アメリカ草野球の魅力と個人での参加方法

アメリカ草野球の魅力と個人での参加方法 DO

アメリカ草野球の魅力と個人での参加方法

スポーティ

9月17日(日本時間18日)、ワイルドカード最終枠から勝ち上がったヤンキースがプレーオフ第1ラウンドで格上のインディアンズを9-7の僅差で下す金星を挙げ、翌週から始まる宿敵レッドソックスとの3連戦シリーズに駒を進めました。

メジャーリーグのファンなら「あれ? おかしいな」と思うでしょう。もちろん、私はメジャーリーグの話をしているわけではありません。南カリフォルニアの野球好きなおっさんたちが集まる草野球の話なのです。ワイルドカードだ、プレーオフだって、なんて大げさな、と思うでしょうが、本人たちはいたって真剣にやっているのです。公式ウェブサイトがチーム勝敗はもちろん、個人の成績までフォローしているのです。

この草野球リーグも世の中の多くの例に洩れず、2020-21年は新型コロナウイルスのパンデミックで中止になりました。私はリーグが再開した2022年からヤンキースに入り、2年目のシーズンを終えたところです。

ルーキーイヤーは.312だった打率も今年は.458へと急激に上昇しました、なんて自慢話がしたくてこの記事を書いているわけではなく(ホントです)、日本にはたくさんいるはずの子どもの頃は野球少年だったよって人に、ぜひアメリカでの草野球に目を向けてもらいたいと思うからです。

スポーツ+観光を楽しむ海外旅行のスタイル

ロサンゼルス・エンゼルスの春季キャンプが行われるアリゾナ州テンピ・ディアブロ・スタジアム

ホノルルマラソンでは参加者の半分以上を日本人が占めるという話を聞いたことがあります。空港にゴルフバッグやサーフボード、あるいはスキー板やスノーボードを持参する人もよく見かけます。好きなスポーツを楽しむために海外旅行をすることは珍しくないのですから、日本で人気の高い野球も潜在的なニーズは大きいのではないかと思います。

ところが、私はこの草野球リーグで私以外の日本人を一度も見たことがありません。リーグ戦とは別に、年に数回行われる数日間のトーナメントでも同様です。リーグ戦は約5か月の長丁場なので、日本から参加することは困難でしょう。しかし、数日間のトーナメントなら観光のついでに参加することは十分に可能なはずです。

もちろん、野球をやるためにはどこかのチームに入らなくてはいけません。そのハードルはとても高いことのように思う人も多いでしょうが、実はそれほど大変な話ではありません。

なぜなら、たいていのチームは人数が足りなくなるので、トーナメント期間だけ助っ人選手を補充しようとするからです。そのために所属チームをもたない個人がオンライン登録するシステムがあります。たとえば私はそのシステムを利用して、カナダやテキサスのチームに外部から参加したことがあります。そのあたりの詳しい事情は以前にも別の記事で紹介しました。

関連記事:メジャーのキャンプ地で行われるオヤジたちの夢の祭典。草野球ワールドシリーズその2 出場体験記編。

助っ人選手登録のやり方

私が参加しているリーグの例では、公式ウェブサイトに「Player Pool」という登録フォームがあります。名前、年齢、野球歴、希望ポジションなどを入力しておけば、選手を必要とするチームの管理者から連絡がきます。やり取りのほとんどはメールやテキストですので、英会話が苦手な人でもきっと何とかなります。

トーナメントは3日で5試合とか、7日間で最大10試合とか、とにかく過密スケジュールです。当然、怪我人が続出しますし、どのチームもそれに備えて余分にメンバーを揃えようとします。あなたの野球が多少ヘタクソでも、そんなことは問題にはならないのです。

参加費用もそれほど高額ではありません。直近の3日間トーナメントで100ドル(約1万4500円)でした。ゴルフで1ラウンド回るよりはるかに安いはずです。市民マラソンだって、100ドル以上するレースは珍しくありません。

あえてアメリカで草野球をするメリットとは

カリフォルニア州アーバイン市の公園内野球場

草野球なら日本でもできる。わざわざアメリカまで行く必要はない。そんな意見はもっともなのですが、あえて私がおススメするにはいくつかの理由があります。

まず、プレイ環境が素晴らしいことが挙げられます。リーグ戦は日曜日に付近の高校でフィールドを借りて試合を行いますが、そのほとんどが本格的なフルサイズの野球場です。内野・外野が天然芝、両翼100メートル以上、ダグアウトからブルペン、そして打撃練習ケージがついていることがふつうです。夜間照明も珍しくありません。

さらにトーナメントでは公園やプロの施設を使うこともあります。アリゾナやフロリダなど、メジャーリーグが春季オープン戦を行う球場で試合が行われるトーナメントもあるくらいです。

硬球に木製バット、つまりプロと同じ道具を使った本格的な野球ができることもアメリカ草野球が持つ魅力のひとつです。アメリカでも日本でも、高校野球までは金属バットを使いますので、硬球を木製バットで打ったことがある人は実はそれほど多くはないはずです。

金属バットでも木製バットでも同じようなものと思うかもしれませんが、実際にボールを打った感覚はかなり違います。技術的にはやはり木製バットの方が難しいでしょう。バットの芯に当てないと、ボールはまるで飛びませんし、下手をすると高価なバットがたった1球で折れてしまったりもします。

しかし、木製バットで硬球をクリーンヒットしたときの気分の良さは金属バットのそれとは段違いです。どれだけ気持ちが良いかを言葉で説明するのは大変困難なので、やはり実際にやってみてもらうのが一番なのですが、擬音で表現するならば、金属バットが「キーン」と甲高い音を出すのに対し、木製バットは「カーン」と乾いた音を出します。かえって分かりにくいでしょうか。

そして何より、リーグ戦もトーナメントも年代別に行われることが多いので、同世代の野球好きなアメリカ人と交流することができます。野球に言葉はそれほど必要ではありません。年甲斐もなく真剣な野球小僧たち(のなれのはて)と白球を追いかける楽しみを、ひとりでも多くの日本人に経験してもらいたいと思います。

身長160㎝の筆者と体格だけはメジャーリーガー級のチームメイト

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