【連載】フリーライター遠藤由次郎が行く ブラジルW杯現地観戦チャレンジ サッカーライターに聞く W杯の取材パスを手に入れる方法
SUPPORT【連載】フリーライター遠藤由次郎が行く ブラジルW杯現地観戦チャレンジ サッカーライターに聞く W杯の取材パスを手に入れる方法
ついに始まるブラジルW杯。現地には各国のメディア関係者が押し掛け、その熱気を世界中のサポーターに伝えることだろう。もちろん僕もそのひとり。
しかしワールドカップを取材したいと思っても取材許可証をもらわない限りは、選手にインタビューすることはもちろん、スタジアムの記者ゾーンに入ることすらできない。各国のサポーターに話を聞いたり、現地の臨場感を伝えるといった方法があるにせよ、それではメディアとしてできる仕事も限られてくる。
では、どうしたらこの取材許可証を取れるのか。サッカー専門ライターの元川悦子さんにその秘訣を聞いてみた(写真は‘06年ワールドカップドイツ大会、ゲルゼンキルヒェンにて)。
フリーライターは実績が肝心
「誰に取材パス(AD)を配るのかについては、FIFAが日本サッカー協会(JFA)に一任しています。なので基本的には、JFAにAD取得のための申請書を出して、許可をもらうという流れになりますね」
そう語ってくれたのは、94年のワールドカップアメリカ大会以来、すべての大会で現地取材をしている元川さん。
「アメリカ、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカと過去5大会連続で現地に行っていますが、最初からADを持っていたわけではありません。アメリカ大会はほとんど観に行っただけですし、フランス大会では周辺取材が主だった。日韓の時からようやく記者ゾーンに入る許可をもらえるようになりました」
企業に属さないフリーランスライターが取材許可を得るためには、かなり高いハードルがあるという。
「フリーでいきなり取材パスを取るのはかなり厳しいですよ。取材パスが優先的に配られるのは、通信社や新聞社、それからサッカー専門誌。その後にフリーライターという序列なので、そもそもパスの数が少ない。じゃあその中でどうやって取材パスを取るのかと言えば、実績でしかないですね」
すべての日本代表戦を取材する理由
取材パスを得るための“実績”とは、具体的にはどういうことなのだろうか。
「どれだけ現地に行って取材をしてきたかが重要です。また“過去5大会連続でワールドカップ取材をしている”などももちろん大切ですが、それよりも直近の数年間の方が重要視されると思います。つまり日本代表の試合を欠かさずに取材し続けてきた人に優先的に許可が与えられるというわけです。そのために、私は97年11月のワールドカップアジア予選・韓国戦以来、アウェーの試合も含めて日本代表戦をほとんど取材しています」
ただADを持ってさえいれば、順風満帆にワールドカップ取材ができるかというと、そうでもないと言う。
「現地での取材制限もあります。試合ごとに申請しないといけないのです。記者が殺到する試合では、『当該国→出場国(勝ち上がっている国が優先)→大会未出場国』という順番で許可が与えられることになっています。例えば日本の試合ですと日本の記者は優先的に入れますが、それ以外の試合だと入れない場合も多々あります」
また記者としてスタジアムには入れたとしても、そこからさらにフィルターがかけられるとも言う。
「取材用チケットには、トリビューン(記者席)用のものと、選手にインタビューが可能なミックスゾーンに入れるものの2種類があります。当然、後者を手にする方が難しい。日本の場合は取材者が多いので、日本サッカー協会があらかじめ新聞社など雑誌・フリーランスの枚数を割り振り、フリーランスの希望者に配布するという形を取ることが多いんですが、それも一筋縄ではいかない。試合ギリギリに現地へ入ってたら、すでに配布が終わっていたということにもなりかねないので、早めに行っていないとダメです。日本戦以外だと、いつミックスゾーン用の取材許可証が配られるのかわからない場合も多いので、もっと大変ですよ」
取材できるかどうかが、仕事(お金)が得られるかと同意義のメディア業界にあって、舞台裏では熾烈な取材争いが繰り広げられている。取材許可証を取るには相当な覚悟と努力が必要なようだが、いつかW杯の熱を世界中に伝えたいというサッカーライター志望者は、チャレンジするのはどうだろうか。