ツエーゲン金沢が考える人事評価制度。西川圭史氏インタビュー

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ツエーゲン金沢が考える人事評価制度。西川圭史氏インタビュー

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最先端の人事評価クラウドで働き方改革をサポートする「あしたのチーム」では、現在サッカー、バスケットボール、野球をはじめとして、約50のスポーツクラブへスポンサードを行い、人事評価制度の導入支援を行なっています。

今回は今年9月に開催された「あしたの人事評価アワード2018」において特別賞を受賞した、プロサッカークラブ・ツエーゲン金沢(J2)のGMを務める西川圭史氏に、人事評価制度の導入からどのような変化があったかや、クラブとしての今後の展望を聞きました。

特別賞の受賞理由
サッカークラブという特殊な業務性質として、地域や行政との活動など業績として現れにくい業務においてもプロセスで評価する制度を構築し、制度の運用を通じて会社のビジョン新党の仕組みを実現しました。スポーツクラブのフロント企業として先進的な取り組みとして、特別賞を受賞しました。

人事評価制度の導入で前向きな雰囲気が生まれた

ーーあしたのチームの人事評価制度を導入する前は、人事評価制度に課題を感じていたのでしょうか。

私は今8年目ですが、当初は親会社の昔ながらの人事評価制度を運用していました。しかしそれでは適正な評価ができていないと感じて廃止し、その後は人事評価制度がないままでした。
クラブがアマチュアリーグの頃は、「とにかくスポーツ業界で働きたい」というモチベーションで働いているメンバーが多くいました。社員の「やりがい」に甘えてしまっていた部分があったと思いますが、不満が出ることはありませんでした。
それがJ3、J2とステップアップし、新たに人材を獲得する中で、メンバーのモチベーション維持や、新たな人材獲得の武器として、人事評価制度の必要性を強く感じるようになりました。
しかし、外部に依頼をするには費用も高く、なんとか自分で解決しようと本を読み漁ったりもしましたが、なかなか導入まで制度を組み上げるには至っていませんでした。

ーーそこで、あしたのチームのスポンサードの話があって導入されたのですね。新たな人事評価制度の導入にあたって反対の声などはなかったのでしょうか。

人事評価制度の導入時に、頑張りが給与アップに繋がるという説明が明確にあったので、反対の意見はあまりなかったです。みんなきちんと評価されたいという気持ちが強かったのだと思います。

ーー人事評価制度を導入して2年目を迎えました。

2017年10月からトライアルで導入し、本格的な導入は、2018年の2月からです。当初はシーズンの後半だったこともあり数字を目標にするにはハードルが高く、トライアルとしました。それでシーズンが開幕する2月から本格導入しました。

ーー人事評価制度の導入前後で変わったことはありますか?

導入にあたって大事にしていたのは、「成果と報酬を結びつける」ということはもちろんですが、「プロセスをしっかり評価できるものにする」ということです。クラブの勝敗が関係して、どうしても結果を出すのが難しい場合もあるため、仮にチャレンジして失敗しても、成果を数字だけで見ずに、チャレンジしたことに対してもしっかり評価をする制度を作りたいと思っていました。そこがあしたのチームの人事評価制度にぴったりハマりました。そういった背景があって、それぞれが新しいことにチャレンジする目標設定をしていくため、今まで以上に前向きな雰囲気ができてきました。

また人事評価制度導入前には、連絡漏れだったり、ある人だけしか知らない情報があったり、それにより問題が発生してしまうという課題もありました。そのため導入後に、部門長には部下や部門でのミーティングをすることを目標設定に入れてもらいました。意識して情報共有をしてくれるようになったので、風通しがよくなり、コミュニケーション不足によるミスが減りました。

自分がやりたいことを積極的にチャレンジしていく姿勢を大切に

ーー目標設定はどのようなものを設定していますか?

基本的にはクラブで考え、あしたのチームの担当者にもアドバイスをもらいながら設定していきました。導入前の懸念として、個々が目標設定をすると自分の成績をあげる事ばかりに目がいってしまい、他に対する協力の姿勢がなくなってしまうのではという声がありました。人数が少ない組織なので、自分の手が空いている時には他のメンバーを手伝う協力の姿勢は必要不可欠です。
それをあしたのチームの担当者に相談したところ、目標設定には“チームワーク”を入れてはどうかと提案いただき、実際に目標に入れたことで懸念していたような問題は起こらずに運用できています。

ーー西川さんがツエーゲン金沢で働く人に求める人材像はどのような人でしょうか。

基本的にはサッカークラブであり、スポーツクラブなのですが、サッカーだけでなくてはいけない訳ではなく、もっと色々な人を結びつけるプラットフォームになれる存在だと思っています。
以前は試合会場で疲れた顔をして運営していたこともありましたが、地域の人を笑顔にしたいというのが大前提とすると、それには関わっている人がまずは楽しんでやるというのがとても大事です。
「サッカークラブとしてこうあるべき」というよりも、自分がやりたいことを積極的にチャレンジしていく姿勢を持った人材であってほしいです。
また我々は地域の人たちに支えられて成り立っていますし、色々な人を結びつけられる存在でありたいという考えから、とにかく外に出てコミュニケーションをとって、地域の人をいかに巻き込んでいくかを大事にしてほしいです。

ーー西川さんはあしたのチームの人事評価制度をどのように捉えていますか。

他のサッカークラブが、あしたのチームの人事評価制度の導入を検討するにあたって、取り組みをヒアリングに来たことがありました。「あしたのチームの人事評価制度ってつまりは何なんでしょう?」といった質問があったのですが、「私がやってほしいことをしてもらうためのツールです。」と答えて納得してもらいました。これまで営業に対しても「あれをして、これをして…」とやってほしいことを話してきましたが、明文化したものがなく、色々な方向に力が分散してしまっていました。人事評価制度を通してそれぞれが目標設定して優先順位をつけて業務に取り組む中で、組織全体が目指す方向に、社員も意識して向かっていけるという部分が非常に良い制度だと感じています。

ーー目標設定してから達成度の振り返りはどれくらいのスパンでしているのでしょうか。

私が面談に同席して振り返りをするのは3ヶ月ごとですが、部門長とは1ヶ月半ごとに進捗を確認しながら振り返りをしています。スポーツにはシーズンがあるので売上をあげられる期間が決まっています。四半期ごとに早め早めに振り返り、短いスパンでPDCAを回せるというのが良いところです。
また、面談を通して全員とコミュニケーションをとる機会をこの頻度で作れるというのは良いところだと思っています。

J1目指して地道に進み続ける

ーークラブを運営するメンバーの意識が変わったことで、チームへ還元されたものなどはありましたか?

正直まだクラブへ還元という意味での大きな変化はないのですが、選手が出演するイベントの運営を計画的に進めることができるようになりました。以前はイベント直前に選手に依頼をしてしまうこともあったのが改善され、選手にとってもプレー以外の負担が軽減されていると思います。また、イベント自体のクオリティや、参加した方の満足度も上がってきているように感じます。

ーー最初に、社員の「やりがい」に甘えてしまっていた部分もあったとおっしゃっていましたが、人事評価制度を通して改善された部分はあったでしょうか?

効率的な働き方をすると言っても、いきなり10分の作業を5分に短縮することは難しいようにも思えるのですが、目標に設定した業務を優先し、極論ですがそれ以外は適当でも構わないくらいの比重で取り組んでもらうようにしました。これにより意識が変わってきて、明確に労働時間の短縮化ができていると感じています。



ーー最後にクラブとしての目標・展望を教えてください。

クラブとしては、今年J2で4年目のシーズンなので、J1にどうやってあがっていくかをしっかり考えて、地元の皆さんにもビジョンを提示していかなければなりません。チームが立ち上がってから12年経ちますので、取り巻く環境も変わる中、ビジョンを作り直し、明確な中期計画を来シーズンの頭頃に発表できるように動いているところです。

運営側としては採用や、やりがいと言った面もありますが、クラブとして資金力をつけていかないとJ1には上がれないと思っています。クラブも地元の皆さんも夢であるJ1に上がるためには、この人事評価制度を回していくというのが地道なようで一番の近道だと思います。しっかり続けてやっていきたいと考えています。

写真=郷原麻衣

Jリーグ ツエーゲン金沢