日曜日は練習禁止。夏休みは対外試合禁止-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その1

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日曜日は練習禁止。夏休みは対外試合禁止-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その1

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日本と同じように、あるいはそれ以上に、米国では高校の課外活動としてのスポーツが盛んです。部活動はスポーツをする貴重な機会を生徒たちに与えてくれます。部活動を通して、かけがえのない一生の友人を作った人も多いでしょう。

その一方で、「ブラック部活」という言葉に象徴されるように、長時間の練習や顧問教員の超過労働など、様々な弊害も生じていることが指摘されています。

私は、2017年からカリフォルニア州オレンジ郡にある私立高校でクロスカントリー走部の監督を務めています。さらに2020年からは、同じくオレンジ郡にある別の公立高校で野球部のコーチにもなりました。米国での部活動スポーツが実際にどのように行われているのか、現場から見た様子をご紹介します。

活動は試合が中心。練習は短時間。

米国のスポーツはシーズン制です。なにしろ広い国ですので、州や地域によって多少の違いはありますが、高校や大学の学生野球は2月から5月にかけてレギュラーシーズンでリーグ戦を行い、6月にプレイオフのトーナメントを行うのが一般的です。

この原稿はまさに野球シーズン真っ盛りの3月に書いているのですが、今週の我がラグナヒルズ高校野球部のスケジュールは以下の通りでした。

月曜: 練習(午後2時半~4時半)
火曜: リーグ戦(ホーム。午後3時試合開始、午後5時終了)
水曜: 練習(午後2時半~4時半)
木曜: 練習(午後2時半~4時半)
金曜: リーグ戦(遠征。午後3時試合開始、午後5時終了)
土曜: 休み
日曜: 休み

2時間の練習を週3回、試合が週2回。週によって試合数に多少の増減はありますが、レギュラーシーズン期間中はずっとこうしたスケジュールが続きます。

日本の高校野球に比べると、随分と緩い練習のように見えるでしょう。しかし、念のために書いておきますと、我々はけっして野球の強豪校ではありませんが、特に弱いわけでもありません。

過去には、何回か地区リーグでの優勝歴もありますし、卒業生には4人のメジャーリーガーを輩出しています。もっとも有名なのは2019年MLBオールスター戦でMVPを受賞したクリーブランド・インディアンズのシェーン・ビーバー投手です。

米国の高校野球は7イニング制なので、大抵の試合は2時間以内に終わります。試合の1時間前からウォームアップをしますので、それを合わせると、試合がある日は3時間ぐらいグラウンドにいることになります。遠征の場合は移動に時間がかかることもあります。

土曜日に試合があることも、あるいは練習をすることもありますが、その場合でも平日にかかる時間と大差ありません。一度だけ、ダブルヘッダーが組まれたことがありました。前の試合が雨で中止になったためです。その日だけは試合間の休憩も含めると、朝から夕方まで8時間ぐらいはグラウンドにいました。

日曜日には練習も試合もありません。完全な休息日になります。なぜなら、カリフォルニア州の高校スポーツを統括する組織(CIF – California Interscholastic Federation)が野球に限らず、日曜日にはすべてのスポーツの活動を禁止しているからです。

やや脱線になりますが、米国の草野球はよく”Sunday Baseball”という言葉で呼ばれます。多くの高校が日曜日に空いた野球場を有料で外部に貸し出すので、草野球チームがよくそれを利用するからです。そのせいで私も多くの高校の野球場で草野球をやりました。

高校生の健康と勉学に考慮したルール。抜け道もあり

前述したCIFの規則では、すべての高校スポーツで1日あたりの練習時間は4時間以下、週あたりの練習時間は合計で18時間以下にすることが定められています。これに違反した学校は州の公式試合に出場できなくなります。公立高校でも私立高校でも変わりはありません。

野球やアメフトのように、参加人数が多く、待ち時間も長いチーム球技は練習や試合にかかる時間も長くなります。そのために4時間というかなり長い時間が設定されていますが、陸上競技や水泳などの個人競技では、1日の練習時間が2時間を越えることはめったにありません。

これも州や地域によって多少の違いはありますが、一般的に米国の高校は8月後半か9月初めには学年が始まり、遅くても6月末には終了します。つまり、夏休みが2~3か月もあるわけなのですが、どのスポーツにおいても夏休み期間中は公式の大会がまったくありません。

CIFがこのように部活動の時間を制限するのは、生徒たちの健康を守り、またスポーツ以外の勉強をする時間を確保するためでしょう。単純にスポーツの練習効果だけを考えても、長時間の練習は集中力を低下させ、故障のリスクを増やし、燃え尽き症候群を誘発します。

こうして並べると米国の部活動は良いことばかりのようなのですが、世の中のいかなるルールの例にもれず、CIFルールにも抜け道は存在します。CIFは学校組織のみを対象とするため、民間のスポーツクラブなどはその規制を受けません。

野球の例で言えば、高校の野球部と民間のクラブチームの両方に所属する選手がいます。せっかく夕方までに学校部活動としての野球が終わっても、そのままナイター設備がある球場でクラブチームの練習や試合に出るのです。

そのような選手は結果として1年中野球漬けになってしまいます。米国の高校野球では投手の投球数に厳しい制限があるのですが、それも無意味になってしまいます。実際に複数のリーグで投げたために肘や肩を壊してしまう野球少年の例が後を絶ちません。 

そうした弊害があることがわかっていても、私たち部活指導者は生徒や保護者に注意を促すことができるだけで、学校外での活動を禁止する権限はありません。

あるスポーツに熱心になればなるほど、学校の部活動だけでは飽き足らなくなるのは仕方がない一面もあるのですが、それだけではないようにも思います。特に保護者が子供のスポーツに熱心になる背景には、米国では大学の学費が高騰しているため、スポーツ奨学金を求めているケースが多々あります。

試合を活動の中心におき、練習時間を短くする。そうしてスポーツを無理なく楽しむ仕組みがあっても、さらに上のレベルを目指したい選手は自己責任でやるしかないということのようです。


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