マイナー・リーグに新たな挑戦者誕生!

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今季、新たに米マイナー・リーグに挑戦する審判がいます、和田隆さんです。日本人として3人目、間もなく「デビュー」する時がやってきました。今回はアメリカで「プロ」を目指す和田さんを紹介します。

プロの審判を目指すまで

これからアメリカへ渡る和田さんを「苦労人」だと教えてくれたのは四国アイランドリーグplusの神谷佳秀審判部長です。これまで和田さんは四国アイランドリーグplusで審判を務めていましたが、これまで紆余曲折があったからなのです。

和田さんは和歌山県出身、1995年生まれの現在25歳。子供の頃から野球をプレーし、投手として試合に出ていました。大学時代右投げ右打ちの投手として活躍。2017年と2019年それぞれ秋季リーグで優勝し、レベルが向上してきている大学です。ここで和田さんは2014年からの4年間で16試合に登板。3勝4敗で完投が2つあります。この間にⅡ部リーグ時代を経験しましたが、防御率は通算で3.56という成績を残しています。

近年、社会人野球のチーム数が減少傾向にあるものの、四国アイランドリーグplusをはじめとして各地に独立リーグが発足し、卒業後もプレーする道は広がりつつあります。

大学卒業後も選手として現役を続けるつもりはなかったのか筆者は疑問に思いましたが、和田さんは子供の頃から野球の審判に興味を持っており、「将来はプロの審判になりたい」という夢を持っていたといいます。ちなみに、和田さんの大学時代同期のチームメイトにルートインBCリーグのオセアン滋賀ブラックスに所属する岡野乾造投手がいます。

日本で「プロ」を目指して

和田さんが「苦労人」である理由は、すんなりと「マイナー・デビュー」を掴み取ったのではないところです。

当然のことながら「プロの審判」としてNPBを目指したのはいうまでもありません。選手としても「プロ」を目指すのなら「NPB」が最も身近な存在。一般的だといえば語弊がありますが、審判としても目指すのは当然ともいえるでしょう。

現在は毎年12月にNPBアンパイア・スクールが開催されており(2020年はコロナ禍により中止)、2019年で7回目を迎えています。

ここでNPBの審判になるための大まかな流れを示したいと思います。NPBの審判になるためのスタート地点が、このNPBアンパイア・スクールです。毎年12月中旬に7日間の予定で昼間は実技、夜間は座学の講習がみっちりと行われます。NPBの審判を目指す人は勿論、そうでない人も含め70名近くの定員は埋まります。

この中から、NPBの研修審判として採用されるのが毎年4名程度。すぐに本採用になるわけではなく、ましてやNPBの試合に出場できるわけではありません。研修審判の間は四国アイランドリーグplusとルートインBCリーグに派遣され、シーズン終了後には、みやざきフェニックス・リーグにも出場します。

そして研修審判の中から、1~2名程度が育成審判として採用され、同じくイースタンリーグ、ウエスタンリーグでの試合に出場しキャリアを積んでいきます。その後、ようやく本採用されるという道筋が用意されています。本採用後は「一軍」の試合に出場することができます。しかし、一軍の試合に出場できるまでには、かなりの年数が必要になります。このように非常に狭き門になっています。

和田さんはなんと大学生の頃に、NPBアンパイア・スクールを2年続けて受講しているのです。しかし研修審判にはなることができず、大学卒業後は四国アイランドリーグplusの審判として1年間勉強し、2018年のNPBアンパイア・スクールで研修審判として採用、四国アイランドリーグplusに派遣されました。ただ、その後は育成審判になることができず、NPBへの夢が絶たれたのです。

アメリカで「プロ」を勝ち取る

次のステップに進むことができず挫折を味わっても諦めなかった点が和田さんの素晴らしいところ。和田さんいわく「神谷審判部長の存在が大きかった」と言いますが、同リーグ出身で既にマイナー・リーグで審判を務めている松田貴士さん、小石澤進さんの存在も影響したようです。

そんな和田さんは2020年1~2月にアメリカのマイナーリーグアカデミー審判学校(一次試験)、マイナー・リーグ・アドバンストコース(二次試験)に合格。そして、マイナー・リーグに採用が決まりました。

■マイナーリーグアカデミー審判学校
https://www.milbumpireacademy.com/
■マイナーリーグ・アドバンストコース
https://www.milbumpireacademy.com/qualifying-minor-league-umpire-jobs.aspx

マイナーリーグアカデミー審判学校への入学者は110名だったものの、マイナー・リーグの審判として契約できるのは他の審判学校出身者も含め20名程度。和田さんの話では、アメリカの審判学校はNPBアンパイア・スクールとは異なった厳しさもあったと言います。

マイナー・リーグで契約できるのも非常に狭き門だという点に変わりはありません。日本でプロになるという夢は叶わなかったものの、アメリカでメジャー・リーグを目指すためのスタートラインに立つことができた和田さん。しかし、2020年シーズンのマイナー・リーグはコロナ禍で開催されませんでした。

詳細は割愛しますが、今季からマイナー・リーグは再編されました。AAAは5月6日に開幕しています。そして、和田さんはこれから開幕するルーキーリーグに向けてアメリカに向かいます。ルーキーリーグはアリゾナ・リーグとガルフ・コースト・リーグの2つがありますが、まだどちらになるかは分かっていません(取材時点)。

■アリゾナ・リーグ
https://www.milb.com/arizona
■ガルフ・コースト・リーグ
https://www.milb.com/gulf-coast

和田さんは「コロナ禍の不安はあるものの頑張ってきたい」とメジャー・リーグを目指して新たな一歩を踏み出します。

アメリカ 和田隆 審判 野球