箱根駅伝が全国化!?関西で戦う選手・指導者の本音は?
WATCH箱根駅伝が全国化!?関西で戦う選手・指導者の本音は?
11月19日に京都府の丹後半島で丹後大学駅伝が行われました。この駅伝は関西一を決める駅伝でシード校10校、記録審査突破校の12校、計22校が出場しました。優勝候補には連覇を目指す立命大、2年ぶりの優勝を目指す京産大、初優勝を目指す関学大などが挙げられていました。
レースは1区から関学大が独走し、7区までに2位の立命大に対して2分18秒のリードを奪いました。最終8区で立命大に大きく追い上げを許したものの37秒差をつけて悲願の初優勝。2位に立命大、3位に京産大が入りました。
優勝のゴールテープを切る関学大の小嶋一魁選手
丹後大学駅伝に出場した選手は関東の大学のみが出場できる箱根駅伝に出場することはできません。箱根駅伝は2024年の第100回大会から全国に開放されることが検討されていますが、関西で陸上競技に取り組む選手たちはどのような考えで関西の大学を選び、競技に取り組んできたのでしょうか。今回は関学大の優勝に大きく貢献した二人の選手を取り上げてみました。
トラックの力を磨いた仲村尚毅
1区を走った仲村尚毅選手(4年)は、11月12日の日体大記録会で13分52秒53の兵庫学生記録を更新したスピードランナーです。今回の駅伝でも持ち味のスピードを存分に発揮して5kmから独走態勢に持ち込み、2位と12秒差をつけて区間賞を獲得しました。
これまで1500mをメインに取り組んできた仲村選手にとって実はこれが最初で最後の大学駅伝でした。関学大に進学を決めたのも「関東だと冬季は箱根路線に向かってしまい、それだと自分の良さがなくなってしまうのではないかと思いました。自分はトラックの1500m、5000mで勝負したいという思いが強かったので関西に残りました」という理由からでした。トラックに専念したことで昨年の日本選手権1500mでは6位、今年の関西インカレ1500mでは優勝という結果を残しています。
仲村選手は箱根駅伝に出ることのない関西だからこそ自分の極めたい種目を極められるという長所を活かして成長した選手でした。個人でトラック競技に取り組みたい選手にとって箱根駅伝に出場することのない関西は最適の環境と言えるのかもしれません。
トラックでスピードを磨いた仲村選手(写真中央)
関東勢と張り合った男・野中優志
6区で区間新記録を打ち立てた野中優志選手(4年)は、1年生から駅伝の主力選手として活躍した関西ナンバーワンランナーです。野中選手は川西北陵高時代から14分30秒43というタイムを残していて関東の大学からも誘いは来ていました。しかし、箱根駅伝に対するこだわりはなく、地元に近い関学大に進学を決めました。「関西で戦って関東の選手とも戦えればいいと思っていました」と関西で競技に取り組みながらも関東の選手を意識しながら日々練習に取り組んでいました。
その結果、今年の全日本インカレ5000mでは7位入賞、出雲駅伝ではエース区間の3区で区間8位と健闘しました。出雲駅伝、全日本大学駅伝では関東の選手が区間上位を独占していますが、野中選手のように日頃から関東を意識して鍛錬を積めば、十分に戦えるということを証明しています。関西でも本人の意識次第では関東勢に引けを取らない選手になることができるのです。
関西一の実力者である野中選手
箱根駅伝の日程を変えるべき?
仲村選手、野中選手のように関西で結果を残す選手もいますが、箱根駅伝に出られる関東に有力選手が多く流れているのが現状です。今年の出雲駅伝と全日本大学駅伝では関東勢が上位を独占し、関西の大学は関東勢の争いに食い込むことができませんでした。現在の学生長距離界の現状に立命大コーチの高尾憲司氏は「全日本と箱根の時期を入れ替えたほうが良い。全日本を知名度の高いお正月に持って来れば全日本が本来の大学ナンバーワンを決める大会として魅力的なものになる」と提言しています。
立命大の高尾憲司コーチ(本人提供)
箱根駅伝の知名度が高いのは国民の大半が家族でテレビを見て過ごすお正月に行われているという背景があります。もしお正月に全日本大学駅伝が開催されるとなれば多くの長距離選手が全日本を最大の目標とするようになり、現在のような地域格差は解消されるでしょう。長い歴史のある駅伝の日程を変えることは簡単ではありませんが、駅伝の在り方を考える時期に来ているのかもしれません。箱根駅伝の今後がどうなるのか注目が集まります。