8月のポルトガルが10日間の自転車レースの舞台に―ボルタ・ア・ポルトガル―

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8月のポルトガルが10日間の自転車レースの舞台に―ボルタ・ア・ポルトガル―

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夏休み真っ最中の8月上旬から中旬のポルトガルで、10日間の自転車レースが開催されます。ボルタ・ア・ポルトガルと名付けられたこのレースは、今年で86回の開催を迎えた、長い歴史をもつレースです。

今回の記事では、2025年のボルタ・ア・ポルトガルの様子をレポートします。

TOP写真:昨年に続き、今年もボルタ・ア・ポルトガルを総合優勝したアルテム・ニッチ(Artem NYCH ・アニコロール/ティエン21、写真中央)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

初日の個人タイムトライアルのプロローグは、ポルト近郊のマイアで開催。写真はインタビューに応えてくれたルーベン・フェルナンデス選手(アニコロール/ティエン21)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

高温、そして気温差との闘い

ボルタ・ア・ポルトガルが開催されるのは、毎年8月。真夏の真っ最中に開催されます。もちろん気温も高く、今年のポルトガル内陸部や南部では日によっては最高気温が40度を超えることもありました。その一方で、ポルトガル第2の都市であるポルトを含むポルトガルの北部は、この時期でもあまり大きく気温は上がらず最高気温は30度前後と、非常に過ごしやすい日が続きました。

今年のボルタ・ア・ポルトガルの前半戦の舞台は、ポルトガル北部。そのため、この地域の海岸沿いからスタートし、内陸部の町がゴール地点となるステージでは、スタート地点とゴール地点の気温差が10度近くになることもありました。

レースの後半に急激に気温が上がるため、選手たちの体力はより大きく消耗されることになります。総合優勝のニッチ選手を支えた、チームメイトのルーベン・フェルナンデス選手は「毎日、選手はみんなへとへとでゴールしてます。レースではゴールまで60kmくらいの地点になるとペースが一気に上がって、選手にとって一番きつい時間帯になるのですが、ちょうどその時間帯に一番気温が高くなるので、どうしても体力は消耗してしまいますね。暑さで頭がボーっとしていると、落車なども起こったりしますし、気が抜けません。」と話しました。

特に今年の夏は気温が高い日が多く、加えてポルトガル特有の特徴でもある海岸沿いと内陸部との気温差も大きかったことから、今年のボルタ・ア・ポルトガルはより厳しいレースとなりました。

第4ステージのスタート地点。この後、一旦レースが中断されることに。Photo by Yukari TSUSHIMA.

山火事でレースが一時中断

この時期、高温が続くとヨーロッパ各地で心配されるのが、山火事。ポルトガルも例外ではありません。今年は7月下旬くらいから、ポルトガル内陸部の山岳地帯で山火事が発生し始めました。そして、ボルタ・ア・ポルトガルの第4ステージで、思わぬ形でこの山火事がレースに影響を与えることになりました。

第4ステージは、ポルトガル北東部のブラガンサという町からスタート後に南西に進み、モンディウム・ド・バストという丘の上りゴールとなる、総距離182㎞のステージでした。そして、この日のコースの後半に選手たちが通る町の一つであるビリャ・レアルの近辺で、森林火災が発生していました。

幸い火災自体は選手の走るコース近くまでは来ていなかったため、レース自体は開催可能な状態でした。しかし、規模が広がりつつあった森林火災だったこともあり、レース中に多くの消防車が選手たちのレースのコースを通り、火災現場に急行する必要がありました。

このため、レースオーガナイザーはビリャ・レアルの近辺を選手たちが通る際に、一時的にレースを中断することを決断します。そして、全選手たちが一緒に20kmほど移動した後、再度レースを再開することになりました。

今夏のポルトガルやスペインは山火事が多発し、多くの被害が出ています。そんな山火事がレースに影響を与えた、第4ステージとなりました。

第6ステージのスタート地点となったアゲタという町。選手たちの後ろに有名なカラフルなたくさんの傘が見える。Photo by Novo Matias/@VoltaPortugal

ポルトガルの夏の風景と職人的サイクリストたち

ボルタ・ア・ポルトガルが開催されるのは8月。多くの人にとっては、夏休みの時期です。今回のレースでも、たくさんのポルトガルの夏の観光地がスタート・ゴール地点となりました。

第6ステージのスタート地点となったアゲタは、ポルトから列車で2時間ほどの距離にある山間の小さな町です。とはいえ、この町について、日本でTVなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか。町のメインストリートにたくさんのカラフルな傘が日よけとして連なっている、あの町です。

アゲタのメインストリート。カラフルな傘が日よけになっています。Photo by Yukari TSUSHIMA.

他にも、第3ステージのゴール地点となったのは、ブラガのモンテ・ド・サメイロという丘の上で、そこはノッサ・セニョーラ・ド・サメイロ教会という、ポルトガル国内でも有名な教会がある場所です。

ポルトガルは地理的には小さな国ですが、地方によって特徴が違い、文化的に非常に豊かな国だといえるでしょう。ボルタ・ア・ポルトガルは、そんなポルトガルを国外に発信するという役割も持っています。

このように、美しい景色が舞台となっているボルタ・ア・ポルトガルですが、日本でこのポルトガルの一大レースが話題に上ることは、ほとんどないでしょう。しかし、意外とハードなコースとコンディションが特徴のこの国では、地味でもレースをしっかりと作ることができる職人的なサイクリストが数多く存在しています。そんなサイクリストたちによって、ボルタ・ア・ポルトガルの86回もの歴史が刻まれているのです。

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