NPBの審判講習会に密着
DONPBの審判講習会に密着
NPB初心者向け審判講習会が1月21日に香川県のレクザムボールパーク丸亀(丸亀市)で開催されました。同月13日にやまぐち富士商ドーム(山口県山口市)で開催されたものに続き2回目です。
>>https://npb.jp/news/detail/20231205_01.html
今回は、この講習会の模様を紹介します。
初心者向けの講習会
前日からの雨も上がり、冷たい北風が吹くものの時おり薄日が差すレクザムボールパーク丸亀で、NPBが主催する初心者向けの審判講習会が開催されました。グラウンドには、「ヒーズアウト」「セーフ」と参加者の元気な声が響き渡ります。
NPBの現役審判員10名が講師となり、「投球判定、審判の基本動作、様々なプレーの見方など基礎的な審判技術講習」を行うのが特徴です。なお、NPB審判員のうち笹真輔さん、下村晃太郎さんら四国出身者も講師を務めました。
2018年からシーズンオフに行われており、今年で7年目になります。「審判員初心者、審判員としての活動に興味のある」人で、未経験者を含む中学生以上の男女を対象とし基礎的な内容を行うものとなっています。女の子も含む少年野球の選手や社会人らも合わせて100名が参加しました。プロアマを問わず本格的に審判員になりたい人向けというよりは未経験でも参加できる内容になっています。
分かりやすく楽しいレクチャーも
NPB審判員の木内久仁生さんが中心になりつつ進められた講習会。まず、最初はNPB審判員によるジャッジや「ゴー・ストップ・コール(走りながら一旦静止して「アウト」「セーフ」のコールを行うトレーニングで、これを繰り返す)」の見本が示されました。遠くまでよく聞こえるジャッジ、分かりやすいジェスチャー。間近でみるプロの審判員による動作と発声は迫力が感じられます。「アウト」「セーフ」のジャッジについてもレクチャーを受けた後、木内さんの「ジャッジは格好よくやろう」という参加者へのアドバイスもあり、参加者がグランドに広がって「ヒーズアウト」「セーフ」のジャッジや「ゴー・ストップ・コール」を体験しました。
参加者は4つのグループに分かれ、本塁、一塁、二塁、三塁でのジャッジについてレクチャーを受けます。それぞれの場所によって注意すべきポイントが異なり、担当講師役の審判員から丁寧な説明が行われます。スケッチブックにイラストを使い面白おかしく説明する講師もいるなど、参加者からは笑い声も聞かれました。
本塁でのレクチャーでは「ボール」「ストライク」判定時の球筋の見方(立ち位置、構え方など)分かりやすく説明があり、各類でもフォースプレイをジャッジする際の立ち位置や外野フライタッチアップの見方など具体的なプレーを想定してのレクチャーが行われました。
ジャッジに関することだけではなくルールの解説も短時間で分かりやすく説明が行われており、参加者にとっても十分中身の濃いものになったと思われます。
ジャッジは難しい?
後半では、本塁、一塁、二塁、三塁と別れてグループごとにジャッジを順に体験していきました。本塁では「ボール」「ストライク」の、一塁ではフォースプレイ、二塁ではタッチプレイのジャッジを体験し、三塁ではホワイトボードで審判員同士の連係プレー、所謂「フォーメーション」についてレクチャーがなされました。
ここでは、実際にレクチャーを受けたことをもとに体験するのですが、正確にジャッジするのは本当に難しいというのが印象です。子供たちだけではなく大人たちも必死に「ヒーズアウト」「セーフ」と声を上げる姿があちらこちらで見られました。この講習会の意義は、NPBの審判員から直に指導を受けられるだけではなく、実際にグランドで体験できることだといえます。
最後にはグランドに全員が集まり、最初と同じように、「ゴー・ストップ・コール」を参加者全員で行いました。最初と違ったことはといえば、大きな声で動作も堂々と「審判員」らしく見えたことです。
この後、閉講式で質疑応答が行われました。木内さんからは、「審判員のなり手を増やしたい」「審判員に興味をもってもらいたい」という話があり、大人の参加者からはルールについてファン目線での質問や「〇〇審判員は、彼女はいますか?」といった子供からの可愛い質問も出ました。
最後に「どうやったら(NPBの)審判員になれますか?」という子供からの質問。
これには講師役の審判員から「毎年12月にNPBアンパイア・スクールがあり、これに合格すれば独立リーグに派遣。その後にみやざきフェニックス・リーグで評価されたらNPB育成審判として採用されます」と採用への流れを説明。そして「お待ちしています」と子供たちに声がかけられました。
実際にNPBで審判員になるのは非常に狭き門ですし、一軍の試合に出場できるようになるまでは更に数年がかかりますが、審判員の仕事に興味を持ってもらうイベントとしては毎年開催する意味は大きいといえます。
プロの審判員も野球が好き
今回の講習会で講師を務めた審判員の福家英登さんは、審判は一人では務められないから審判員同士のコミュニケーションや仲間意識は大切だと講習会の最後を締めくくりました。また、2月から始まるキャンプに参加できるのも「ワクワクする」と言う福家さんの言葉はとても印象的でした。審判員のプロとしてのレベルの高さとプライドも感じるとともに、選手やファンと同じく「審判員も根っから野球が好きだ」と感じた瞬間でした。
審判員経験者のスキルアップを目的とした講習会ではないものの、これから審判員をやりたい、野球が好きだという人を対象とした実技講習会の必要性は感じられたイベントでした。アマチュアでは審判員のなり手が少ないという話を聞くこともあります。きわどいプレーでは審判員が批判に晒されることも決して珍しくありません。審判員への理解が深まり、これを契機に審判員を目指す人が増えるこのような取り組みが今後も続いていってもらいたいですね。