石畳とベテラン選手がレースをコントロール ―ボルタ・アオ・アレンテージョ―

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石畳とベテラン選手がレースをコントロール ―ボルタ・アオ・アレンテージョ―

スポーティ

3月の最終週、ポルトガルの南部にあるアレンテージョ地方で、自転車レースのボルタ・アオ・アレンテージョが開催されました。今年で43回目の開催となったこのレースは、スプリンターが主役で石畳が舞台の5日間のレースです。2026年のこのレースの様子をレポートします。

TOP写真:今年のボルタ・アオ・アレンテージョの表彰台。写真左から、総合優勝のティアゴ・アントゥネス(ポルトガル、エファぺル・サイクリング)、ポイント賞ジャージのサンティアゴ・メッサ(コロンビア、アニコロール/カンピカレン)、山岳賞ジャージのアレクシス・グエリン(フランス、アニコロール/カンピカレン)、新人賞ジャージのウーゴ・ファブリス(フランス、UEAチームエミレーツ・ジェネレーションZ)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

アレンテージョの石畳がスプリントの舞台に

第5ステージのゴール前、石畳でのスプリント。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ボルタ・アオ・アレンテージョは、そのコースデザインから、スプリンターあるいはスプリンターに近い特徴を持つ選手が主役になることが多いレースです。他のポルトガルやスペインのレースと比べて、厳しい山岳コースが少なく、上りの比較的少ないコースなので、ゴール前で大人数のスプリント勝負となることが多いことが特徴です。

レースのゴール地点は、各町のメインストリートに設定されることほとんどです。アレンテージョ地方にある町の多くは、メインストリートを石畳にしているため、必然的にゴール前のスプリントは石畳で争われることが多くなります。

ポルトガルの石畳は古いものが多く、そこをスプリントするサイクリストには、高いテクニックとスピードが要求されます。また、自転車のメカニックトラブルも起こりやすくなるため、中にはチェーンが外れた自転車を押してゴールする選手の姿も見られることもあります。

第5ステージで自転車の機材トラブルにより、自転車を押してゴールすることになった選手。観客は選手を拍手で迎える。Photo by Yukari TSUSHIMA.

自転車レースのファンは、石畳のレースというとオランダやベルギーといった国のレースを想像します。しかし、場所によっては前述の2か国と同じくらい厳しい石畳のコースがあるのが、ポルトガルのレースなのです。

幅広い世代の選手が出走したレース

UAEチームエミレーツ・ジェネレーションZ。このレースに出走していたマルコス・フレイレ選手は、かつての名スプリンターであるオスカル・フレイレの息子さん。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年のボルタ・アオ・アレンテージョに参加したのは、20チーム。今回このレースに参加したチームは、3つのチームに分類されます。

まず、プロ選手としてのカテゴリーで「コンチネンタルチーム」と呼ばれるチームです。実はポルトガルにあるプロの自転車チームは、すべてこの「コンチネンタルチーム」で、プロチームではありますが、ツール・ド・フランスに出場するようなチーム(ワールドツアー・チーム)と比べるとチーム規模は小さいのですが、経験を積んだベテラン選手も多いカテゴリーです。

そして、プロカテゴリーではない、いわゆる「クラブチーム」と呼ばれるアマチュアのカテゴリーのチームが7チーム出走しました。このカテゴリーの選手は、プロの自転車チームに入ることを目標としている選手がほとんどです。

また、今回のレースでは、「コンチネンタルチーム」に分類されるも、ツール・ド・フランスに出走するようなワールドツアー・チームの直属の下部組織として活動する4チーム(EFエデュケーション・アエべロ、UAEチームエミレーツ・ジェネレーションZ、NSNディべロッピング・チーム、モビスター・チーム・アカデミー)が出走していました。近年、自転車界ではジュニア世代(16-18歳)の選手がアンダー23のチームを経ずに、直接プロのワールドチームと契約するケースが増えており、今回ボルタ・アオ・アレンテージョに出走したこの4チームも、そうした役割を持つチームに相当します。将来が期待される若い選手が集まっており、レース前は彼らの走りに注目が集まっていました。

しかし、レースが始まってみると、レースをコントロールしたのは、多くのポルトガルのコンチネンタルチームでした。選手として経験したレースの数の差が、レース展開と結果に明確に表れた形となりました。

レースの舞台となったアレンテージョ地方とは

アレンテージョ地方のコーラス(カント・アレンテージョ)は、世界無形文化遺産に指定されており、町中で歌声が聞こえることも。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今回のレースの舞台となったアレンテージョ地方は、日本ではあまりなじみのない地方かもしれません。ポルトガルの南の内陸部に位置し、東側にはスペインのエクストレマドゥーラ地方が広がります。3月下旬でも最高気温が20度を超える日もあるほど温暖ですが、夏は非常に暑く冬はとても寒い地方でもあります。

このアレンテージョ地方は、ポルトガルの中でも美味しいものが多い地方として知られており、ワインと生ハムが有名です。また、かつてローマ人が支配していた地域でもあり、巨大なローマ遺跡が街中にあったりします。

写真はアレンテージョ版の「ガスパチョ」。トマトやピーマン、玉ねぎ、パンなどが入った冷たいスープに、バカラオ(塩漬けタラ)の鉄板焼きが付いたもの。スペインの「ガスパチョ」とは異なり、スープではなく魚料理。Photo by Yukari TSUSHIMA.

レンテージョ地方は、バスを使えばリスボンから2時間、スペインの国境沿いの町からも2時間くらいで気軽に行ける地方で、ヨーロッパ各地からの観光客も多い地域です。です。しかし、地元の人に聞くと、日本人でこの地域を訪れる人ははまだ少ないとのこと。素朴なポルトガルを経験したい人には、ぜひお勧めしたい地域なのです。

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