『ポジティブ・レフェリング』ーゲームがおもしろくなる驚きのサッカー審判術!

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『ポジティブ・レフェリング』ーゲームがおもしろくなる驚きのサッカー審判術!

スポーティ

Jリーグが発足した1993年にこんなことがありました。

先制点となるゴールを決めた浦和レッズの選手たちが、自陣にあるベンチの前で喜びを分かち合いました。すると、すべての選手が自陣に戻れば試合を再開できることを知っていた対戦相手・鹿島アントラーズのジーコが、審判に試合再開を促します。そして、わずか数秒の間に同点ゴールを決めたのです。


この例を見てもわかるように、サッカーにおいてルールは非常に重要な要素の1つです。それはサッカーを見るうえでも、プレーをするうえでもあてはまること。もちろん、審判は正しいルールを把握していないといけません。

正しいルールを知り、もっともっとサッカーを楽しみたいすべての人にオススメしたいのがこの一冊。『ポジティブ・レフェリング』です。

コモンセンスでゲームをもっと面白くする

日本サッカー協会前審判委員長の松崎康弘さんが書いたこの本は、コモンセンス(サッカーの共通理解)と選手とのコミュニケーションをベースに生み出した、1級審判員ならではのレフェリングテクニック50項目をイラスト付きで紹介しています。

『ポジティブ・レフェリング』とは、17条からなる競技規則には書かれていないことを積極的に行うこと。

サッカーの母国、イングランドとJリーグの両方で笛を吹いたことのある松崎さん曰く、積極的なレフェリングで試合をコントロールし、選手と審判がコモンセンスを持つことによって、ファウルが減って激的にゲームが面白くなるというのです。「抗議がしつこい時の対処法」から「具体的な判定の仕方」まで書かれていますが、その一部をここで紹介しましょう。

◯「ペナルティーエリアの内と外でファウルの基準を変えない」(同書122ページ)

ペナルティーエリアでファウルになれば、それはPKを意味します。そのためか、判定基準を緩く(甘く)すると思っている選手も審判も多いようですが、それは間違いです。ファウルはファウル。異議申立てをする選手もいるかもしれませんが、まったく気にすることはありません。基準が公平であれば良いのです。

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◯「『手と腕以外』が『前』に出ていれば、オフサイドポジションにいると見なす」(同書108ページ)

サッカーでは、手と腕を使ってプレーすることは出来ません。そのため、手や腕がオフサイドラインを越えていてもオフサイドの判定にはなりません。逆に言えばそれ以外の部分、例えばつま先や膝など、ボールを操れる部分ならどこが出ていてもオフサイドとなります。基準を明確にすることによって、選手と共通意識を持つことができます。

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◯「キーパーは膝や腿で返されたボールを手で取れるか?」(同書117ページ)

競技規則には、“キーパーはキックされたボールは手で扱えない”と書いてあります。では、膝や腿でのバックパスはキックなのかと言うと、実はNOです。英語の辞典を引くと“KickとはFootで打つこと”と書いてあります。膝や腿はFootではなくLegなので、バックパスを手で取ってもいいと判定できるのです。

◯「判定ミスに気づいたら、間違いを認めて、選手にあやまろう」(同書62ページ)

人間のやることに間違いはつきもの、もちろん審判だって間違えることはあります。そんなときは試合中でも試合後でも、正直に間違いを認めて、選手にあやまってもいいのです。大切なのは審判の威厳ではなく、選手とより良いコミュニケーションを取ること。それこそが審判の信頼と円滑なゲームにつながるのです。

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もちろん、ここで挙げた事例以外にも意外と知られていないルールがたくさん載っているので、もっとサッカーがうまくなりたい人、もっと観戦を楽しみたい人、草サッカーや少年サッカー、部活動などで審判をする人にももってこいと言えます。ぜひとも店頭で手に取ってみてくださいね。

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