トップアスリートも実践している、骨盤をニュートラルにする方法。
DOトップアスリートも実践している、骨盤をニュートラルにする方法。
メッシ、五郎丸、パッキャオ、浅田真央に近づけるかもしれない!
「彼らは骨盤が生まれつきまっすぐで、足をあげると一歩目が、自然に前にでる。」
かつて世界陸上400Mハードルで、2大会にわたり銅メダルを獲得した為末大さんは海外の選手をこのように評していたといいます。
確かに、黒人アスリート・アーティストを映像などで確認すると、骨盤がまっすぐおきているタイプが多いようです。背筋郡(はいきんぐん)や大臀筋(だいでんきん)、太ももうらのハムストリングス・腸腰筋郡(ちょうようきんぐん)などを使いやすく、それらがパフォーマンスに好影響を与えているように見えます。姿勢も伸びやかで、発声にも有利に働きそうです。
世界陸上のファイナルに残るような選手は、当たり前のように腹筋・背筋が天然のコルセットのように骨盤を引き上げています。
陸上に限らずスポーツでは、静止状態からスタートしたり、ゆっくりしたランニングから急激に前後左右に動いたりもします。
スポーツで刻々と変化する状況のなか、常に変わらない骨盤のニュートラルな位置を自分で知ることが大事なのではないでしょうか。骨盤を中心とした下半身は、上半身の動きを受け止めたり、反対に下半身の動きを上半身に伝えなければなりません。
1992年にPanjabiが関節ニュートラルゾーンという概念を提唱しました。この数ミリといわれる僅かな領域のなかに、自分だけのニュートラルポジションがあるのです。
トップアスリートは自らの骨盤のニュートラルポジションを知っている
今回、様々な競技の中から骨盤の位置の大切さを教えてくれるアスリートの例をいくつかご紹介させていただきます。
・サッカー
アルゼンチン代表メッシ(FCバルセロナ)
メッシの魅力は、ディフェンダーを振り切る事ができる急な加速、そしてトップスピードの状態からまるでゴールにパスをするようにシュートを打つことが出来る骨盤の安定感です。
・ラグビー
日本代表 五郎丸歩 (ヤマハ発動機)
成功率80%を超えるキックを支えるのは、ぶれない骨盤です。ルーティンから助走をとり踏み込んで蹴るという流れのなかで、骨盤のニュートラルなポジションを保っています。
・ボクシング
マニー・パッキャオ(元世界6階級制覇)
パッキャオが、小刻みに上下にステップを踏み出すと次の瞬間、踏み込みの深い左ストレート放たれます。不安定の中にパッキャオのニュートラルがあるのです。
・フィギュア・スケート
浅田真央(バンクーバーオリンピック 銀メダリスト)
代名詞のトリプルアクセルに入る際、スッとあごをひき後方にスケーティングしながら、骨盤の位置を確認しているように見えます。
これらスポーツ動作は、まさにニュートラルな骨盤の位置をしっているから可能だと思われます。
「馬」の文化と「船」の文化
世界で活躍する多くの日本人アスリート、しかしまだまだ世界との差は大きいと言われているようです。日本人と海外の選手の骨盤の違いは、やはりそれぞれのルーツをたどっていくと浮き彫りになる農耕民族と狩猟民族の違いなのでしょうか。
道教研究の第一人者である福永光司(ふくながみつじ)氏(故人)によると、古代から九州、福岡は大陸から入ってくる文化の玄関口であったといいます。北回り(船の文化)、南回り(馬の文化)に分けられるようです。
馬の文化=騎馬民族の文化
船の文化=漁労民族と水田稲作を主とする農耕民族
ただし、ルートも単純に南・北と二分されていたというわけではなく、馬の文化=騎馬、船=農耕・漁労と単一的にとらえるのは誤りで、重層的に混合しているとのことです。(ときに東南中国から朝鮮半島を通って九州北部へのように)
ただ大きく2つに区分けすると、それぞれの特徴が明確になってくるということです。
そして旧制中学時代、柔道部のキャプテンとして全国大会にも出場した福永氏によると、九州大会でぶつかる選手は、下半身が発達しているタイプと上半身が発達しているタイプに九州内の出身地で2極化していたようです。
上半身が強い…寝技が得意=船にのって艪をこいだり、水田で田植え。
下半身が強い…内股などの足技が得意=馬に乗って馬の身体をギュッと締め付ける動作が得意。
と相手の体格をみて、対策を立てるのが福永氏の必勝法だったようです。
人類が直立2足歩行をはじめて以降の、縄文人が誕生する前の古代人の時代も、移動を繰り返しながら狩猟や魚を採集して暮らしていたようです。その後の縄文時代を経て、大陸から多くの移動があったといわれるのが弥生時代です。骨盤の角度は、環境や生活習慣での筋肉のつきかたにより形成されてきたのでしょうか。そのあたりは、生物学者の先生方にお任せすることにしましょう。
私の整体院に訪れるみなさんの骨盤を比べると、おきている(まっすぐ)タイプ、寝ているタイプ、男性女性ともに両タイプとも施術にお越しいただいております。
現代の人々の「生まれつきの骨盤」というものを感じずにはいられません。その比率はおおむね、おきているタイプ3に寝ているタイプが7といったところでしょうか。
自分の骨格に逆らう姿勢をしていると、筋肉のつきかたのバランスがわるくなります。肩こり・腰痛などの慢性痛もひきおこします。「骨盤を立てたほうがいい」はもちろん有効ですが、整体でいう「そり過ぎ」という状況を生み出しかねません。
ヒールを常に履く習慣のあるかた、姿勢をよくしようとして胸を張りすぎているかた、肩に力が入り2重あごになっているかもしれません。
一般的に男性よりもフレキシブルな関節をもつ女性は特にそり過ぎに要注意です。寝ている骨盤のひとが無理に海外のモデルのように、背骨を反り骨盤を起こし過ぎるとかえって身体のバランスが崩れます。筋肉が太くなりすぎたり、むくみがでやすくなります。
反対に、ナチュラルに骨盤がまっすぐなひとも同様です。お仕事のパソコン、スマホに集中してあごがつきでてきたり、歩くとき猫背になっていませんか。今すぐにでも骨盤を立てましょう。
上記は2例とも、体の力を逃してしまい、疲れやすい体になってしまう恐れがあるのです。
まずは自らの骨盤と向き合ってみる。
為末さん(前記)のおっしゃるように、寝ている骨盤が多くかつ生活習慣で猫背になりがちな我々はやはり「骨盤をまっすぐ立てる」=ニュートラルな位置に骨盤を合わせるのが共通のキーワードになりそうです。
それにはまず、みずからの骨盤の存在と向き合ってみるのはどうでしょうか。
古今東西、さまざまな運動理論や身体操作法がございますが、それらをうまくつかいこなすために、簡単な骨盤ストレッチをご紹介致します。
OLさんにやっていただきました。
1.まずは、骨盤を寝かせます。
・このとき可能であれば、両足の親指をつまむようにします。
・肩甲骨は身体の前方に移動させます。
2.つぎに、骨盤をたてます。
・肩甲骨は背中がわに、ひきよせます。
1.がやりやすければ、骨盤が寝ているタイプ、2.がやりやすければ、骨盤がまっすぐ(おきている)タイプ。
得意な方向は磨き、不得意は補う。あとは、日常生活の姿勢やスポーツの動作と摺り合わせてみてはどうでしょうか。
柔軟性に自信がないひとはベンチのようなものに腰かけて、同じ高さにイスなどを置き
上記の骨盤と肩甲骨の動きを行います。
・さらに詳しく知りたいかた、女性プロダンサーの動画もあります。
INFORMATION
■動画のモデル、花火さんのプロフィール
体操競技で国体2年連続優勝、読売巨人軍のマスコットチアガールなどの経歴あり。
現在はプロダンサーとして数々の現場をこなしながら、世界平和を目指したパフォーマンスを各地で行っています!
ブログ:http://profile.ameba.jp/hanavi-felice/
■参考文献
・「ペルビック・アプローチ」 Diane Lee 医道の日本社
・「わが引揚港からニライカナイへ」五木寛之 ちくま文庫