サッカーを通じてより良い社会づくりに貢献 “love.fútbol Japan”が描く未来 -前編-

サッカーを通じてより良い社会づくりに貢献  “love.fútbol Japan”が描く未来 -前編- SUPPORT

サッカーを通じてより良い社会づくりに貢献 “love.fútbol Japan”が描く未来 -前編-

スポーティ

アメリカ生まれのNGOプロジェクト “love.fútbol”。「貧困・少年犯罪といった社会問題に、サッカーグラウンドづくりからアプローチして解決に導いていくこと」をミッションに、中南米を中心に活動を続けています。そのlove.futbolの日本法人である”love futbol Japan”が2018年2月に産声を上げました。代表を務める加藤遼也氏に、話を聞きました。

グラウンドを拠点として様々な問題に取り組むlove.fútbol


love.fútbolとは、グラウンドを拠点とした町の貧困、教育、治安、環境、ジェンダー、経済問題の解決に取り組むアメリカ発のNGO団体のことを言います。中南米、アジア、アフリカで町の人たちみんなと一緒にサッカーグラウンドを作り、社会問題の解決に努めています。「サッカーが好きな世界中のすべての子どもが安全にサッカーできる場所をつくろう」という思いには、ウィリアン、ダビド・ルイス(ともにチェルシー)やエルナネス(河北華夏幸福)といったブラジル代表選手たちも賛同してサポートしています。

アメリカ、ブラジルに次ぐ3つ目の活動拠点である日本ブランチには、何が求められているのでしょうか。

世界3つ目の拠点であるlove.fútbol Japanは、日本とアジアで子どもたちのために、安全なグラウンドづくりをしていきます。僕らにとってグラウンドのコンセプトは ”more than place to play”。グラウンドは、サッカーをする場所であるとともに、地域や子どもの成長を支えることや、セーフティネットになる場所として見ています。日本、アジアでこれからの社会に、必要とされているグラウンドの在り方と、アジア地域への貢献を望んでいる企業をうまくマッチングさせていくことが大切になると思います。

現在は、クラウドファンディングを利用したブラジル・レシーフェでのサッカーグラウンド作りが、リアルタイムで進行中となっています。

過去に、ブラジルでグラウンドを作った際に、ある少年がこう言ったそうです。『車に轢かれることを気にせずにサッカーができるんだ。僕の夢が叶ったんだ』と。ストリートサッカーはサッカー文化の根源と言えるかもしれません。しかし、その中で命を落とす少年も少なからずいるという現状に目を向ける必要があります。法人化した日本ブランチの最初の挑戦として、クラウドファンディングを実施することにしたんです。

サッカーが社会を救う可能性に触れた衝撃

大学在学中は、スペイン語を専攻していた加藤さん。語学留学したバルセロナで、たくさんのサッカーを愛する人と出会いました。

自分自身は、サッカーに魅了されて生きてきました。サッカーが生活の中に溶け込んでいる国で過ごす中で、『スペインで頑張るサッカー人を応援する本が作りたい』と願って、大学卒業後に出版社に就職しました。


その後、本の作り手とは異なる立場で、サッカーの魅力を多くの人に伝えるより良い方法を探し続けることになります。

 国内外サッカークラブのあらゆる仕事に関する情報を集め続けました。そんな中でドイツにあるNGOの存在を知りました。サッカーを通して世界各地の社会問題を解決する団体で、FIFAやUEFAもスポンサードしており、こんな仕事があるのかと度肝を抜かれました。翌日には勤めていた会社に辞表を提出したんです(笑)。

南アフリカで味わった挫折

サッカーを愛し、その魅力を伝えることを仕事にしようとしてきた加藤さんにとって、「サッカーで社会問題を解決する」という仕事のあり方を知ったことは、世界が大きく広がるきっかけになりました。

サッカーが社会を変える仕事があるのなら、その分野で働きたいと強く思いました。とはいえ、何も知らなかったこともあり、途上国でのフィールドワークをやろうと決めたんです。南アフリカの貧困街で活動する団体で、具体的な手法を学ぶことにしました。

BRICSの一角を占め、アフリカで、唯一G20会合にも参加する新興国である南アフリカ、2010年ワールドカップの華々しいイメージが、頭をよぎるが実情はどうだったのでしょう。

やはり、貧富の格差はいたるところに存在していました。貧困地域には、あらゆる要素が欠けていましたね。HIV感染者や薬物依に苦しむ人々は、未来が見えず、学習機会も大きく限られているので、生きる上での選択肢も少ないままなんです。

その団体で、加藤さんは、青少年の薬物依存からの社会復帰プログラム、HIV感染予防プログラムをサッカーを通して、提供する活動に邁進してきました。しかし、ある日組織の都合上、プロジェクトを途中で実施できなくなりました。

この地域の子どもや若者は、幼いころから大人に褒められたり、認められる経験が少なく、大人、社会に不信感を持っていました。勇気を持って、僕らのプログラムに参加してくれたにも関わらず、大人の都合でプログラムが途絶えてしまい、結果的に子どもたちを裏切ってしまった。「また、大人たちに裏切られた」と感じたかもしれないと子どもたちの気持ちを考えたら、ゾッとしたことを今でも覚えています。この失敗から2つのことを学びました。1つは、サッカーのためではなく、子どもたちにためにやること。もうひとつは、続けるということです。

アメリカでlove.fútbolとの出会い

南アフリカで味わった悔しい思いを、次に生かすためにも、同じビジョンのまま、持続可能な発展が見込めるプロジェクトを作ることを決意しました。先進国では、どのような取り組みがなされているのかを学ぶために、活動拠点を今度は、アメリカに移しました。ここでlove.fútbolと出会うのです。

love.fútbolは、ただグラウンドを作って与えるだけでなく、グラウンドを拠点に、持続的に地域課題を解決していくプロジェクトを実施していることを知りました。完成させることがゴールではなく、始まりなんですよね。実は世界には、サッカーの力を通じて地域課題を解決する団体が少なくとも100あります。その中でもlove.fútbolの取り組みはユニークで優れていて、南アフリカで失敗経験からの学び2つが体現されている活動だったため魅了されて、ぜひ日本から手伝わせて欲しいと打診しました。

アメリカから帰国した2012年、まずは日本で広報活動をスタート。以降、6年間、前述したドイツNGOに所属して日本の事業計画策定を担当したり、子ども支援を専門とする国際NGOで企業連携の仕事に就きながら、複業として love.fútbol Japanのイベントや寄付集めを進めてきました。

実は南アフリカ、アメリカを挟む2年間は無給でした(笑)。ただ、意地でも続けることは決めていて。love.fútbolについては活動を続ける中で、働きながらではインパクトを出すことの難しさにモヤモヤを感じ始め、昨年秋から本業にすることを決めました。この6年、本当にたくさんの人に支えられ、今では約10人のメンバーがボランティアで活動をサポートしてくれています。

>>日本国内での今後の活動ビジョンは後編

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