エネルギーを消費する「褐色脂肪組織」とは?ダイエットにも重要?!

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エネルギーを消費する「褐色脂肪組織」とは?ダイエットにも重要?!

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脂肪と聞くと「ダイエットの敵」、「肥満・メタボ」、「カロリー過多」といったワードを連想するのではないでしょうか。ダイエットの目的は脂肪を減らすことですから、こうしたことを連想するのは当然です。しかし、あまり知られていませんが、ダイエットの味方をしてくれる脂肪も存在するのです。それが今回紹介する「褐色脂肪組織」です。

今回は、褐色脂肪組織とは何なのか、ダイエットにどうして有効なのか、褐色脂肪組織を増やす方法はあるのかということを説明していこうと思います。

熱を生み出す褐色脂肪組織

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人の体にある脂肪組織は大きく分けて2種類存在します。1つは一般的に想像される、お腹周りや皮膚の下に蓄積する白色脂肪組織です。白色脂肪組織の役割としては、体内で余ったエネルギーを必要な時に取り出せるように蓄えておくという役割があります。

しかし、この白色脂肪組織が蓄積しすぎると肥満やメタボになり、糖尿病や高血圧など、様々な病気の原因となります。そして、もう1つの脂肪組織が今回紹介する褐色脂肪組織です。褐色脂肪組織は肩甲骨周りに多く存在することが知られています。白色脂肪組織はエネルギーを蓄積するという役割があるのに対し、褐色脂肪組織は全く違う役割を果たします。褐色脂肪組織はエネルギーを消費し、熱を生み出すという役割を担っているのです。

褐色脂肪組織は赤ちゃんに多く存在し、大人になるにつれて少なくなっていきます。赤ちゃんは十分に体が発達していないので、寒い時には体を動かして温めるということができません。その代わりに褐色脂肪組織が熱を生み出し、寒い中でも体温を保てるように働いているのです。

UCP1が熱産生に重要

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それでは、褐色脂肪組織ではどのようにしてエネルギーを熱に変換しているのでしょうか。この仕組みを説明するのには、脱共役タンパク質 Uncoupling Protein 1(UCP1)というタンパク質が重要となります。体内でエネルギーを生み出す機構の一つとして、ミトコンドリアの膜に生じた水素イオンの濃度差を利用するものがあります。

ミトコンドリア外膜に蓄積した水素イオンは、通常はATP合成酵素というタンパク質を介してミトコンドリア内膜へと戻ります。この時にエネルギーが生成(ADPがATPに変換)されます。しかし褐色脂肪組織では外膜の水素イオンはATP合成酵素を通らず、UCP1というタンパク質を通り、ミトコンドリア内膜へと戻ります。ATP合成酵素を通った場合ATPが生成しますが、UCP1を通った際にはATPは合成されず、熱が生じます。

このようにUCP1はエネルギーを熱へと変換することができるので、褐色脂肪組織はエネルギーを消費する脂肪と言われており、実際にダイエットに有益に働くことが知られています。

寒冷刺激で白色脂肪組織が熱を作れるようにする

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ここまで述べてきたように、褐色脂肪組織はエネルギーを消費して熱を作り出してくれます。そのため褐色脂肪組織が多ければエネルギー消費が多くなるということになります。そこで、ダイエットをする際にも、褐色脂肪組織が多ければ有利に働きます。それでは、褐色脂肪組織を増やす方法はないのでしょうか。その方法の1つとして、寒冷刺激が挙げられます。

寒冷刺激を与えると、副腎からストレス応答性ホルモンであるノルアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンは血中に放出され、白色脂肪脂肪組織に届けられるとアドレナリンβ受容体に結合し、UCP1を増やすよう細胞内へ情報を伝達します。このようにして白色脂肪組織が褐色脂肪組織に多く存在するUCP1を獲得するようになり、熱産生を行うことができるようになるのです。

このように、寒冷刺激によりUCP1を多く獲得した白色脂肪組織を、褐色脂肪組織のような性質を持っていることからベージュ細胞と呼びます。寒冷刺激を行うことで白色脂肪組織のUCP1を増やし、エネルギーを消費する褐色脂肪組織と同じような性質を持つベージュ細胞へと変えることができるという訳です。実際の寒冷刺激の方法としては、冷たいシャワーを浴びる、温度の低いプールに入るといった方法が挙げられます。

運動でもベージュ細胞を増やせる

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寒冷刺激の他に運動を行うことでも白色脂肪組織が褐色脂肪組織のような性質を持つベージュ細胞へと変わる(ベージュ化)ことが知られています。このメカニズムとして、イリシンというタンパク質が関連しています。運動を行うと筋肉からマイオカインという、筋肉由来のホルモンが分泌されます。そのホルモンの一つにイリシンが含まれています。

イリシンは、筋肉から分泌され、血中を通り白色脂肪組織に届けられると、ベージュ化を引き起こすことが知られています。この他に、強度の高い運動を行うとアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。これらのホルモンも白色脂肪組織のベージュ化に関連しています。運動の種類としては、マラソンや自転車漕ぎなどが挙げられます。強度の高い運動をする場合はダッシュを組み合わせてもよいでしょう。寒冷刺激と組み合わせるなら、水温の低いプールで泳ぐという方法が挙げられます。

寒冷刺激や運動を取り入れて、白色脂肪組織を燃える脂肪へと変えてダイエットを成功させましょう。