メジャーのキャンプ地で行われるオヤジたちの夢の祭典。草野球ワールドシリーズその2 出場体験記編。
WATCHメジャーのキャンプ地で行われるオヤジたちの夢の祭典。草野球ワールドシリーズその2 出場体験記編。
毎年10月になると、メジャーリーグでも日本のプロ野球でもポストシーズンの季節です。それと同じ時期に行われて、全く世間から注目されないもう一つのワールドシリーズ、北米中から何千人もの草野球オヤジたちが、アリゾナ州フェニックス近辺に集まる草野球ワールドシリーズのことは、昨年ご紹介したので分かるかと思います。
今年で32回目となるこの大会、正式名称「2019 MSBL/MABL World Series」に、今回は初めて選手の1人として参加してきました。
関連記事>>2018年草野球ワールドシリーズ観戦記:https://sportie.com/2018/11/msbl
カナダから参加したチームに助っ人召集されたわけ
昨年この大会を観戦し、大変感銘を受けた私は、その日のうちに選手登録をしました。主催団体のホームページにそのようなデータベース機能があって、特定のチームに所属していない選手が参加するチームを探すことが出来るのです。
これはとても便利な仕組みで、個人にもチームにもメリットがあります。私のように伝手がなくてもチームを探すことが出来ますし、チームは選手が足りなくなったら助っ人をいつでも補充することが出来るからです。
今回私を呼んでくれたのは、はるばるカナダ・オンタリオ州トロント郊外からやって来たレッド・ディアー・レジェンズ。「赤い鹿の伝説」なのだそうです。よく分からないチーム名ですが、総勢15人の選手たちのうち、私以外は全員カナダ人です。
トロントからフェニックスまではカナダと米国の国境を越え、直行便でも4時間以上かかります。そんな遠くから野球をするためにやって来るのか、物好きだなあと思いましたが、よく考えてみたら、カリフォルニアから自分の車を運転してきた私は8時間近くかかっていたのでした。
レジェンズの面々。前列左端が筆者。
カナダ人の集団に接したのは、初めてでしたが、比較的大人しく穏やかな人が多いという印象でした。試合中のヤジも他の米国人チームに比べると、ボリュームの目盛りが1つか2つ低く、ダグアウト内での会話でもあまり放送禁止用語が出てこない、という程度の話ですが。
前回ラスベガスの大会で接したのが、なにしろテキサスからのチームだったので、余計にそう感じたのかもしれません。>>ラスベガス大会での様子:https://sportie.com/2019/03/msbl2
ちなみに、今回はラグビーワールドカップ日本大会が行われている最中でもありました。台風の影響で1次リーグ最終戦が中止になり、敗退が決まったカナダチームが、釜石市でボランティア活動をしたニュースを話題に出してみましたが、殆どの人は、ラグビーワールドカップがやっていることさえ知りませんでした。この辺りは、米国人の野球好きたちとあまり変わりはないようです。
草野球オヤジたちのレベルは
我がレジェンズが所属するのは、50歳以上の部。この部門だけでも6~7ごとのチームで構成されるリーグが6つに分かれ、合計40チームもあります。1チーム15人としても600人です。
これは、あくまで50歳以上の部だけの数字で、他にも25歳以上の部から始まって73歳以上の部まで、全部で12個の部門があります。前述した「何千人もの草野球オヤジ」が決して誇張した表現ではないことが分かってもらえるかと思います。
肝心の野球のレベルはと言えば、これはそれほど高いわけではありません。もちろん殆どの選手が多かれ少なかれ野球の経験者ですし、中には有名な元プロ選手も混じっています。
しかしながら、特に我々50歳以上の部となりますと、元プロ選手であっても、引退してから10年、20年が経っています。そうなりますと、ボールを投げたり打ったりする技術はともかく、体力が残っているかどうかは、本人の心がけ次第です。
流石に外野手の守備位置はフェンスからかなり前になる。ホームランは1本も出なかった。
私はクロスフィットのトレーナーをして、その他にマラソンを走ったりもするので、体力だけは自信がありますが、野球となると少年野球ぐらいしか経験がありません。
大人になって草野球を始めたのもほんの数年前のことです。それでも何とかついていけるレベルだ、とだけ言っておきましょう。本当はヒットを量産し、敵味方から「イチロー!」と呼ばれて良い気分になっていたのですけど。
大谷翔平やマイク・トラウトと同じ打席に
この大会の最大の魅力は、何といってもメジャーリーグの春季キャンプで使われる球場で試合ができることです。我がレジェンズのチーム練習と第1試合は、ロサンゼルス・エンゼルスの施設で行われました。
あの日本の至宝である大谷翔平選手やメジャーリーグ史上最高選手とも言われるマイク・トラウト選手と同じ打席に立てるのです。大谷は左打席、トラウトは右打席でしょ、との突っ込みがあるかもしれませんが、私はスイッチ・ヒッターなのです。相手チームにサウスポーのピッチャーがいたおかげで、両方の打席に立つ機会がありました。
エンゼルスの施設正面。大谷とトラウトはやはりチームの顔だ
他にもシカゴ・カブスの施設、クリーブランド・インディアンズとシンシナティ・レッズの共同施設で試合がありました。こうしたメジャーリーグの施設は、どこもメイン・スタジアムに隣接し、10個ぐらいの練習用フィールドが広大な敷地内に集まっています。
各年代部門は、それぞれが1週間で6~8試合を行います。殆どの試合は、練習用フィールドで行われますが、必ず各チーム1試合以上は、メイン・スタジアムで試合ができるようにスケジュールが組まれています。つまり、それが売りなのです。
それに練習用フィールドと言っても、さすがにメジャーリーグの施設だけあって、どこも両翼100メートル以上あるフルサイズの野球場で、内外野の芝生は完璧に整備されています。
きちんとしたブルペンやバッティングケージもついていて、自由に使うことが出来ます。1試合が終わる度に、数人の整備員がグラウンドに水を撒いて、ラインを引き直してくれるのには感心しました。
70歳以上でも硬式野球ができる
我々と同じ週に試合をしていたのは、オヤジとしてはまだ初々しい35歳以上の部と我々よりさらに大先輩にあたる70歳以上の部でした。彼らとフィールドが隣同士になることもありましたが、70歳以上の人たちが正式サイズのフィールドで硬式野球をしている姿には大変元気づけられるものがありました。
70歳を過ぎてもこの力強いスイング。
「俺たちも頑張ったら、あと20年は野球が出来るな」とチームメイトと話をしたものです。私は今回が初めてでしたが、もう何年も続けてこの大会に参加している人が多いのです。
丸々1週間、仕事を休んで、家族を放り出して、野球をするためだけに集まってくるオヤジたち。私もその仲間に入れたことを嬉しく思います。