ボランティアなしでは成り立たない部活動保護者の負担は?-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その6

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ボランティアなしでは成り立たない部活動保護者の負担は?-日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動その6

スポーティ

日本と同じように、あるいはそれ以上に、米国では高校の課外活動としてのスポーツが盛んです。部活動はスポーツをする貴重な機会を生徒たちに与えてくれます。

部活動を通して、かけがえのない一生の友人を作った人も多いでしょう。その一方で、「ブラック部活」という言葉に象徴されるように、長時間の練習や顧問教員の超過労働など、様々な弊害も生じていることが指摘されています。

私は2017年からカリフォルニア州オレンジ郡にある私立高校でクロスカントリー走部の監督を務めています。さらに2020年からは同じくオレンジ郡にある別の公立高校で野球部のコーチにもなりました。米国での部活動スポーツが実際にどのように行われているのか、現場から見た様子をご紹介します。

前回記事>>日本人コーチが紹介する米国のスポーツ部活動-PART5-

部活ロスは選手だけではない。生き甲斐を失った保護者も。

新型コロナウイルスの感染拡大により、私が指導する野球部が活動を停止してからもうすぐ2か月になります。既に今シーズンは全面中止が決まり、例年なら6月中旬から始まる夏休み中の練習も行えない公算が大です。

そもそも授業の再開がいつになるかわからない状況なのだから、部活動だって再開できるわけがない。それをしてしまうのは本末転倒であり、教育の一環である部活動の意義を損なうものだ。と、正論を唱えられると誰も真正面から反論はできません。

しかしながら、勉強よりスポーツの方が好きだ、と言う子供が多くいるのは間違いのないことですし、子供の学業成績よりスポーツで活躍する姿を見るのが楽しみだと言う保護者がいることもまた事実です。中には「高校の授業なんて来年もずっとオンラインで十分。屋外でやるスポーツは今すぐ希望者だけで再開してほしい」なんて不謹慎な言辞を弄する輩もいます。実は私です。

どの試合でもバックネット裏ではつねに保護者たちが観戦している

そこまで過激ではなくても、部活動がなくなって寂しい思いをしている保護者はたくさんいます。チームのSNSに昔の懐かしい写真をアップロードするとか、「早くみんなに会いたいよ」みたいな投稿をしているのは、生徒よりむしろ保護者の方が多いかもしれません。

当番はないけどボランティアはある

部活動に熱心な保護者がいるからなのか、あるいは学校側が最初から保護者をあてにしているからなのか、米国の高校部活動は保護者の協力なしには成り立ちません。

前述しましたように、現在の私は高校の部活指導者なのですが、その前に1高校生の父親になった方が先でした。息子が高校に入学して、最初に驚いたのは、クロスカントリー走部の保護者説明会なるものに呼ばれたときです。高校生にもなって、子供のスポーツに親が関わることが求められているとは思いもよりませんでした。

そのクロスカントリー走部では、全米でも屈指の規模のレースを毎年開催しており、それが貴重な活動資金源になっています。

レースの2日前からコースの設営が始まり、当日は出場チームの受付、チケットの販売、結果速報の貼り出し、入賞者へのメダルの授与、コースの監視、はては実況アナウンスまで、ありとあらゆる仕事がありますが、それらはすべてボランティアで集まった保護者によって運営されています。そのボランティアの様子は下の記事に詳しく書きました。

■参照記事>>全米最大 手作りの高校クロスカントリーイベント

これは、年に1回の特別なイベントですが、それ以外でもシーズン中はほぼ毎週のように、何かしらのボランティアを募集する連絡が保護者に回ってきます。水や食べ物を持ってくる役、送迎ドライバー、スコアキーパー、会場アナウンス、売店スタッフなどにそれぞれ人数が割り振られていて、保護者は自分が希望する役を早い者勝ちで名前を書き入れていきます。

なかなか人数が埋まらない役が残るときもありますが、そのようなときは「どなたか、お願いします。子供たちはあなたを必要としています」みたいなメールが世話役を買って出た人(これもボランティアです)から頻繁に送られてくることになります。私が知る限り、最後まで誰も手を挙げないということはありませんでした。

日本でも子供がスポーツをするには保護者の負担が大きいとはよく聞きます。その大変なことの1つにお茶出しなどの当番制があるようですが、米国の場合はあくまで自発的なボランティアが建前です。熱心な人はよくこのボランティアをやりますし、そうでない人ももちろんいます。

手伝いたい気持ちはあっても、どうしても時間の都合が合わない人もいます。それでもボランティアをやらない人の肩身が狭くなるような話をそれほど聞かないのは、個人主義が強いお国柄のおかげでしょうか。

保護者の一番の仕事は選手専用ドライバーになること

米国で子供がスポーツをする場合に、すべての保護者が例外なく苦労するのは、「子供の送迎」でしょう。ごく一部の都会は例外として、米国のほとんどの地域は車社会です。親が子供を試合場に車で連れていかなければ、子供はスポーツができません。

子供が小さいときはもちろんのことですが、高校生になっても送迎の負担はあまり変わりません。遠征の時はスクールバスが出ることが多いのですが、そのスクールバスが発着する学校の駐車場までは保護者が車で送迎しなくてはいけないからです。

しかも時間は無茶苦茶です。せっかくの週末なのに、学校の駐車場に朝5時集合、なんてときもありますし、あるいは平日の夜11時過ぎに学校へ帰ってくる、なんてときもあります。シーズン中はそれが週に何回かは必ずありますので、保護者の生活も試合のスケジュールに大きく左右されることになります。私のところは夫婦2人に1人っ子だったので何とかなってきましたが、ひとり親(and/or)複数の子供がいる家庭は本当に大変だと思います。

早朝5時。学校の駐車場から合宿に出発。

米国では16歳で運転免許が取れますので、2年生ぐらいから自分で運転して通学する生徒もいます。しかしどうしたわけか、最近は以前に比べて運転することに興味を示さない高校生が多いのです。だからでしょうか、子供が高校を卒業することを、専属ドライバーとしての使命が完了しました、と表現する保護者が実に多いのです。

それがはたして良いことかどうかは分かりませんが、日本じゃ電車で通学している小学生だっていたのになあ、と思うこともしばしばです。少なくとも、高校生を親が送迎しないと部活動ができない、なんてことはありませんよね。


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