カリフォルニアで最も尊敬されるアルバイト -ビーチライフガードのトライアウト。

カリフォルニアで最も尊敬されるアルバイト -ビーチライフガードのトライアウト。 WATCH

カリフォルニアで最も尊敬されるアルバイト -ビーチライフガードのトライアウト。

スポーティ

2月10日の日曜日、ロサンゼルス空港から南へ車で40分ほどの距離にあるニューポート・ビーチで今年のライフガードを選抜する毎年恒例のトライアウトが行われました。

ライフガードはカリフォルニアの海沿いの地域では子供たちが最も憧れる職業、あるいはアルバイトの1つです。だから簡単にはなれません。夏のシーズンが始まる数か月前に行われるトライアウトに合格しなくてはいけないのです。このトライアウトは地元での注目度も高く、テレビのローカルニュースなどでもよく取り上げらます。


ビーチ近くの土産物屋。ライフガードの人気は高い。

冬の冷たい海をものともしないタフな参加者たち。

トライアウトの開始時刻は午前9時。その1時間前から参加者たちが続々と集まってきます。総勢100名程度。その多くは地元の高校や大学で水泳か水球をやっている若者たちのようで、学校名が書かれたお揃いのジャケットを着ているグループもちらほら見えます。ほとんどが男性を占め、女性は5,6名ぐらいでしょうか。

トライアウト開始前の時点での気温は約10度でした。そしてこの時期の平均水温は12~13度ぐらいです。温暖な南カリフォルニアとは言えども一応は冬なのです。気温も水温も普通の人ならまず海に入ろうとは思いもしない冷たさでしょう。筆者もサーフィンを少しやりますし、トライアスロンで海を泳いだ経験もありますが、この水温はたとえウェットスーツを着ていてもとても耐えられません。実際にこの時期は海に出ているサーファーたちの数は夏に比べるとぐっと少なくなります。

それなのに、このトライアウトの参加者たちにはウェットスーツの着用すら許されていません。開始時刻が近づくと、全員が競泳用水着のみの姿になります。まるで寒中水泳のようで、見ているだけで寒そうです。


スタート直前。嵐の前の静けさ

しかしながら、さすがはこの過酷なトライアウトに挑戦しようとする勇者の集まりだけあります。皆が皆、素晴らしく鍛えられた身体をしているだけではなく、水に入ることにまったく躊躇する様子さえありません。そのタフさには恐れ入るしかありません。

第1イベント:1000メートル遠泳。

最初のイベントは約1000メートルの遠泳です。波打ち際のスタート地点に横一直線に並び、走って海に飛び込み、浮かべられたブイを回ってコの字型のコースを泳ぎ、また砂浜に設けられたゴールまで走ります。


スタートの号砲を待つ参加者たち。


一斉に海に飛び込む。

トライアスロンをやっている人はよくわかると思いますが、こうした海での水泳はプールとは大きく異なります。もちろん基礎となる泳力が重要なのは言うまでもありませんが、波や潮の流れに応じて泳ぐ方向を調整しなくてはいけませんし、砂から海へ出入りする際にもテクニックが要ります。


ピアからの眺め

ゴール地点近くのピアには見物人が多く詰めかけ、参加者たちに大きな声援を送っていました。全員がゴールまで泳ぎ切りましたが、1人の女性が海から上がった時点で動けなくなり、担架で運ばれていきました。

第2イベント:砂浜ラン→水泳→砂浜ラン。

約30分の休憩を挟んで、第2イベントが行われました。砂浜を約200メートル走り、約400メートルを泳ぎ、また砂浜を約200メートルを走るというものです。さきほどの遠泳より距離が短い分、スピードが要求されます。


砂浜ランを一斉にスタート

ここでも1人リタイヤを余儀なくされた参加者が出ました。女性の1人が最初のランで足が攣ったらしく、トラックに乗せられて退場しました。


ゴールまで最後の100メートル地点

砂浜を走るのはロードに比べると格段に脚の筋肉に負担がかかります。競争で速く走るのですから尚更です。それを考えると、男女が一斉によ~いどんでスタートすること自体に無理があるのかもしれません。

合格者は約3分の1。誇り高き挑戦者たち。

2つのイベントが終了し、合格者が発表されました。まるでオーディションの結果発表のように、全員が集められて、1人1人の名前が呼び上げられていきます。最後まで自分の名前が呼ばれないと不合格です。

名前を呼ばれた合格者は立ち上がっていくのですが、他の参加者に気を使ってでしょう、露骨に大喜びをすることはありませんでした。メジャーリーグでホームランを打った打者が控えめにダイヤモンドを回るように、うつむいて書類を受け取り、説明会場へと消えていきます。

この日の合格者は35名。全体の約3分の1といったところでした。最後まで残ってしまった不合格の参加者たちにも周りから大きな拍手が送られました。


合格者発表

合格者はこれから夏までの間に人命救助に関する100時間にも及ぶ講習を受けて、ビーチでのライフガードとして任命されるそうです。今年の時給は18ドル14セント(約2000円)。勿論、学生アルバイトとしては悪くないのですが、選考までの過酷なプロセスを考えると、それほど破格の金額だというわけではありません。彼らはそれよりむしろライフガードを名乗る名誉を求めているように思います。

ライフガードは市ごとの雇用なので、このニューポート・ビーチ市だけではなく、ビーチをもつ市はどこも同じように似た内容のトライアウトを行います。

例えばニューポート・ビーチ市のとなりにあるハンティングトン・ビーチ市のトライアウトは翌週の2月16日です。そこで行われるのは1000ヤードの水泳、500ヤードの水泳、そして合計1500ヤードの砂浜ラン+水泳+砂浜ランの3種目。

これに再挑戦する人もいるようです。筆者から見ればスーパーマン、スーパーウーマンのようにタフな挑戦者たちがどこかで希望するライフガードの職に就けることを願ってやみません。


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