春のシーズンが全面中止に決定。明暗を分けたシーズン制スポーツ-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その4

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春のシーズンが全面中止に決定。明暗を分けたシーズン制スポーツ-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その4

スポーティ

日本と同じように、あるいはそれ以上に、米国では高校の課外活動としてのスポーツが盛んです。部活動はスポーツをする貴重な機会を生徒たちに与えてくれます。

部活動を通して、かけがえのない一生の友人を作った人も多いでしょう。その一方で、「ブラック部活」という言葉に象徴されるように、長時間の練習や顧問教員の超過労働など、様々な弊害も生じていることが指摘されています。

私は2017年からカリフォルニア州オレンジ郡にある私立高校でクロスカントリー走部の監督を務めています。さらに、2020年からは同じくオレンジ郡にある別の公立高校で野球部のコーチにもなりました。米国での部活動スポーツが実際にどのように行われているのか、現場から見た様子をご紹介します。

前回記事>>日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動-PART3-

休校、練習禁止、そしてシーズン中止。

2020年4月3日(金)、カリフォルニア州の高校スポーツを統括する組織(CIF – California Interscholastic Federation)が公式に今年度に行われる予定だったスポーツに関わる全てのイベントを中止すると発表しました。言うまでもありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための非常措置です。

カリフォルニア州全体が『ロックダウン』と呼ばれる状況にある中、高校スポーツが中止になることは驚くようなニュースではありませんでした。

地域のすべての学校が全面休校に入って3週間が過ぎていましたし、カリフォルニア州全体でも今年度いっぱいは教室での授業を再開しないことが既に発表されていました。

オリンピックを始め、世界中でありとあらゆるスポーツ・イベントが中止または延期になったニュースも連日入ってきていました。そのため、高校スポーツも同じような運命を辿るであろうことは十分に予想できていましたが、それでもシーズン再開にわずかな望みをかけていた選手たちの落胆ぶりには心が痛みます。特に最後のシーズンにかけていた高校3年生たちは気の毒で、かける言葉もありません。


2020年春季シーズン中止を伝える公式発表(CIFホームページ)

もっとも大きな打撃を受けた春のスポーツ。

以前にも触れましたが、カリフォルニアの高校スポーツは以下のようにシーズン別に分かれています。

■秋(8-11月)
フットボール、クロスカントリー、女子バレーボール、女子テニス、男子水球など
■冬(11-2月)
バスケットボール、サッカー、レスリング、女子水球など
■春(2-5月)
野球、陸上競技、水泳、男子バレーボール、男子テニス、ラクロス、ゴルフなど

生徒たちはシーズンごとに別のスポーツをするか、あるいは自分がメインとするスポーツのシーズン以外はそれぞれのオフ・シーズン練習に参加します。

私が指導する野球チームの場合、秋にフットボールをやっていた生徒が何人かいるぐらいで、ほとんどが1年を通して野球しかやっていません。制度上は複数スポーツをすることが可能ですが、高校レベルになるとそれができるのは一部の運動神経抜群の生徒たちに限られてくるのが実情です。

野球のみをする生徒たちにとっては、夏休みから始まって、秋、冬と長いオフ・シーズン練習を経て、ようやく春のシーズンが中盤に入った矢先に、突然シーズンが途中で終わってしまいました。

その点、秋と冬のスポーツは既にシーズンが終了していましたので、オフ・シーズン練習ができなくなった以外にはほとんど影響を受けることはありませんでした。少なくとも今年は、という但し書きがつきますが。来年の秋のシーズンが始まる時期までには、この前代未聞の事態が収束していることを祈ります。

選手たちはどのようにしてモチベーションを保ったか

時系列に経緯を述べてみますと、私たちが最後にチームとして活動できたのは3月11日でした。その後すぐに4月7日までの休校が発表され、次いで休校期間が5月1日までに延期され、そしてすぐに6月の学期末までと変更されました。

休校になると同時に学校の施設はすべて閉鎖され、どのスポーツであってもチームとしての活動は一切できなくなりました。私たちコーチが生徒たちを学校以外の場所に集めることも禁止されました。要請(Request)ではなく、命令(Order)です。普段の米国は日本より自由度が高い社会だと思いますが、このような緊急時となると、上が決めた方針への強制力は大きくなるような気がします。

生徒たちだけで練習しようにも、高校はもちろん、市内のどの野球場にも入れませんし、民間のバッティングセンターも筋トレをするジムすらもすべて閉鎖されてしまいました。

こうなると野球のようなチーム・スポーツは名目上も実質的にも解散せざるをえません。現在は自宅でできる簡単な筋トレをメールで指示していますが、正直なところ、野球の代わりとなれるものではありません。

私の息子は別の高校で陸上競技をやっています。彼らの場合は生徒たちが自主的に公園に集まって、自分たちだけで練習をすることができました。道具の要らないスポーツの強みです。しかし、それも数日ぐらいしか続けることができませんでした。家族以外で5人以上が集まることが州全体で禁止されてしまったからです。

その後も息子たちの陸上競技コーチは、毎日テキスト・メッセージで「推奨する」自主練メニューを生徒たちに送ってきてくれています。ある日は15キロのロング・ジョグ、ある日は400m x16回のインターバル走、という風にその日のメニューを受け取ると、生徒たちは公園や自宅の周りでそれをこなしています。ときには同じ練習に取り組んでいるチームメイトと路上ですれ違うこともあるようです。

特に長距離走ランナーは元々が道路を走ることが練習の重要な一部ですので、本人にやる気さえあれば、なんとか競技力を保つことはできます。しかし、仲間と一緒に練習することができず、出場できるレースもないという状況で、その努力を1人1人が続けることは容易ではありません。

新型コロナウイルスによって多くの方が亡くなり、収入が途絶えた人も、家族の冠婚葬祭にすら出席できない人もいます。それに比べたら、高校の部活動が中止されたなどは取るに足らないことなのかもしれません。

しかし、それでも彼ら高校生アスリートたちが好きなスポーツを楽しむ日々と努力の成果を発揮する機会が失われてしまったことが、私には心の底から残念でなりません。


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