家族で参加!? 釣りもする!? アドベンチャーレースの知られざる世界

家族で参加!? 釣りもする!? アドベンチャーレースの知られざる世界 DO

家族で参加!? 釣りもする!? アドベンチャーレースの知られざる世界

スポーティ

「アドベンチャーレース」という名前を初めて聞いて、私てっきり過酷な自然環境の中を走り抜けるレースなんだと思いこんでいました。だって、アドベンチャーといったら冒険のこと。冒険するレースなんだから、岩に登ったりしながら、高い山の上を何百キロも走るんだろう、と。某リ○ビタンDのTVCMが現実になったようなものを妄想していたんです。

フランスでのレース「Raid in France」の1シーン。どれもこういうハードなレースなのかと思いきや。

フランスでのレース「Raid in France」の1シーン。どれもこういうハードなレースなのかと思いきや…。

そんな私の妄想を打ち砕いてくれたのは、2013年7月にアドベンチャーレースの雑誌『AdventureRace』を創刊した久保田亜矢さん。彼女は国内外のアドベンチャーレースを精力的に取材してきたフォトジャーナリストです。

亜矢さんによると、アドベンチャーレースは、トレイルランニング[*1]、マウンテンバイク[*2]、パドルスポーツ(ラフティング[*3]やカヤック[*4]など)、クライミング[*5]といった複数のアウトドアスポーツを組み合わせて、チームで行われる競技。中には夜を徹してレースしたり、10日以上かけるものもあるんだそうです。ところが――。

*1: 舗装道ではなく山野を走るランニング。略してトレランとも呼ばれる。
*2: 山岳地帯や荒野を走るための自転車。
*3: ゴムボートなどで川を下ること。
*4: 両側に水掻きが付いた櫂で漕ぐ細長い小舟。カヌーの一種に含める場合も。
*5: 岩壁などをよじ登ること。

会社の仲間同士や家族で参加できるレースも増えている

「実は最近のアドベンチャーレースは多様化していて、敷居も下がってきて、いろんな方が参加しやすくなっているんです。ホントに普通の会社員とかOLさんが会社の仲間同士で参加したり、中にはお父さん・お母さんと中学生の息子さんといった家族のチームで参加できるレースも出てきています」

そして、以前は1泊以上のレースしかなかったのが、1日で完結するコンパクトなレースも増えてきたのだとか。

親子が協力して同じゴールを目指す。「2013 北アルプス山麓Adventure games2001」にて。

親子が協力して同じゴールを目指す。「2013 北アルプス山麓Adventure games2001」にて。

でも、アドベンチャーレースはただ走るだけじゃなくて、いろんな競技ができないといけないのがたいへんそうです。なかには乗馬(!)が組み込まれていたりもするという話も聞きました。

「乗馬は海外のごく一部のレースだけですよ(笑)。それに私ね、必ずしもすべての競技をクリアできなくてもいいと思ってるんです。できるところまで取りあえず挑戦してみて、その次にゴールを目指せばいいんです」

地図を読んでコースをナビゲーションするのもアドベンチャーレースの醍醐味のひとつだと亜矢さん。選手は渡された地図の上のたとえばA地点からB地点までどうやって行くかを自分たちの判断で選べるのだそうです。

南アフリカのレース「Expedition Africa」で。真剣な面持ちで、コースを検討。

南アフリカのレース「Expedition Africa」で。真剣な面持ちで、コースを検討。

「急斜面を藪漕ぎ[*6]しながら直登してもいいし、ちゃんと登山道を通って行ってもいい。自分たちのチームメイトの体力を考えながらコースを選んでいくんです」

*6: 道ではない藪をかき分けながら進むこと。

旅の要素も魅力。お茶のクイズに答えたり、歌舞伎の演技をするチャレンジも

レースを行う地域のことを知ってもらう「旅」の要素も大切。オーガナイザーはそのために工夫を凝らしているのだそうです。たとえば静岡のレースではお茶を用意して、お茶にまつわるクイズをしたりするというから驚きです。

「他にも、地元の方が作られたお蕎麦を必ず食べていくとか、紙すきをするというのもあります。「エクストリームシリーズの尾瀬檜枝岐(おぜひのえまた)大会」なんて、歌舞伎の舞台があるんですけど、そこで歌舞伎の一節を覚えて、演技してOKをもらえたら移動するっていう(笑)」

釣り堀で釣りをするアスリート。これもアドベンチャーレース。「エクストリームシリーズ2013尾瀬檜枝岐大会」での風景。

釣り堀で釣りをするアスリート。これもアドベンチャーレース。「エクストリームシリーズ2013尾瀬檜枝岐大会」での風景。

もちろん、一方では海外に出ていくトップアスリートを育てるようなハードなレースもあって、幅の広い競技になってきているようです。だんだんアドベンチャーレースのイメージが変わってきましたが、次のお話も素敵です。

全員オリンピック選手のチームでも勝てるとは限らない。助け合いが大事

アドベンチャーレースでは、チームに女性を入れる決まり[*7]になっていることが多いそう。高齢者の男性を入れるなら、男性だけでもOKというレースも海外にはあるのだとか。

「弱い人をいかにサポートしながらゴールできるか?っていうのがすごく大事な要素になってるんです。牽引って言って、体力のある男子がロープで女子を引っ張って走ったりもします。そういう助け合ってる雰囲気も、すごく私の中で新鮮でした。絶対に仲間を見捨てずに、全員でゴールしないといけない。国内外に関わらずそういうルールです」

[*7] 近年は男女別の種目もあるとのこと。

オリンピック選手を集めてチームを作ったとしても、必ず勝てるとは限らないのがアドベンチャーレースなのだとも。

「逆に、みんなの能力を引き出せるような人が中にいるだけで勝てる可能性もあるんです。スポーツ経験がほとんどないのに、彼女が入ることでチームが速くなっていく、っていう不思議な能力を持った女性も知ってます。若いからといって勝てるとも限らない。どちらかというと年齢が上の人のほうが、仲間をどういうふうに持ち上げていったらいいのかをよく理解している。体力勝負だけじゃないんです」

始めるなら「地図読み」がマスト。あとは歩ければいい!?

ここまで読んできて、私には無理!から、私もやってみたい!に変わった人も少なくないのでは? 初めてのレース参加に向けて準備するなら、マストは地図読み、と亜矢さん。チームの中に地図読みができる人がいないと道に迷ってしまうので、地図読みの講習会を受けておくといいそうです。

「あとは、走れれば、いや、歩ければいい(笑)。自転車にも乗れるともっといいかな。で、チームにひとりでもいいので、ファーストエイドを覚えておきたいですね。例えば熱中症になっちゃったり、蜂に刺されちゃったりとか、どのスポーツでも絶対あると思うので」

歩ければいい、と聞くと急にハードルが下がった気がします。でも、考えてみれば、地図を読んだり、歩いたり、自分たちの身体の安全を守ったりというのは、ひとが生き残る上で欠かせない能力とも言えそうです。

「災害に遭ったときにも全然違うし、アドベンチャーレースをやっている人たちって、そういう部分では強いだろうなあって思います」

マウンテンバイクを担いで美しい渓流を渡る。少々きつくても気持ちよさそう。「エクストリームシリーズ2013尾瀬檜枝岐大会」で。

マウンテンバイクを担いで美しい渓流を渡る。少々きつくても気持ちよさそう。「エクストリームシリーズ2013尾瀬檜枝岐大会」で。

自然や地域の文化と触れ合いながら、総合的な人間力を競い合うこのレース。いまはまだ知る人ぞ知るスポーツですが、これからもっともっと人気が出る予感がします。

参加してみたくなった人は

2013年11月9日(土)、10日(日)に徳島県海部郡海陽町で「エクストリームチャレンジin四国の右下2013」というアドベンチャーレースが開催されます。とくにフレンドシップクラスは、トレイルランニングやマウンテンバイクのようなハードな競技が含まれていないし、距離も短いので、参加しやすいのでは?

詳細や申し込みはエクストレモ Webサイトで。1人でも参加できるそうですよ(1人だけど参加したいという人たちを集めて、主催者側で混成チームを作ってくれるのだそうです)。

【photo by】Aya Kubota

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