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米国での1月29日（日本時間30日）にアメリカンフットボール（以下、アメフト）の全米プロリーグ（National Football League, 以下NFL）年間No.1を決めるスーパーボウルの出場チームが決定しました。

AFCカンファレンスを制したカンザスシティ・チーフス、NFCカンファレンスを制したフィラデルフィア・イーグルス。この両チームが第57回を数えるスーパーボウルで対戦します。

スーパーボウルはNFLだけではなく、全米最大のスポーツイベントです。
例年、テレビ中継の視聴者は人口の約3分の１にあたる1億人前後だと言われています。多くのアメリカ人にとって、「Super Bowl Sunday」と呼ばれる開催日はまるで独立記念日や感謝祭といった国民的祝日のように特別な1日となります。

スーパーボウル57概要

• 開催日：2023年2月13日（日本時間）
• 開始時刻：午前8時30分（日本時間）
• 会場：ステートファーム・スタジアム（アリゾナ州グレンデール）
• 対戦カード：カンザスシティ・チーフス　対　フィラデルフィア・イーグルス

開催時刻は米国東部時間で日曜日の夕方に設定されています。時差の関係で、日本では月曜日の朝にキックオフということになります。
伝統だからと言えばそれまでかもしれませんが、米国の土曜日に変更してくれたら、日本を含む多くの国で日曜日に観戦できるのになあ、とは思います。

スーパーボウルの会場はあらかじめ決まっています。
オリンピックやワールドカップのように、出場チームとは関係ない中立地開催です。
冬場に行う屋外スポーツという制約がありますので、基本的には暖かい地域が開催都市に選ばれます。

今年のアリゾナ州グレンデールとは同州最大都市のフェニックス郊外にあります。
メジャーリーグの春季キャンプ及びオープン戦も行われる、冬場でも暖かい気候の土地です。

ちなみに2024年はネバダ州ラスベガス、2025年はルイジアナ州ニューオーリンズがスーパーボウル開催都市に決まっています。

スーパーボウルの人気を示す数字

“Super Bowl 2015” by JeepersMedia is licensed under CC BY 2.0.
スーパーボウルが近づくと、スーパーマーケットにビールや食べ物の特売コーナーができる

前述しましたように、スーパーボウルのテレビ中継は全米で約1億人が視聴すると言われています。視聴率で約40～45％だということです。

自然と、テレビコマーシャルの広告コストも非常に高額になり、30秒スポットで500万ドル（約6億5000万円）を超えることも珍しくないそうです。

元々アメフトは試合中に休みの時間が多いので、コマーシャルを入れやすいスポーツなのですが、NFLはさらに前半・後半のそれぞれ残り２分になると自動的に時計を止めます（Two Minutes Warning）。競技とは関係なく、単に試合が盛り上がっていて視聴率が高まる時間帯にコマーシャルを入れるためです。

“Lady Gaga sings the National Anthem at Super Bowl 50” by jurvetson is licensed under CC BY 2.0.
スーパーボウル50で米国国歌を歌うレディー・ガガ

生でスーパーボウルを観戦するコストも他のスポーツとは比較になりません。
出場チームが決まる前から観戦チケットの販売が始まっていますが、チケット再販サイト大手『StubHub』には最低価格5432ドル（約70万円）、最高40,500ドル（約526万円）とあります（1月30日現在）。

ごく大雑把に言えば、ス―パーボウル観戦チケットの平均価格は1枚100万円くらいするのです。一体、だれが買うのだろうと思ってしまいます。そんなとんでもない単価なのですが、もっと驚くことにスーパーボウルを開催する施設は収容人数が7万人以上であることが条件になっています。

今年のステートファーム・スタジアムのそれは73,000人ということです。それが満員になるときの経済効果は、と考えると頭がクラクラしてこないでしょうか。

もっとも昔からそうだったわけではなく、1967年に行われた第1回スーパーボウルの観戦チケット最低価格は12ドルだったそうです（*1）。

*¹：SUPER BOWL LII TICKET PRICES: From $12 to $2,500 and counting
https://www.startribune.com/from-12-to-2-500-how-super-bowl-tickets-became-so-expensive/458070763/

半世紀以上たった現在の貨幣価値でも90ドル（約1万1千円）です。少なくとも、その頃はスーパーボウル観戦も庶民にも手が届く価格だったようです。

スーパーボウル57の見どころ

チーフスもイーグルスもレギュラーシーズンをそれぞれのカンファレンスで1位でした。プレーオフを含めた今シーズンの戦績は16勝3敗と、まったくの互角です。

しかし、レギュラーシーズンが始まる前から優勝候補の筆頭に挙げられていたチーフスに対し、イーグルスの前評判はけっして高くはありませんでした。ある意味、イーグルスの躍進は今NFLシーズンのサプライズとも言えるでしょう。

ス―パーボウルの前週末にオールスター戦（プロ・ボウル）が行われますが、両チームから多くの選手が選出されています（チーフス7人、イーグルス8人）。

その豪華メンバーから注目選手を挙げるとすれば、やはり花形ポジションのクォーターバック（QB）でしょう。
パトリック・マホームズ（チーフス）、ジェイレン・ハーツ（イーグルス）は2人とも若く（マホームズ27歳、ハーツ25歳。）、これからのNFLを引っ張っていくと見られている選手です。

チーフスのタイトエンド（TE）、トラビス・ケルシーは同ポジションでは史上最高選手の呼び名も高いベテランです。そしてなんと兄のジェイソン・ケルシーはイーグルスのセンター（C）で、やはりプロ・ボウルに選出されています。兄弟がスーパーボウルで対戦するのはNFL史上初の出来事になるそうです。

コイントスの呪いは解けるか

“Ravens Super Bowl XLVII Victory Celebration 2/5/2013 DSCN5257” by ursusdave is licensed under CC BY-SA 2.0.第47回スーパーボウルで優勝を祝うボルチモア・レイブンズのファン

アメフトの試合は開始直前のコイントスで先攻後攻を決めます。
両チームのキャプテンがフィールド中央に集まり、主審の立ち合いの元、投げられたコインの裏表を賭けます。昨年のス―パーボウルではコインを投げる役をテニス界の伝説女王ビリー・ジーン・キングさんが行いました。

ところが、スーパーボウルではコイントスの勝者は必ずしも有利ではありません。
過去56回でコイントス勝者の戦績は24勝32敗。勝率42.9％とむしろ負け越してさえいます。

しかも直近に目を向けると、2014年の第48回大会でシアトル・シーホークスが43-8の大差でデンバー・ブロンコスを下して以来、コイントス勝者は実際の試合では8連敗中なのです。

さて今年のスーパーボウルの結末は一体どうなるでしょうか。

バナー写真：”Last Punt of Super Bowl 50 #SB50″ by jurvetson is licensed under CC BY 2.0.