永遠の疑問「筋トレは週に何回がベスト?」をレベルと目的ごとに解説

永遠の疑問「筋トレは週に何回がベスト?」をレベルと目的ごとに解説 DO

永遠の疑問「筋トレは週に何回がベスト?」をレベルと目的ごとに解説

スポーティ

私は部活指導員としてアメリカの高校生たちと日常的に接しています。日米で多少の違いはあるかもしれませんが、スポーツ系のとくに男子高校生などは可愛いもので、腕を曲げて力こぶを作ってみせると無邪気に喜んでくれますし、シャツをめくって腹筋を見せるだけで素直に言うことを聞くようになります。

そんなときに、よく生徒から尋ねられる質問のひとつが「コーチは週に何回くらい筋トレをするの?」です。

彼らには悪いのですが、私はこうした質問に真面目に答えることはあまりありません。「毎日に決まっているだろ」と答えるときもあれば、「そう言えば、ここ何か月くらいやってないなあ」と答えることもあります。

実際の話、私はその時々の目的に応じてトレーニングの内容や頻度を変えているので、単純に週何回と答えても、あまり意味がないのです。しかし、それを説明し始めると話がとても長くなりますので、大抵は適当にはぐらかすことになります。

一般論:筋トレ間の休息がなぜ必要なのか

筋トレとは実際には筋繊維を破壊する行為です。筋トレで与えた負荷に筋肉が適応することで筋肥大と筋力向上が実現するのですが、その適応は筋トレをしている最中ではなく、休息期間に起きます。

休息期間中の回復は緩やかな山のような曲線を描きます。そして、その回復曲線が最高地点に達したタイミングで次回の筋トレを行うと、筋肉の成長効果を最大化することができます。これが超回復と呼ばれるメカニズムです。

そのタイミングを逸すると、つまり筋肉が十分に回復していないか、あるいは元のレベルに戻ってしまった後では、いくら筋トレを繰り返しても超回復の効果は期待できません。

従って、筋トレと筋トレの間に、長すぎず、短すぎでもない休息期間を設定すること、言い換えれば、どれだけの頻度で筋トレを行うかが重要な課題になってくるのです。

ところが、「筋トレは週に何回がベストか」は永久に解けない疑問かもしれません。なぜなら、そこには万人に共通するルールが存在しないからです。個人の体格、年齢、性別、トレーニング歴は千差万別ですし、トレーニング負荷の強度や部位によっても筋肉の適応は異なります。

それでも筋トレを始めたばかりの初心者から上級者まで、あるいはダイエット目的の人から筋肥大を目指す人まで、レベルと目的によって、大まかなガイドラインを見出すことはできます。

「筋トレは毎日やったらダメ」の落とし穴

初心者や高齢者、あるいは単に運動不足の人が、筋トレを始めてみようと思い立ったとき、よく隔日や週に2~3回程度の頻度を勧められます。

無理なく続けられるように、という理由が大きいと思いますが、私自身は必ずしもそうではないと考えています。もちろん、筋トレ間に休息は必要ですが、その期間は24時間あれば十分な場合も多いからです。つまり、毎日筋トレを行っても、全然かまわないのです。

まず、初心者のうちは、筋トレで負荷をかけるよりは、正しい動きを習得する方が大切です。そのためには反復練習が欠かせません。筋トレの強度は低く、そして頻度は多い方が望ましいのです。

週に1回だけ長時間の筋トレを行うよりは、毎日10分でもいいので週に6回以上行う方が効果は高いでしょう。後者の方が、ダイエットが目的の人はよりカロリーを多く消費できますし、運動を習慣にするという意味でも健康面において有意義です。

あと、「トシをとると回復に時間がかかるから、休息は長めにとるべき」というアドバイスをよく見聞きしますが、この説も実は信憑性に乏しいようです。

ある研究(*1)では、平均年齢22歳と47歳のグループ間で筋トレ後の回復スピードには有意の差が認められませんでした。回復力の差を生むのは年齢ではなく、個人のトレーニング歴に左右されるのだそうです。

*1. Comparisons in the Recovery Response From Resistance Exercise Between Young and Middle-Aged Men.

手っ取り早い例を挙げると、私は10代の頃にマンガ『1・2の三四郎 』を真似してスクワットを100回もやると酷い筋肉痛になりました。50代の今ではそれくらいはウォーミングアップです。

中級者以上には「分割法」

筋トレの基本は徐々に負荷を高めていくことです。筋肉はより大きなダメージを受けることになり、その分だけ回復にも時間がかかるようになります。

そうなると、毎日同じ筋肉を鍛えることはできなくなり、分割法と呼ばれる方法を取ることが一般的です。

1回のトレーニングでは胸・背中・脚・肩・腕などのある部位のみに集中し、何回かのトレーニングで全身を一回りさせることを分割法と呼びます。たとえば、月曜日はベンチプレスで胸と腕を鍛え、火曜日にはスクワットで脚を鍛える、といったやり方です。

分割法を用いることで、ある筋肉を鍛えながら、別の筋肉を休ませることができます。日々のトレーニング内容を変化させることは、心理的にも身体的にも刺激を生み出します。

特定の部位に集中することで、筋肉を極限まで疲労させる「オールアウト」が可能になります。そして、そこからの回復期間はかなり長くなることも分かっています。

1例を挙げます。筋トレ上級者を対象にしたある研究(*2)では、ベンチプレス10回を8セットというかなりの高セットを被験者らに課し、大胸筋と上腕三頭筋の筋力回復にかかる時間を調査しました。

*2. Recovery of pectoralis major and triceps brachii after bench press exercise.

すると大胸筋の筋力は96時間後にならないと完全に回復していませんでした。上腕三頭筋はやや短い期間で回復しましたが、その差はわずかなものだったそうです。

つまり、筋トレ上級者が高セットでベンチプレスを行うと、それから4日間は休息を挟まないと効果が少なくなるということです。仮に月曜日が1回目だとしたら、2回目は金曜日以降になります。部位にもよりますが、上級者には1部位あたり週1~2回程度が適正な頻度だと言えるでしょう。

全身の筋肉をどれだけの部位に分けるか、それぞれの回復期間の長さは、弱い筋肉はどれで、強い筋肉はどれか。考え始めるとキリがありません。それに加えて、ジムが営業している時間や自分のスケジュールなどを度外視しては、トレーニング計画は絵に描いた餅になってしまいます。

まとめ

私なりの結論を述べると、「筋トレは週に何回がベストか」の質問には答えはありません。そのことを分かりやすく説明したつもりでしたが、かえって惑わせてしまったのなら申し訳ないと思います。

私がお勧めする原則は次の通りです。

初心者のうちは、全身の筋肉に軽い負荷をかける筋トレをなるべく多くの頻度で行う。中級者以上になったら、1回の筋トレで特定の部位に重い負荷をかけて、部位ごとの回復期間を慎重に探る。

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