コロナ禍でもアリゾナに集まる野球オヤジたち。2020年草野球ワールドシリーズ

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コロナ禍でもアリゾナに集まる野球オヤジたち。2020年草野球ワールドシリーズ

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米国内の野球ファンにとって、メジャーリーグのポストシーズンが行われる10月は特別な月です。新型コロナウイルス感染拡大の影響でさまざまな変更を余儀なくされましたが、2020年もワールドシリーズが行われています。

“October Baseball” とか “Fall Classic” などと呼ばれるこの季節に行われて、全く世間から注目されないもうひとつのワールドシリーズがあることは昨年ご紹介しました。
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アリゾナ州フェニックス近辺に点在するメジャーリーグの春季キャンプ施設を利用して行われ、今年で33回目となるこの大会、正式名称2020 MSBL/MABL World Seriesに、昨年に続いて今年も助っ人選手の1人として参加してきました。

2020年の特別ルール:新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年に予定されていたありとあらゆる スポーツイベントが中止、もしくは延期になりました。この草野球ワールドシリーズも今年は直前まで開催が危ぶまれていました。と言うより、当然中止になるのだろうなと予想していた人がほとんどだったでしょう。私自身、9月に入ってから、チーム運営者から参加希望を尋ねるメールが届いたときには驚いたくらいです。

野球は屋外スポーツですし、選手同士の接触も比較的少ないゲームです。それでもウイルス感染リスクがゼロではないことは、日本プロ野球の阪神タイガースやメジャーリーグのセントルイス・カージナルズなどの例を見ても明らかです。

ましてやこの草野球ワールドシリーズに集まってくるのは、感染すると重症化しやすいと言われる中高年の「高リスク集団」です。若く屈強なプロ選手たちよりもさらに慎重な姿勢が求められます。主催団体のMSBL(Men’s Senior Baseball League)が大会前に各チームに通達した2020年の主な特別ルールは以下の通りでした。

•フィールド外のすべての場所でマスク着用
•フィールド内でのマスク着用は義務ではないが、「強く推奨」される
•審判員は常にマスク着用
•ダウアウト内では全員がマスクを着用し、6フィート(約1.8メートル)のソーシャル・ディスタンスを保って座る
•プレイしていない選手はなるべくダグアウト以外の場所(観客席など)に離れて座る
•グローブ、ヘルメット、バットなどの共有は禁止
•試合前後の握手やハグは禁止
•試合ボールは守備側チームが提供し、イニングごとに交換(使いまわしはしない)
•マウンド付近での作戦会議は最大3人まで(コーチ、監督を含む)
•投手が口の周りを触ることは禁止。1回目は警告とし、ボールは交換。2回目以降はボールまたはボーク判定(進塁)

会場でマスク着用を促す看板。英語とスペイン語で併記されている。

これ以外にも、観客席でファンが10人以上のグループになることが禁止されましたが、元々そんなに多くの人が見に来ることは極めて稀なので問題にはなりませんでした。冗談なのか真面目なのか分かりませんが、「本日の入場者数は32人でした」と球場アナウンスがされたことがあります。

それよりも我々にとって切実な痛恨事は大会期間中「球場駐車場でのバーベキュー」が禁止されたことでした。

試合前のウォーミングアップ中。無観客試合でも入場者数制限があるわけではない。単に見に来る人がいないだけである。

アリゾナ州だからこそできたこと

このような対策を講じたとは言え、それでも大会の開催が許可されたのは、アリゾナ州という土地柄も大きな要因だったと思います。

例えば、私が住む南カリフォルニアでは、未だに公園でおおっぴらに草野球をすることすらできません。何人かが集まってキャッチボールをしているだけで、公園の管理人かひどいときには警察官が飛んできます。リトルリーグから高校野球まで、組織だったチーム練習や試合などはもっての外です。

しかし、アリゾナ州ではそうした規制はかなり緩和されていて、我々のような大人だけではなく、少年野球の試合も早い段階から許可されています。わざわざ別の州から定期的にアリゾナまで遠征してくるチームもあるそうです。

この違いは、地方と都市の感染被害の大きさによる相違もありますが、カリフォルニア州知事は民主党、アリゾナ州知事は共和党だという側面も見逃すことはできません。トランプ大統領が新型コロナウイルスに対して強気であることは周知のことですが、大統領を支持する共和党優位の州や地域はおしなべて規制緩和が早い傾向があるのです。

メジャーリーグでさえ、今年のポストシーズンはテキサス州とカリフォルニア州に分かれて開催されましたが、共和党知事のテキサス州では制限つきながらも観客を入れ、民主党知事のカリフォルニア州では無観客試合で行われました。

試合前の国家演奏もちゃんと行われた。右上の山頂に立っているのが星条旗。

炎天下で連戦に次ぐ連戦 超過密スケジュールでかつてない筋肉痛に

何はともあれ、野球が出来る喜びを胸に遠路はるばるアリゾナまでやってきた我々おっさん野球バカたちを待ちうけていたのは、この大会名物の超過密スケジュールでした。

初日にいきなりダブルヘッダー。しかも試合と試合の間には45分しかありません。実質的には18イニングをぶっ通しでやるようなものです。

2日目は1試合、3日前はまたダブルヘッダー、そして4日目にまた1試合と、4日間で6試合が行われました。さらに過酷なことに、この時期のアリゾナはまだ非常に暑く、大会期間中はずっと最高気温36~38度の快晴が続きました。

打席に立つ筆者。この後であえなく内野ゴロ凡退。

こうした炎天下での連戦におっさんたちの身体がもつわけはありません。負傷者が続出し、1試合ごとに人数が減っていきます。初日に17人いた私のチームメイトも4日目には11人になっていました。

負傷者とは言っても、デッドボールが頭部にあたるような深刻なものではありません。そのほとんどが走塁中にハムストリングスが攣ったり、足首を捻ったりして、走れなくなるタイプの怪我です。初日の第1打席で内野ゴロを打ち、一塁ベースの手間でうずくまってしまった気の毒な人もいました。

年を取ると、まず瞬発力が衰えてしまいますが、野球と言うゲームに夢中になっていると、ついつい昔のイメージ通りにダッシュをしようとして、筋肉が悲鳴を上げてしまうようなのです。

電光掲示板も使われた。筆者のラストネームはスペルミスで表示された。

私は今年もなんとか最後まで残ったメンバーに入ることができました。今回私が任されたポジションは主にショートストップ。守備の要とも言われることもある、運動量の多いポジションです。

私の野球が上手いわけではありません。ショートストップを守る予定だったもう1人の仲間が、試合中にエキサイトして相手チーム選手と口論になり、退場処分を受けてしまい、代わりがいなくなってしまったのです。

体力だけは人一倍の自信がある私ですが、さすがに疲れました。筋肉痛もかつて経験したことがないレベルでした。試合後ホテルに辿り着くと、翌日の試合に向けて、ひたすら疲労回復に努めることになりました。その際には、以前に書いた下の記事にある通り、休まずに動く回復方法が大変役に立ちました。
 
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普段の週イチ草野球なら、試合後はビールでも飲んでゴロゴロするだけなのですが、今回は脂汗が出るくらいの痛みに悲鳴を上げながらダイナミック・ストレッチを繰り返す羽目になりました。しかし、そのおかげで何とか最終日の9回裏までフィールドを走り回ることができました。

チームは残念ながらリーグ戦下位でプレーオフ進出を逃しました。そうでなければ、あとさらに2日間試合が続いたはずです。

そこまで私の身体がもったか、あるいはチームに9人選手が残っていたかはわかりません。来年こそはプレーオフ出場を目指し、頑張っていきたいと思います。

まだ全員が揃っていた頃のチーム写真。前列中央が筆者。

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