コロナ過の後に復活したマラソン大会は人々を再び結びつけることができるか

コロナ過の後に復活したマラソン大会は人々を再び結びつけることができるか DO

コロナ過の後に復活したマラソン大会は人々を再び結びつけることができるか

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9月11日に米国カリフォルニア州ハンティントンビーチで行われたフルマラソン大会「サーフシティー・マラソン」に参加しました。

>>サーフシティー・マラソン公式ホームページ

昨年以来、大勢のランナーが参加する形式の市民マラソン大会は世界中で軒並み中止になりました。言うまでもありませんが、新型コロナウイルス感染拡大のためです。日本でも、10月17日に予定されていた『東京マラソン2021』が来年の3月に延期されることが発表されました。

感染力が強いとされるデルタ株の影響で、米国でも事態が収束したとはとても言えない状況なのですが、この秋から多くのマラソン大会が米国内で2年振りの開催を予定しています。例年は別の時期に開催されるマラソンまでがこの秋に変更したため、ちょっとした大会ラッシュの様相を呈しています。

有名な所でも、10月10日にシカゴ・マラソン、10月11日にボストン・マラソン、11月3日にニューヨーク・シティー・マラソン、11月7日のロサンゼルス・マラソンと、参加者が1万人を越える大都市マラソンが立て続けに行われる予定です。サーフシティー・マラソンはその中でももっとも早く復活したレースの1つです。

スタート前に黙とう。走れることに感謝

米国内のスポーツ・イベントの多くでは、開始前に国歌斉唱が行われます。しかし、今年のサーフシティー・マラソンでは、その前に黙とうが行われました。開催日の9月11日はニューヨーク・ワールドトレード・センターのテロ事件からちょうど20周年にあたったのです。

あのテロ事件の直後も、米国内では様々なイベントが中止になりました。大勢の人が集まる場所がテロの標的になることを恐れたためです。疑心暗鬼な雰囲気が社会を覆う中、人々が勇気を取り戻すために、再開されたスポーツ・イベントが大きな役割を担いました。団結を呼びかける「United We Stand」を合言葉に、事件から僅か2か月後には、まだテロの傷跡も生々しい現場近くでニューヨーク・シティー・マラソンが開催されたことは、その象徴とも言える出来事でした。

2013年に起きたボストン・マラソン爆弾事件の後でも、同大会は翌年にも例年通り同地で開催されました。「Boston Strong」をスローガンに掲げて、社会がテロに屈しない姿勢を力強く示したのです。

コロナ過が収まっていないこの時期にサーフシティー・マラソンが開催されることに対しては批判も多くありました。それでもこの日参加することを選択したランナーたちは、多くの仲間たちと一緒に走れることに感謝する気持ちが、それぞれの胸にもあったと思います。幅広い年齢層にまたがる大勢の人たちが一堂に会する市民マラソンは、私たちがコロナ禍によって一旦失い、また取り戻しつつあるものの1つです。

「テロ事件の犠牲者と新型コロナウイルスで亡くなった多くの人たちに」とアナウンスがあり、スタートライン前に集まったランナーもボランティアスタッフもギャラリーも全員がその場で祈りを捧げました。

サーフィンの全米オープン大会も復活

さて、こうして万感の思いを胸にスタートしたものの、実はこのサーフティー・マラソンのコースそのものは私にとってはまったく目新しいものではありません。それどころか、過去に7回も走ったことがある、お馴染みのレースなのです。

その理由は開催地のハンティントンビーチは私が高校時代を過ごした土地で、現在の住所からも車で20分も離れていないご近所だからです。スタートからゴールするまで、コースの隅から隅まで知り尽くしています。懐かしい場所が次々に現れるので、いつも思い出に浸りながら走ります。

サーフシティーという大会名は、このハンティントンビーチ市当局が公式に商標登録までした別名称『サーフシティーUSA』から来ています。それくらい、サーフィンとビーチを目玉にしている海沿いの街です。

サーフィン全米オープン大会も毎年ハンティントンビーチで行われています。日本で言えば、湘南のイメージでしょうか。

東京オリンピックのサーフィン種目で銀メダルを獲得した五十嵐カノア選手はここハンティントンビーチを本拠地にしていて、2017年と2018年にはこのサーフィン全米オープン大会でも連覇を達成しています。

しかし、この大会も2020年はコロナ禍のために中止となりました。そして2年ぶりとなる大会が、サーフシティー・マラソンからわずか1週間空けた9月20-26日に行われました。日本の五十嵐選手は準決勝で敗れましたが3位に入賞。女子の部では18歳の脇田紗良選手が5位入賞。日本人選手たちが復活したサーフィン全米オープン大会でも大活躍を見せました。

>>サーフィン全米オープン大会公式ホームページ

例年ならアメフト最大のイベント『スーパーボウル』が開催される2月初旬の日曜日に行われるサーフシティー・マラソン。2022年の開催日は再び2月6日に戻されることが決まっています。今から約5か月後です。参加申し込みも既に始まっています。その頃には新型コロナウイルスの状況がさらに好転し、日本からも参加者が来れるようになることを祈っています。

<後記>
サーフィン全米オープンが終了して僅か1週間後の日曜日に、ハンティントンビーチという地名が全米中でトップニュースになりました。喜ばしいニュースではありません。

沖合で操業している石油プラントから原油が大量に流出し、生態系に深刻な被害が生じている、というものです。ビーチは閉鎖され、連邦政府と州の合同による油の回収作業が現在行われています。

この美しい海岸が一日も早く戻ることを祈るばかりです。