エンゼル・スタジアムで開催された草野球のチャリティーマッチ
DOエンゼル・スタジアムで開催された草野球のチャリティーマッチ
10月4~6日にロサンゼルス・エンゼルスの本拠地スタジアムで草野球のチャリティーマッチ大会が開催され、私も参加してきました。メジャーリーグ球場でプレイするのは、もちろん生まれて初めての経験です。
大会名は今年で16回目を数える”Bud Kuhl Wood Bat Invitational”。 パーキンソン病治療のチャリティーを目的に、エンゼルスの球団社長が亡くなった父親の名を冠して開催しているオフシーズンの恒例イベントです。
イベント公式ウェブサイト:https://budkuhl.com/
イベントに参加するのは南カリフォルニア一帯から集まった草野球人たち、観客はその家族友人たち、運営スタッフは全員がボランティア、収益金はすべて地元の医療機関などに寄付されます。
むろんその目的が素晴らしいことは言うまでもないのですが、さらに参加者を思い切り楽しませてやろうとする運営側の姿勢にとても感心しましたので、ここで紹介したいと思います。
気分はメジャーリーガー。草野球人の心をくすぐる粋な演出。
エンゼル・スタジアム正面入口。昨年まで在籍していた大谷翔平選手の写真はもちろん外されている。
今年は10チームが参加し、それぞれが1試合ずつ戦うワンマッチ形式で、合計5試合が週末の2日間に行われました。イベント名にあるように、木製バットと硬式ボールを使用する公式ルールの野球です。
参加者たちはもちろん「メジャーリーグ球場で野球ができる!」という期待に胸を膨らませてエンゼル・スタジアムへやってきます。まるで遠足を前にした子どものように、前日は興奮してよく眠れなかったよという人も多いでしょう。とは他人事のようですが、実に私もそのひとりです。
試合前のフリーバッティング。
まず、第1試合が午前11時開始だというのに、参加者たちには朝の7時頃からフィールドが開放されました。試合前のフリーバッティングを行うためです。
練習は希望者のみの自由参加だと聞かされていました。と言われても、メジャーリーグ球場の打席ボックスに立ってバットを振るチャンスに興奮しない草野球人はあまりいません。外野フィールドでボール拾いをするだけでも胸が躍ります。ほとんど参加者全員が来ていたのではないでしょうか。
俺のパワーでメジャーリーグ球場のフェンスを越えてみせるぜ、と鼻息を荒くしたおっさんたちが入れ代わり立ち代わりケージに入ります。100人以上は参加していたと思いますので、さすがに人が投げるわけにはいかず、ピッチングマシンが使われていました。
ホームベース付近からの景色。外野スタンドははるか彼方に見える。
私も10スイングを2ラウンド、力いっぱいバットを振り回しましたが、もちろん打球はフェンスを越えるどころか、その数10メートルも手前で拾われてしまうだけでした。
私自身の名誉のために書き添えておきますと、フェンス越えの打球はその日ひとつもなかったと思います。身長190㎝は優に超えるような、体格だけはメジャーリーガー級のおっさんが何人もいたにもかかわらずです。木のバットで野球のボールを100m以上飛ばすということは普通の人にはそれほどの難事なのです。
大谷翔平選手がまだエンゼルスに在籍していたとき、ライト側外野スタンドの中段付近で観戦していた私のはるか頭上をホームランボールが飛び越えていったことがありました。超人だな、とあらためて思います。
ビジター用ロッカールーム。
参加者たちにはロッカールームも室内練習場も開放されました。ゆったりとしたスペースはさすがメジャーリーグ仕様と目を見張るものがあります。私が普段出入りしているジムのロッカールームとはずいぶん違います。ここでメジャーリーガーたちが着替えたり、食事をとったりしているはずです。
残念ながら、私のチームはビジター側でしたので、昨年までは大谷選手も使っていた(かもしれない)ソファーにふんぞり返ることはできませんでした。でもよく考えてみると、ロサンゼルス・ドジャースがオープン戦やリーグ交流戦でエンゼル・スタジアムに遠征してくるときはビジター側に来るはずですよね。
室内練習場。
シャワールームやトイレまで、あちこちを興奮して見て回りました。とくに必要はないけど、室内練習場で打撃フォームの調整、というより主に記念撮影などをしていますと、いよいよ試合開始の時刻が近づいてきました。ロッカールームからダグアウトまでは思ったより長い通路を歩くのだな、とそんなことにさえも感心します。
試合開始は午後5時30分。
いざ試合が始まると、やることは普段と同じ草野球です。しかし、何といっても、そこはメジャーリーグ球場なのです。私が立った左打席ボックスは大谷選手が立った場所でもあるのです。同じ景色を見たのです。たとえその日のスタンドには参加者の家族が数100人くらいしか入っていなかったにしても、です。
それだけでも嬉しいのに、イベント運営スタッフたちはおよそ考えつく限りの努力をして、メジャーリーグ公式戦のような雰囲気を作ってくれました。私たち草野球人をとことんまで盛り上げてくれたのです。
ナイター照明が灯り、選手紹介のアナウンスはもちろんのこと、球場のビッグスクリーンによるライブ中継があり、際どいプレイにはスローモーション再生までしてくれるという凝りようです。
1塁側(ビジター)ダグアウトからの景色。
けっして自慢ではありませんが(嘘です)、私はこの日3塁打を打ちました。打球がライト線を破り、必死の形相でダイヤモンドを走り、3塁ベースにヘッドスライディングをすると、その一部始終がビッグスクリーンで大写しになっていたのです。塁上で両手と片足を上げて体を斜めにする大谷ポーズを取ると、みなが笑ってくれました。子どもの頃から野球は大好きでしたが、紛れもなく生涯最高だと思えた瞬間でした。
試合後はみながニコニコして球場を後にしました。ひとり300ドル(約4万5000円)の参加費が惜しかったと後悔した人はきっといなかったでしょう。
例年こうして数100万円単位の金額が集められ、地元の医療機関などに寄付されます。まさにウィンウィンです。シーズンオフにプロスポーツの施設を有効に活用する方法のひとつとして、他のスポーツ団体や施設も検討してくれないかなと思います。