マイナーリーグ2年目に向けて-和田隆審判員の挑戦-
SUPPORTマイナーリーグ2年目に向けて-和田隆審判員の挑戦-
四国アイランドリーグplusを経てマイナーリーグの審判員としてデビューした和田隆さんを渡米前の昨年6月に紹介しました。1年目となるシーズンを無事終えて一回り大きくなって帰国した和田さんに再び話を聞きました。
前回記事>>マイナー・リーグに新たな挑戦者誕生!
再編されたマイナーリーグ
昨年マイナーリーグの審判員としてデビューした和田さん。和田さんが審判を務めたのはルーキーリーグのフロリダ・コンプレックスリーグです。これまでガルフ・コーストリーグと称していました。フロリダ・コンプレックスリーグに15球団があり、東地区、北地区、南地区の計3地区に分かれて6月半ばから9月中旬にかけて試合を行っています。なお、ルーキーリーグにはもう一つ、アリゾナ・コンプレックスリーグがあります。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大によりマイナーリーグは全て中止になり、2021年シーズンからマイナーリーグは現在の形に再編されました。
メジャーリーグに最も近いトリプルAから次いでダブルA、その下がハイA、ローA、そして最後がルーキーリーグという序列になっています。これまで「メジャーの傘下に7軍まである」といった表現がなされることもありましたが、再編されて現行は「6軍まで」といったところです。
基本的に選手はもちろん審判員もルーキーリーグがスタートラインになるのです。
INFORMATION
マイナーリーグ
https://www.minor-league.jp/
フロリダ・コンプレックスリーグ
https://www.milb.com/florida-complex
アリゾナ・コンプレックスリーグ
https://www.milb.com/arizona-complex
過酷な環境で奮闘
フロリダ・コンプレックスリーグはその名の通りアメリカ合衆国東南部、大西洋とメキシコ湾の間に突き出たフロリダ州で6月中旬から9月半ばにかけて行われているリーグです。
このうち、北地区と南地区はメキシコ湾に面したフロリダ半島の西岸側に北地区が4球団、南地区が6球団、東地区は大西洋に面した東岸に5球団あります。南地区が60試合、北地区と東地区がそれぞれ56試合を行っています。ちなみに、スペイン語を母語とする中南米の選手もそれなりの人数が在籍していたと和田さんはいいます。
日本では梅雨から夏にかけての季節になりますが、アメリカ南部の気候はどうだったのでしょうか。和田さんによると、フロリダは日本並みの暑さであるものの湿度は日本以上に高く日差しもかなり強かったといいます。カラッとした暑さではなく蒸し暑く立っているだけでも汗が流れ出るような夏。しかも試合の多くはデーゲームで行われます。とにかく汗をかき体力も消耗するだけに、普段からトレーニングや意識した食事も必要になってきます。
また、フロリダでルーキーリーグが開催される時季は雨が多い季節でもあります。しかも日本で近年増加しているゲリラ豪雨のように短時間にそれなりの雨量が降ることもあり、試合が中断することもあります。試合が中止になれば、次の同一カードの際にダブルヘッダーで行い、試合が途中でサスペンデッドゲームになれば同様に同一カードの際に先立って行われることになります。
サスペンデッドゲームは日本では近年目にしませんが、試合が止まっている(一時停止)際の記録を審判員もチェックするといいます。ただ、今年は試合に影響があるようなハリケーンはありませんでした。
移動も多いマイナーリーグ
フロリダ・コンプレックスリーグには16人の審判員が所属し、2人1組で試合を担当します。もちろん2人で試合を担当しますので、2試合に一度は球審をこなすことになります。和田さんはタンパ、ジュピター、ポートシャーロットなどの都市を周り、試合を担当していました。
タンパはフロリダ半島の西岸、ポートシャーロットはタンパから直線距離で100km余り南に位置する町(オタワと同じく西岸)。ジュピターはオタワから同じく直線距離で300km弱のフロリダ半島東岸の町でポートシャーロットから直線距離で200km余りのところに位置しています。
球場は町の周辺にあることが多く、試合が終わってから4~5時間くらい自動車で走り移動します。球場といってもルーキーリーグで使用するのはグランドに少し観客席があるような場所で行われます。日本でもイースタンリーグの試合が行われる戸田球場やロッテ浦和球場の雰囲気が近いかもしれません。また、イベントなど興行的なものはなく、ルーキーリーグは選手や審判員を育てるといった点が重視されているようです。
気分転換も重要
選手のプレーひとつとっても日米で差があり、最後まできちんと見届けジャッジしなければならないと和田さんは話してくれました。ルーキーリーグの終わる9月中旬まで週に1日程度は休めたと和田さんはいいますが、暑さとの戦いもあり、ハードなシーズンだったと思われます。厳しさに耐えられずシーズン途中で辞めていった同僚こそいなかったといいますが。
それなりの移動距離もあり試合をこなしていきました。食事は外食もしくはスーパーで食材を購入しホテルで料理し食べることになるものの、「しっかりと食べないと体がもたない」と食生活の大切さを語ります。さらに和田さんは試合を日々こなしながらトレーニングもしていました。筆者が前回に和田さんに会ったのは2021年5月。この時よりも体格がより大きく見えたのは気のせいではなかったようです。
「ハードな毎日」を過ごす上で気分転換は欠かせません。どのように気分転換をしているのか筆者が尋ねたところ、パートナーと食事やショッピングに出かけたり、また海を見に行ったりしていたと教えてくれました。フロリダの美しい海を眺めると気分的にも癒されるに違いありません。
今シーズンに向けて
北半球がオフシーズンの季節、オーストラリアのリーグへ行く選手も多く、審判員にとっても同じです。しかし、オーストラリアのリーグは新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、今季開催されないことになりました。
また、今季はローAクラスに昇格できるのか否かまだ分かっていません(取材時点)が、しかし、今後に向けてトレーニングなどを積極的に行っていくという和田さん。具体的には「2021年以上にエネルギッシュで技術的、精神的に上を目指したいし、語学面でのコミュニケーション能力も向上させたい」と今年の抱負を語ってくれました。メジャーリーグを目指す一歩ずつ前進していく和田さんの今後に期待したいですね。