トップeスポーツ選手の「頭の中」 eJリーグ最速振り返り対談:鹿島アントラーズ・ナスリ選手×川崎フロンターレ・ジェイ選手

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トップeスポーツ選手の「頭の中」 eJリーグ最速振り返り対談:鹿島アントラーズ・ナスリ選手×川崎フロンターレ・ジェイ選手

スポーティ

1/30(日)に盛況のうち幕を閉じた「FIFA22 グローバルシリーズeJリーグpowered by plala」。世界で人気のサッカーゲーム『FIFA 22』を使用したJリーグ公式eスポーツ大会も5年目を迎え、オフシーズンを過ごすJリーグサポーターのなかには大会中、Twitterで試合のライブ配信やゴールシーンなどが目に飛び込んできた人も多いかもしれません。

今回は見事4日目の「FUTチャンピオンカップ」を制し6月のプレーオフ世界大会への出場権を獲得したナスリ選手(鹿島アントラーズ)と、惜しくも準決勝で敗れてしまった昨季2冠王者ジェイ選手(川崎フロンターレ)の2人に、eJリーグを終えての感想や反省、試合中それぞれのシーンごとに何を考えていたのか、オフライン大会ならではの魅力や裏話など、大会直後の熱量そのままに様々に語ってもらいました。

オフライン大会の楽しさ

――まずお2人に、eJ リーグ特に決勝ラウンド 4 日間を終えての率直な感想をお聞かせください。
ジェイ:一言でいえば思うような大会にはできなかったのですけれど、オフラインで開催された最後の2日間(1/29,30)は特に本当に面白かったですね。

ナスリ:大会だけではなくて、その場の雰囲気も全部含めて、同じくオフライン大会は楽しかったですね。あとはDAZNで毎週解説を聞いているベン・メイブリーさんと話せたのも良かったです。

ジェイ:オフラインならでは隣同士で対決するというのもあって、その中でエビプール選手と対戦した時とか、彼が点を決めて吼えたりとか、やっぱりそういうオフラインならではのドキドキ感もありました。戦い方に影響を及ぼしたりする気迫は伝わってきますね。プレーしていても隣の様子はちらっとは見えるので、戦術とは違う要素が伝わってくるなというのは感じましたね。

ナスリ:僕はあまり隣にいても感じることはないですね。今回だと2人の間に置かれたPSに隠れて、画面も近くで見てるので意外と見えないんですよね。以前は画面から引き気味でプレーしていたんですけど、世界大会で会場が狭すぎて後ろとぶつかっちゃってたんですよ。それで周りを見たら有名なテックス選手(世界でもトップの実力を持つFIFAプレーヤー)とか近くて。それならもう近い方がいいのかなと思って、意識的に矯正しました。

ジェイ選手の「苦悩」

――ここからはそれぞれのプレーの振り返って頂きます。まずは3日目の「クラブチャンピオンカップ」から。

ジェイ:準々決勝のvsあつや選手戦は合計スコア4-2(1stレグ2-1、2ndレグ2-1)だったんですけれど、どちらの試合でも基本的にあつや選手が丁寧に丁寧にボールを持っていて、守備に追われる展開となりました。自分が攻撃に移ってもすぐに取られてまたボールを長時間持たれてしまい、守備をまたやるのかっていうしんどい気持ちになっていました。それがあつや選手の狙いでもあるので、そういった試合運びの駆け引きも含めてきつかったですね。そして、今作FIFA22で自分は全然攻撃がうまくいってないと思ってたので、より「どうしよう」っていう不安に駆られながらのプレーでした。

ジェイ選手の先制ゴール

――長時間でも持たれていたけど、ジェイ選手が先制しました。
ジェイ:これはニアゾーンとかポケットという、ペナルティエリアの脇のスペースを取れて、あとはもうレアンドロ・ダミアン選手に合わせるだけだったのでこれはラッキーだったんですけど、本当にこれらいしかやれず、その攻撃パターンにあつや選手もどんどん慣れてここを埋められていったので、この後からがきつかったですね。

――戦術的に工夫したところは?
ジェイ:基本的に4-4-2を使っていました。ロングボールを振ってサイドで起点を作り、そこからクロスなり中に入っていくなりする、サイドを起点にした戦い方をしたかったです。それに、中央のFWはゲーム的に 1枚だと最後のペナルティエリアで選択肢がドリブルしかなくなるケースが多くなるので、あの4-4-2 がベストでした。あとはマルシーニョ選手の足が速く、裏抜けしてそのまま点を取ってほしい思いもあってFWに置きましたね。

流れを変えようとプレスに行くも回避されてしまったシーン

ジェイ:あつや選手も柏レイソルのブラジル人2トップがとてもフィジカルが強くて空中戦も行けるので、サイドを起点にして本当に丁寧に丁寧につないで、クロスでワンチャンスを狙うような戦術だったので、まったく無理をしない。本当に守備をしていて気が抜けず難しかったです。
この50分のゴールキックのシーン、ペースを取り戻したいと思って前線プレスを仕掛けているんですけど、こうして2トップに競り勝たれてしまってまた長い守備の時間になる、と。これをずっとやられていると、ブラジル人2トップでどこか今度は重要な位置で上回られてやられてしまうのが見える。ギリギリで焦れるか焦れないか、本当にメンタル勝負でしたね。この試合は。

ナスリ:めちゃめちゃ分かる。

勝敗を分けた美しいミドルシュート

ナスリ:これ実は、僕が直近のe日本代表の活動の時にやっていたシュートなんですよ。それを盗まれました。

ジェイ:そうですね。中央の深いエリアは固く守られていましたし、トラップして持ち出すまでは横パスの選択肢を探してたんですが、あっフリーになったと思って一瞬の判断で打ったんです。ナスリのこのプレーは自分でも練習していたので。

ナスリ:自分は普段のオンライン対戦でも、点差がついたら色んなことを試しているんですよ。それで見つけたと思って。ちなみにアグ選手(同じe日本代表メンバーで横浜F・マリノス。クラブチャンピオンカップ準決勝でナスリ選手に勝利)もやっています。

ジェイ:直前練習でもすごい真似してたもんね。

「クロスの選択ミス」があったというシーン

ジェイ:あっこれ!今大会を通じて自分は『L1クロス(山なりに放つ高いクロス)と普通のクロスの使い分け』が全然できていなくて、普通のクロスを使えば1点のところでL1クロスをして取れず、というシーンがもう数え切れないくらいありましたね。このシーンは逆にL1クロスを使えば点を取れていたと思います。ワイプで映っている自分はミスったー!ていう様子ですよね。

ナスリ選手の「堅さ」のウラ

――ナスリ選手は準々決勝vsスレッジ選手戦まで失点が6試合3失点と守備が強固でした
ナスリ:このクラブチャンピオンカップで使用されたOVR90モード(能力均一化モード)は、ゴールがなかなか入らないんです。まずはその点と、あとは自分がボールを持つスタイルだからですかね。今回特別守備が上手くなったというわけではないと思います。相手の攻撃回数を少なくしたから失点も少ないという感覚です。

1stレグ直後、ナスリ・スレッジ両者が目を合わせ苦笑いするシーン

――この苦笑いは多くの人が気になりましたが、何だったのでしょう?
ナスリ:この瞬間を覚えていなくて…なんだろう…単に目が合ったからですかね?(笑)

――ナスリ選手も難しい展開の試合になりましたが、最後は前からプレスに来る相手に10分間ほどボールキープし、試合を終わらせます。『常時プレス』という相手の超攻撃的な守備戦術に、どのように対応したのでしょうか?

ナスリ:これは…芸術的でしたね…(笑)。相手の『常時プレス』に対しては攻撃戦術で『スロービルドアップ』というビルドアップ戦術があって、味方のサポートが細かく近くに寄ってきてくれるようになるので、相手のプレッシャーを剥がしやすくなるんです。あとはドリブルのタイミングですかね。鹿島っぽい、と色んな人からコメントをもらいました。

――ちなみに2人は試合中にイヤホンをしていますが、何を聞いているのですか?
ナスリ:自分は音楽を聞いていたんですけど、この時は『PUNPEE』かな?無音よりはなにか音を聞きたかったんです。音楽を聞かなければいけないわけではないのですけれど、あんまり試合に没頭しすぎないようにするために。試合中は本当は、コーチか誰かと喋りながらやりたいタイプなんです。あと、今回は何かつぶやいているところをカメラに抜かれているんですが、たまに聞いている歌を口ずさんでいました。

ジェイ:僕は何も聞いていないです。最初は何も着けていなかったんですけど、オフラインでは正面に座っていた実況解説の声がダイレクトに聞こえて来たので全く集中できないなと感じて、耳栓代わりにしていました…(笑)。自分は黙々と没頭したい派です。隣で話しかけてくる人がいたらうるさいと感じますね(笑)

勝敗を分けた「思い切り」

――ジェイ選手は準決勝vsエビプール選手戦で敗退してしまいます。どういった試合だったでしょう。
ジェイ:エビプール選手は攻撃面でうまくボールを回しながらサイドに展開したり裏抜けのパスを出してくるんですが、そのタイミングが読めなかったり、そこの意外性がすごい選手ですね。事前にも対戦はしていてそういうサッカーをするっていうのは分かってたんですけど、なかなか慣れない。

PA内に侵入するも奪われてしまった、ジェイ選手曰く「象徴的」なシーン

ジェイ:こういうとこなんですよね。今作でダメなの…。自分が思ったスキルムーブを出せなくて、どうしよ、どうしよっていうプレーになっちゃった。ここのプレー精度がもう悪くて。今のシーンは左斜めにいた選手に2回押しのパス(少し浮かせたパス)を出せたら得点が取れていたと思います。こういったところがFIFA21の癖を引きずっていて、本作に対応できていなかった象徴的な部分ですね。

シュートを打とうと思ったけれど打てなかった「思い切りのなさ」が出たというシーン

ジェイ:今のこれも分かりやすい。左サイドで持ったとき相手がGKを少し出してきているのに気づき、ターンした後に打とうと1回思ったんです。だけど、その思い切りが全くなくて。俺は何してるんだって気持ちがどんどん下がっていって。

ナスリ:これは打ったら入ってたよね。

シュートが味方に当たったように見えたが、実際には「落としのパスを強くしすぎてしまった」というシーン

ジェイ:これもミスなんですよ。浮かせたボールにヘディングを強パス(通常の☓ボタンにR1も押すことで強いパスとなる)で落としてしまう癖がついてしまって。通常のパスだったら多分決まっていますね。この選択ミスがクロスも含めてめちゃくちゃあって。いや、今作対応全然やっぱできてないなっていうこっからもうどんどん負けモードに沈んでいきましたね。

良い形でゴール前まで侵入するも奪われてしまったシーン

ジェイ:2nd leg後半88 分ぐらい。これこれこれこれそうですね。ここに思い切りのなさが出ている。これも打ったら入っているはずなんですよ。これはもうマルシーニョに入ったら打つべき場面なんですけど、なかなかPA内でもボールを持てていなかったので、ボールを入れる前の時点で「DFを1枚剥がさないと打てない」という気持ちにずっとなっていて。個人的にはクラブチャンピオンカップのほうが欲しいタイトルだったので、悔しい敗戦です。

ナスリ選手の陥った「沼」

――準決勝vsアグ選手戦は1stレグで2点リードしたものの、2ndレグで追いつかれ、サドンデス方式の延長戦で敗れました。
ナスリ:インタビューでも言ったんですけど、この試合の記憶がないんですよね…。土居選手のフィネス(コントロールシュート)は覚えてるんですけど。

ナスリ:試合中になんだか全てが分からなくなる時が来るんですよ。何をやってもうまくいかないし、何を押せばいいかもわからなくなる。近いものとしてはイップスみたいな…。みんなはこの現象を『沼』と呼んだりしています。何がきっかけで起こるのかわからないのですが、それがこの2試合目の後半に来てしまいました。

日向坂46・影山優佳さんも思わず叫んだ、芸術的なコントロールシュートが決まったシーン

――この芸術的なコントロールシュートのコツはありますか?
ナスリ:位置はあまり関係なくて、相手DFの足に当たらない遠いところにボールを置くことですかね。ゲーム的には『プレッシャーがかかっているか』なんですよね。一定の距離まで近寄られているとシュート精度が下がるので、そういった理由で遠いところに置くこと。

――そして2ndレグ後半から『その時』が来たと。
ナスリ選手が徐々にプレー選択を誤っていく、象徴的なパスミス

ナスリ:だんだんここから何もできなくなりました。いつも観ている人じゃないとプレーの差がわからないかもしれないですが。

ジェイ:ナスリのテンポが全くなくなった。この49分のパスもナスリらしくないね。悪いときの自分みたいになっている。ナスリはあんなアバウトなボールを出さない。

「この時」とナスリ選手が呼ぶシーン。このあとナスリ選手は精神力のみで戦う

ナスリ:あっここです!ドリブルされたとき…この時をすごい覚えてます。このドリブルをされた時に全てを忘れてしまいました。誰で守備に行くかも操作もわからなくなって失点し…。ここから先は、もう無意識の自分が戦ってる感じですね…(笑)

延長戦でのゴールデンゴールにて敗れたシーン。ほんの一瞬に見えるが、判断の遅さがあったと悔やむナスリ選手

ナスリ:延長戦でも、中央エリアの裏をありえないほど多く取られているんですよね。延長の失点もそれで、すべての対応がコンマ何秒か遅い。頭がポカンとしているから考えなきゃいけないと思っていて、あっ真ん中をケアしなきゃいけないと考えてからプレーしたから…守備のカーソル対応がコンマ何秒か遅くてやられている。難しかったですね。