAYレースです。冬季トレーニングの成果を確認するサイクリストたちが多数参加します。

今回の記事では、有力選手の集まったこの4日間のレースの様子をレポートします。

TOP写真:チャレンジ・マヨルカ初日。スタート前にサイン台に並ぶモービースターの選手たち。Photo by Yukari TSUSHIMA

チャレンジ・マヨルカって、どんなレース


写真左から、アルベルト・トーレス(Alberto Torres/Movistar)、チャビエル・カニェラス(Xavier Cañellas/ Caja Rural Seguros RGA)、ルイス・マス(Luis Mas/Movistar)の3人はこのマヨルカ島の出身。Photo by Yukari TSUSHIMA

チャレンジ・マヨルカの舞台となるのは、地中海に浮かぶスペイン領のマヨルカ島。温暖なこの島が、ヨーロッパの自転車ロードレース・シーズンの最初のレースの舞台となります。

日本ではあまり知られていないレースですが、参加する選手たちはなかなか豪華。モービースター(Team Movistar)からは、アレハンドロ・バルベルデ(Alejandro Valverde)選手を筆頭に、マーク・ソレル(Marc Soler)選手、そして地元マヨルカ島出身のルイス・マス(Luis Mas)選手を中心に参戦。

チーム・アルケア・サムシック(Team Arkea Samsic)からはスプリンターのナッセル・ブア二(Nacer Bouhanni)選手が出走。そして、トレック(Team Trek)やロット・スダル(Lotto Sudal)も参加しました。

こうしたワールド・ツアーチームに並んで、スペインのカハル・ルラール(Caja Rural Seguros RGA)やフンシオン・エウスカディ(Fundación Euskadi)など、UCIプロコンティネンタルやUCIコンティネンタルのチームが総勢23チーム参加しました。

このチャレンジマヨルカは、4日間連続の開催ですが、ステージレースではありません。つまり、1DAYレースが4日間続くので、各レースごとにTOP3が表彰されます。もちろん、チームによっては4日間出走選手を変更することも可能です。

この時期、このマヨルカ島やスペイン南部のアリカンテなどでトレーニングキャンプをしているチームも少なくありません。そのため、比較的多くのチームが参加しやすいレースなのです。

4日間のレース構成は、スプリンター向けのステージが2日、クライマー向けのステージが2日というもの。とはいえ、マヨルカ島は、意外と小さな登りの多いため、登りも苦にしないスプリンターがこのステージを勝つ傾向があります。

そして、登りステージの舞台は、島の北東側に続く曲がりくねった山道。最大斜度20%の山道を選手たちは登ことになります。

実は、マヨルカの最大の難所は、この曲がりくねった山道の下りです。路面は非常に滑りやすく、もしも雨でも降ろうものなら、とあるチームの監督の言葉を借りると「アイス・スケート場と同じくらい滑る」とのこと。そして、このチャレンジ・マヨルカでは、選手たちは雨と寒さに苦しむことも珍しくはありません。

初日は順当にスプリンターが勝利

マヨルカの初日のスプリントを制したマテオ・モスケッティ選手(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

チャレンジ・マヨルカの初日は、トロフェオ・セス・サリーナス・フェラニチュウ(TROFEO SES SALINES – FELANITX)からスタートします。島の南東側が舞台となるこの日のレースの距離は168㎞、獲得標高は、1046mと低め。コース上の山岳はすべて4級山岳という、スプリンター向けのコースです。

この日のマヨルカ島は快晴。スタート前に選手の間から「暑いよね」という声が聞かれたほど、早朝から気温が上がりました。

ほとんどの選手にとって、この日が2020年の最初のレースになります。この日の優勝を狙うスプリンターの中で、特に注目を集めたのが、今年チーム・アルケア・サムシックに移籍したナッセル・ボアン二選手。スタート前のサイン台に立つと、大きな拍手が送られました。

スター軍団モービースターには、前述のバルベルデ選手やソレル選手に加えて、このマヨルカ島出身の2人のサイクリスト、ルイス・マス(Luis Mas)選手とアルベルト・トーレス(Alberto Torres)選手の2人がレースに出走しました。両選手は、この日観客から大きな声援を受けていました。

選手たちは正午前にスタートし、この日のゴール地点はフェラニチュウを目指します。ゴール地点は街中にあり、路面も荒れている上に最後の300mはカーブが続く、スプリンターにとって難しいコースです。

そして、この日このコースを制し優勝したのはトレック・セガフレードのマテオ・モスケッティ選手(Mateo Moschetti)。最後の直線では、ほかの選手に一度も先頭を譲ることなく、そのままゴールしました。

山岳コースの初日となった2日目


マヨルカ2日目はエマヌエル・ブッチャマン選手が勝利。Photo by Yukari TSUSHIMA

2日目のレースはトロフェオ・シエラ・デ・トラムンタナ・ソレール・デイア(TROFEO SERRA DE TRAMUNTANA. SÓLLER – DEIÀ)。マヨルカ島の北東にある山々がレースの舞台となります。この日は各チームのクライマーが勢ぞろい。スタート地点となったソレールは山と緑に囲まれた、美しい村です。

この日の距離は160㎞、獲得標高は2629m。舞台となるシエラ・デ・トラムンタナをほぼ一回りするコースです。レース開始当初には、3人ほどの逃げ集団ができたものの、メイン集団がしっかりとペースをコントロールし、最大でも3分までしかタイム差が開きません。

この日のコースで最も厳しいのが、マヨルカ名物の登りであるコル・デ・プイグ・マヨール(Col de Puig Mayor)前後の約40㎞ほど。カーブの続く路面の荒い道路を選手たちは登り、そして下ります。幸いこの日は快晴で雨の不安は全くなかったものの、悪天候でのこのコースの恐ろしさを想像させるには十分なルートとなりました。

結局この日のレースを優勝したのはエマヌエル・ブッチャマン選手(Emanuel Buchmann/ Bora-Hansgrohe)。ゴール前10㎞程から集団を飛び出し、そのまま逃げ切って優勝しました。

第2位は、バルベルデ選手でしたが、彼の体にはまだまだ余裕がある様子。東京オリンピックにピークを迎えるためのスケジュールがしっかりと組まれてるであろうことがうかがえました。

斜度20%の激坂がゴール前にそびえる3日目

3日目の頂上ゴールのレースはマーク・ソレル選手が勝利。Photo by Yukari TSUSHIMA

3日目はチャレンジ・マヨルカ名物の、トロフェオ・ポリェンサ・ポルト・ダンドラチュウ(TROFEO POLLENÇA – PORT D’ANDRATX)。距離171km。獲得標高3183mのこの日のコース中には、4回ほど斜度15%以上の登りが現れます。

コースの前半で前日も登ったコル・デ・プイグ・マヨ―ルを再度通過した後、選手たちは島を南下。島の南東にあるアンドラチュウ(Andratx)を目指します。しかし、このゴール直前の最後の4㎞には15%以上の登りがつづくという、厳しい登りゴールです。

そんなこの日のレースが動いたのは、ゴールまでのこり30㎞地点となった瞬間でした。メイン集団を飛び出したマーク・ソレル(Mark Soller/Movistar)選手とグレゴール・ムールベルガー(Gregor Muhelberger/ Bora-Handsgrohe)選手の2人がゴール前まで逃げ続けます。

そしてこの日の優勝したのは、モービースターのソレル選手。3位以降のメイン集団に1分以上のタイム差をつけての優勝となりました。前日2位のアレハンドロ・バルベルデ選手はトップと2分57秒差の第10位。モービースターは若手が活躍したステージとなりました。

ちなみにこの日の選手たちの平均時速は39.2㎞。登りが厳しい割には、若干スピーディなレース展開となりました。

パルマの海辺がスプリントの舞台となる4日目

最終日のスプリントはマテオ・モスケッティ選手が再度勝利(写真左から3番目)。Photo by Yukari TSUSHIMA

最終日のレースはトロフェオ・プラヤ・デ・パルマ・パルマ(TROFEO PLAYA DE PALMA – PALMA)。マヨルカの中心都市パルマがスタート及びゴールとなります。

距離は160㎞、獲得標高は1529mのスプリンターのためのステージです。またゴール地点はパルマの海岸沿いの直線道路のサーキットコース。初日のレースよりもよりスプリンターの力が試されるコースと言えます。

この日のレースを制したのは、トレック・セガフレードのマテオ・モスケッティ(Mateo Moschetti)選手。初日に続いてのレース制覇となりました。

4日間を通じて晴天に恵まれた今年のチャレンジ・マヨルカ。スプリンターのモスケッティ選手と、モービースターへ今年移籍した選手たちの好調さが目立ったレースとなりました。

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