スマートスタジアムの先駆け「リーバイススタジアム」に未来のJリーグを見る
WATCHスマートスタジアムの先駆け「リーバイススタジアム」に未来のJリーグを見る
7月下旬、Jリーグがイギリス動画配信大手のパフォームグループと放映権料2100億円という大型契約を結んだことが話題となりました。これにより2017シーズンからは同社提供のストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」でJ1からJ3までの全試合が生放送されます。これまでのテレビ主体からインターネット主体の放送に変わるため、日本のサッカー文化の大きな分岐点となるかもしれません。
今回JリーグとDAZNの大型契約が発表された場で、もう一つ大きな発表があったのをご存知でしょうか。それはスタジアムとそのホームタウンのICT化を図る「スマートスタジアム事業」の協業契約を締結したこと。スタジアムとその周辺でのWi-fi環境整備や情報サービスの提供を始めとしたICT化(=スマートスタジアム化)を、JリーグとDAZN、そしてNTTグループで行っていくとのことです。
スマートスタジアムの先駆け「Levi’s Stadium(リーバイススタジアム)」
Photo by Matthew Roth
今後日本でも話題となる回数が増えていくであろうスマートスタジアムですが、スポーツ大国アメリカにはその先駆けとなったスタジアムがあります。それがカルフォルニア州サンタクララにある「Levi’s Stadium(リーバイススタジアム)」。NFLの名門、サンフランシスコ・49ers(フォーティーナイナーズ)の本拠地でもある同スタジアムは、米ヤフーや独SAPなど多数の大手IT企業と公式スポンサーを結び、2014年に完成した最新のスマートスタジアムです。
スタジアムにいながらもお茶の間以上の体験ができるように設計された同スタジアムでは、観客全員が同時に使用できるWi-fiを完備しているのはもちろん、スタジアム専用アプリを使った様々なサービスが提供されています。
試合のスタッツや選手情報が手軽に見られる他、直前のプレーやのリプレイ動画やハイライト動画も安定した通信環境の中で快適に視聴可能。試合以外のサービスでは、食事をアプリで注文できたり、追加料金を払えば自分の席まで運んで来てくれるサービスもあります。さらにはなんとトイレの混雑情報を教えてくれる機能も付いており、スタジアム内での快適さがITによって徹底的に追求されています。
この他にもデジタルチケットの購入や駐車場の予約、位置情報を利用した経路案内や最寄りの交通網の時刻表検索機能など盛りだくさんです。
リーバイススタジアム公式アプリのスクリーンショット。食事の注文や動画の視聴がここから簡単に行える。
情報技術からは逸それますが、リーバイススタジアムは環境への配慮という点にも優れています。
公式ウェブサイトに記載されている一部を紹介すると、温室効果ガスを減らすため公共の交通機関や自転車専用道路で訪れることができる場所に位置していたり、リサイクルや再利用が可能な製品を使用していたり、スタジアムの一部の屋上に、約2500平方メートルの“緑の屋根”(=植物が植えられたスペース)を備えていたりと、地球環境に対しても“スマート”なリーバイススタジアム。
他にも屋根などを冷却する水を循環・再利用したり、ソーラーパネルで発電した電気を使用するなど様々な取り組みがなされています。これらの取り組みによって「LEED」と呼ばれる建物とその施設の環境性能を評価するシステムにおいて、NFLのホームスタジアムとして初のゴールド評価を受けています。
屋上の一部にある緑の屋根(Photo by albedo20)
Jリーグでも始まったスタジアムのスマート化
ここまでアメリカ「リーバイススタジアム」の情報技術を通じた快適なサービスの数々を紹介してきましたが、日本のスマートスタジアムもこれに負けないものになるかもしれません。
Jリーグらが取り組む「スマートスタジアム事業」はNTTグループが出資している大宮アルディージャで、現在トライアル運用が行われています。Jリーグ2ndステージ開幕戦となった7月2日からは、スマートスタジアム化の第1弾として高密度Wi-Fiサービス「ARDIJA FREE Wi-Fi」の提供を開始。これと並行して、スタジアム内でスカパー!やテレビ埼玉の大宮アルディージャ関連番組が無料で配信されるようになりました。また一部の席では、備え付けのタブレットから食事のデリバリーサービスも開始されています。
ARDIJA FREE Wi-Fi専用のポータルサイトではスタジアム周辺のおすすめグルメ情報やクーポンも提供されているので、試合で白熱した後はご当地B級グルメ「大宮ナポリタン」を食べて帰るのもいいかもしれません。
スマートスタジアム化が進んでいるNACK5スタジアム大宮
先日25日から開始されたスマートスタジアム化第2弾では、Wi-fiが強化されより多くの人が同時に使用できるようになったのに加え、第1弾のサービスをまとめた公式アプリがリリースされました。他にも“楽しめる”コンテンツの拡充を図るとして、試合中特定の選手を常にフォーカスする選手追っかけ映像の配信も開始。大宮アルディージャとNTTグループは、今後も情報技術を利用した様々なサービスを提供していくそうです。
2017年からJ1のスタジアムで随時展開されていく予定のスマートスタジアム事業。先駆けであるリーバイススタジアムのように“お茶の間以上の体験”を実現できれば、スタジアムに足を運ぶ人も増えJリーグ全体が盛り上がっていくのではないでしょうか。Jリーグが掲げるスマートスタジアム事業の今後の展開を期待して待ちましょう!
(Photo by Al Case and Inter Free Press)