上田瑠偉選手、富士登山競走で男泣き!今後はウルトラトレイルに挑戦へ

上田瑠偉選手、富士登山競走で男泣き!今後はウルトラトレイルに挑戦へ
第78回富⼠登⼭競⾛が2025年7⽉25⽇(⾦)に開催されました。
富⼠登⼭競⾛は、⼭梨県の富⼠吉⽥市役所をスタートし、富⼠⼭の頂を⽬指す過酷な⼭岳レースです。⼭頂コース(約21キロ、標⾼差約3,000メートル)と5合⽬コース(約15キロ、標⾼差1480メートル)があり、今年は国内外から集まった3,363⼈のランナーが駆け上がりました。
⼭頂コース男⼦は、ノルケインアンバサダーでプロ⼭岳ランナーの上⽥瑠偉選⼿が初優勝を果たし、⼥⼦は吉住友⾥選⼿が7連覇を達成しました。5合⽬コース男⼦は⼭⽥雄喜選⼿、⼥⼦は⽥中礼美選⼿がトップでした。
当レースのうち、“⽇本⼀過酷”とも称される「⼭頂コース」には男⼥合わせて1,734 ⼈が出場し、768⼈が制限時間となる4時間半以内に完⾛しました。
富⼠登⼭競⾛の過酷さ
スカイランニング協会代表理事の松本⼤さんは富⼠登⼭競⾛の過酷さを次のように話します。
富⼠登⼭競⾛は、全⻑21km・標⾼差3000m を⼀気に駆け上がる⼭岳レースです。垂直⽅向の移動は平地の約10倍の負荷がかかるとされ、標⾼差3,000mは平地換算で30km相当。つまり、実質的な負荷は全⻑21kmと合わせて“約51km分”に及び、フルマラソンの1.2倍に相当する⾮常に過酷なレースです。さらに、標⾼が1000m上がるごとに気温は6度下がり、⼭頂では酸素濃度が平地の約3分の2に。⾵速1mで体感温度も1度下がるため、気象条件も厳しいです。
⼭頂コース男⼦優勝 上⽥瑠偉選⼿(31)コメント
まずは、78回も続く歴史ある⼤会で、⽇本のシンボルである富⼠⼭を舞台にした⼤会で優勝できたのがすごく嬉しいです。今⽇の気象条件的には、昨年と⽐べて2-3度低く、7合⽬〜8合⽬は霧掛かっていて⽇差しもなく⾛りやすかったです。昨年、⼗数年破られていない宮原さんの⼤会記録(第64回(2011年)優勝2時間27分41秒)を破るということを宣⾔して挑んだ結果、(昨年は)記録を破るどころか6位という悔しい結果になり、ここ数年で⼀番悔しい結果になりました。

そのため、例年はシーズン前半で海外遠征をするのですが、今年は(海外遠征を)控えて、今年の春先まではロードなど平地を強化して国内のハーフマラソンに出場したりして練習を積みました。今回のレースプランとしては前半の⾺返し(1合⽬付近)までを1分くらい縮めて、5合⽬通過後約2分、去年より縮めて通過したいと思っていました。ですが、今⼤会は⾛り始めて序盤でかなり調⼦が悪く、⾺返しの通過も昨年より遅いタイムだったので、その時点で今年はタイムを狙うのはきついかなと思い、勝負に徹するようプラン変更をしました。
5合⽬通過も2分遅く通過してしまったので、なかなかきつかったです。特に⼀番きつかったポイントは昨年2連覇している近江⻯之介選⼿と前半4合⽬まで競っていたところです。この⼤会の過酷さの⼀つは精神⼒が求められるとこだと思っていて、普通のトレイルランニングと違い、下りが⼀切ないので、もどかしいながらも酸素が薄くなっていく中でも登り続けなければならないというところが、この富⼠登⼭競⾛の過酷さだと思います。

実はゴールの瞬間、⾊んな感情が⼊り交じって、優勝できて嬉しい気持ちやプレッシャーから開放された安堵感で男泣きをしてしまいました。新記録を狙うと公⾔したのに記録更新はできなかったですし、今年はみなさんへ(記録更新への)期待を持たせるようなペースで⾛れなかった悔しさは残ります。スケジュールが合えば、来年も出⾛したいという思いはありますが、僕⾃⾝も⾊んなことにチャレンジしたいと思っていて、今後は100マイルのウルトラトレイルにシフトしていく予定です。今後、アスリートとして結果を出していくことで、メディアに取材していただき⼭岳ランニングを取り上げていってほしい。
今、第三次トレイルランニングブームが来ているので、トレイルランニングの魅⼒を僕からも発信していきたいし、⾃然の中で遊ぶ安全性の啓蒙もしていきたいと思っています。
⼭頂コース⼥⼦優勝 吉住友⾥選⼿(39)コメント
この⼤会だけはすごく特別な思いを持っていて、本当に勝ちたかったので優勝できて嬉しいです。2016年に⼭を⾛り始めて、その年に当⼤会の5合⽬コースに挑戦し、初めて富⼠⼭を⾛り、富⼠⼭が⼤好きになりました。翌年2017年は⼭頂コースにチャレンジして優勝し、今年で7連覇を果たすことができました。

富⼠⼭が⼤好きすぎて6年前に移住して、すごくこの⼟地が⼤好きで、地元の⼈にもよくしていただきました。この⼤会で勝つことでたくさんの⼈に喜んでもらえるので、そういう意味で特別な⼤会です。年に1回、会社の⽅々も沿道に応援しに来てくれたり、海外レースが多い私にとって、唯⼀地元の⽅々に⾃分の⾛りを⾒てもらえる特別な⼤会で、優勝できて嬉しいです。最後は声援に答えられないくらい必死でした。⼭の競技に出会って、これだけ夢中になれるものを⾒つけられて、それを全⼒で取り組めるのはすごく幸せなことだと思うので、これからもこの道を全⼒で突き詰めていきたいと思います。

レースプランとしては、毎年(今⼤会3位の)好⼠理恵⼦選⼿に⾺返しまでは先⾏されているので5合⽬までにトップに⽴てればいいなと思っていました。ですが今年は意外と好⼠選⼿が抑えて⼊ったので、⾺返しもトップで通過しました。そのため、あとは⾃分との戦いで、「7連覇」と⽬標として掲げていた「3時間10分を切りたい」という思いで⾛りました。後ろから追われる恐怖と⽬標タイムとの戦いで最後まで追い込めたので良かったです。段階的に3時間切りを⽬指していきたいと思っているので、来年は3時間5分を切るためにロードの⾛⼒を上げていけるよう頑張ります。
INFORMATION
■上⽥瑠偉選⼿ プロフィール
ノルケインアンバサダー
⻑野県出⾝のプロ⼭岳ランナー。⾼校・⼤学時代に陸上競技に取り組み、⼤学在学中に出場したウルトラマラソンをきっかけにトレイルランニングの世界へ転向しました。以降、スカイランニング世界選⼿権U-23優勝、⽇本⼈初のSkyrunner World Series年間王者(2019年)など、国内外で数々の実績を重ねてきました。また、富⼠⼭の4つの登⼭⼝を⼀筆書きのようにすべて通過しながら4回登頂する「富⼠⼭⼀筆書き」では、⾃⾝が樹⽴した9時間55分41秒のギネス世界記録を保持しています。