スペインの冬を彩る自転車レース クリテリウムとは

スペインの冬を彩る自転車レース クリテリウムとは WATCH

スペインの冬を彩る自転車レース クリテリウムとは

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スペインでも冬の足音が聞こえる11月や12月、自転車ロードレースはシーズンオフに入ります。このころロード選手はマウンテンバイクといった他の競技に参加する一方で、時々「クリテリウム」と呼ばれるタイプのレースに参加します。今回の記事では、スペインでこの冬に開催された、クリテリウムのレースを3つご紹介します。

TOP写真 2023年に初開催となった。女子選手によるクリテリウムレース「ラ・レイナ・デ・アルハンブラ」。Photo by Yukari TSUSHIMA

「クリテリウム」とはどんなレース?

Photo by Yukari TSUSHIMA
 
クリテリウムとは、比較的短い距離の周回コースを何周も走るレースの種類を意味します。ヨーロッパの自転車レースでは、シーズン中に公式レースとしてクリテリウムのレースが開催されることも珍しくなく、自転車選手が自分の実力を見せる場の一つになっています。

しかし、特に冬に開催される自転車のクリテリウムは、レースとしての側面はあまり強くなく、「年末の恒例イベント」として開催されているものが数多くあります。出場する選手もリラックスした表情を見せることも多いので、日頃のレースでは近づくことができないプロの選手とファンが気軽に話すことができます。そのため、冬のクリテリウムを楽しみにしている自転車ファンも少なくありません。

そして、クリテリウムを走るのはプロの選手だけとは限りません。クリテリウムを運営する各オーガナイザーの方針により、マスターズの選手やパラサイクリングの選手、そして子供たちまでもが自転車でコースを走ることもあります。みんなが楽しめる冬の自転車イベントが、スペインのクリテリウムなのです。

そんな冬のクリテリウムは、昔からヨーロッパの各地で開催されていました。しかし、この数十年、スペインでは経済不況などの影響で、こうしたクリテリウムのイベントが長い間減少傾向にありました。しかしこの数年、スペインでもクリテリウムのイベントを復活させる動きが現れているのです。
 

マドリードの目抜き通りがレースの舞台「マドリード・クリテリウム」

マドリードの中心街を走るマドリード・クリテリウム Photo by Yukari TSUSHIMA

2022年からスペインで開催されている「マドリード・クリテリウム」。2022年はパセオ・デ・プラド、2023年にはグラン・ビアというマドリードの目抜き通りを舞台に開催されるイベントです。

このクリテリウムには、トップレベルのスペイン人の男子プロ自転車選手が約50人レースに参加するだけでなく、2022年にはタデイ・ポガチャル、2023年には現役世界チャンピオンのマチュー・ファンデルプールが参加しました。

トップレベルの選手が集まるイベントということもあり、会場には大勢の観客が集まります。また、レース前日にはファンが直接選手に会うことができるサイン会が開催され、今年は1500人以上のファンが長い列をつくりました。

ハンドバイクの選手もマドリードの街を疾走する。 Photo by Yukari TSUSHIMA

2023年には、このマドリード・クリテリウムでパラサイクリングの選手もレースを行い、多くの観客にパラサイクリングをアピールすることになりました。
2022年から開催されるようになったこちらのクリテリウム、来年も11月上旬に開催予定です。

子供たちや元プロ選手も全力疾走 「メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ」

元プロ選手も走るメモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ Photo by Yukari TSUSHIMA

最近まで減少傾向にあったスペインのクリテリウムですが、そうした中で33年前から毎年11月に開催されているクリテリウムが、こちらの「メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ」です。

マドリードの北で開催されるこちらのクリテリウムには、プロの自転車選手だけでなく、かつてのプロ選手やマスターズの選手も、それぞれのカテゴリーでレースをします。また数年前から、子供たちもこのクリテリウムに参加するようになりました。やっと自転車に乗れるようになった子供たちから、12歳くらいで本格的に自転車競技をしている子供まで、年齢別に集まってコースを走ります。ちなみに、子供たちのイベントはレース形式ではなく、各自のペースでゴールを目指すのんびりしたもの。走り終えた子供達にはオーガナイザーから、メダルとお菓子が賞品として手渡されます。

クリテリウムの前半は子供たちが主役。Photo by Yukari TSUSHIMA

また、かつてのプロ選手が集まるレースでは、現役時代のウエアに身を包んだ元プロ選手たちが、真剣勝負でレースに挑みます。ちなみに、このクリテリウムは現役のプロ選手も元プロ選手も、原則的に個人参加。いつものレースで見られるようなチームバス等もなく、参加者各自の自家用車でレース会場までやってきます。

選手とファンをさえぎる柵などもなく、観客も参加選手のすぐ隣から声援を送ります。選手も家族連れでレース会場に来ていることが多く、とてもアットホームなクリテリウムです。
今年から、女子の現役選手によるカテゴリーも新たに設定されたこちらのクリテリウム。いろいろな人が参加し、また見に行くことができるクリテリウムです。

女子選手がグラナダに大集合「ラ・レイナ・デ・アルハンブラ」

グラナダでのクリテリウムは女子選手が主役。Photo by Yukari TSUSHIMA

スペイン南部の都市・グラナダが舞台のクリテリウムである「ラ・レイナ・デアルハンブラ」は、女子選手によるクリテリウムです。グラナダ中心部にある約1㎞の銀杏並木の間を、選手たちが駆け抜けるレースです。

今年初開催となったこのレースには、スペイン内外から約30人の選手が集まりました。日曜日の昼下がり、小春日和の中でレースが開催されます。

Photo by Yukari TSUSHIMA

実はスペイン国内で女子選手だけのクリテリウムレースが開催されるのは、今回が初めて。日頃は多くの人の目に触れにくいこともある女子の自転車レースですが、この日はたくさんの観客が選手たちに声援を送ります。

また、このレースは観客と選手との距離感が非常に近く、ファンがサインや写真撮影をお願いすると、選手たちは気さくに対応してくれます。 女子の自転車レースを目の前で見たい人におすすめです。       

スペインで自転車レースを見るなら、冬のクリテリウムもおすすめ

スペインの自転車レースといえば、8月下旬から9月中旬に開催されるブエルタ・ア・エスパーニャが有名です。この3週間に渡って、スペイン中がレースの舞台となるこのレースは、出場選手と観客の距離が比較的近いことが魅力の一つです。

しかし、毎年シーズンオフに開かれるクリテリウムは、ブエルタ・ア・エスパーニャ以上に観客と選手の距離が近く、気軽に選手とおしゃべりできるような雰囲気があり、自転車ファンにも嬉しいイベントとなっています。

スペインで、自転車レースを見るなら、シーズンオフのクリテリウムを見に行くのもおすすめです。

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