『最強のスポーツビジネス』発売記念!池田純氏インタビュー

『最強のスポーツビジネス』発売記念!池田純氏インタビュー SUPPORT

『最強のスポーツビジネス』発売記念!池田純氏インタビュー

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横浜DeNAベイスターズ前代表取締役社長である池田純氏が発起人となり、2017年4月から開講した「Number Sports Business College」。

Number Sports Business Collegeは、「2020の先を見据えた、スポーツの未来を考える」をコンセプトに、スポーツをビジネスとして考え、実行に移せる人材を輩出していくことを目的としています。毎回、各競技団体やスポーツビジネスの世界で活躍している方をゲストに招き、現状や課題を学ぶことができます。

鈴木大地スポーツ庁長官や川淵三郎氏、為末大氏、堀江貴史氏など豪華な講師陣が登場し話題となった第1期の内容が、1冊にまとまった『最強のスポーツビジネス』が、4月20日(金)より全国書店にて発売されました。

今回、『最強のスポーツビジネス』の発売を記念して、池田純氏へ独占インタビューが実現。「Number Sports Business College」(以下、NSBC)の魅力について、聞きました。

改革を起こし、成功している人たちから、最先端のビジネス構造を学ぶ

ーーNSBCにおいて、他のスポーツ講座との差別化している点を教えてください。

NSBCは、過去のものをまとめて教えるような、日本でよくある講義スタイルではありません。最先端にいる人たちから、生の話を聞くというスタイルをとっています。ここが他とは圧倒的な差別化になっています。

日本では研究したものを教えてもらう講義が多いですが、アメリカの大学で今一番人気がある授業は、最先端の人を呼んで、最先端の話をしてもらうものです。スタンフォード大学やハーバード大学でもすごく人気が高いです。

ーーどんな新しいメソッドでも、いずれは情報鮮度が落ち、賞味期限が切れてしまうということでしょうか。

ビジネスはどんどん進化していくので、過去の研究しつくされたものを勉強しても仕方ないと思っています。

横浜DeNAベイスターズにいた時は、スポーツビジネスという言葉はあったけれど、スポーツエンターテイメントという言葉はありませんでした。そこを私が、スポーツエンターテイメントビジネスにしていったことで、ベイスターズは人気になっていきました。それが、今では野球界の常識になっていて、どの球団も取り組んでいる。

だからこそ、皆が研究し、使い古されたノウハウではなく、最先端を知ることが重要なのです。

ーー登壇者の方々は最先端の改革を起こしている人たちになると思いますが、選定についてどのような基準を設けているのでしょうか。

まずは、改革して成功している人。あとは、一言にスポーツといっても、競技や国が変わると全然ビジネスの構造が違います。私は、全部のスポーツのビジネス構造を知りたいので、私自身が知りたいと思う分野のエキスパートにお声がけしています。

ーーNSBCでは座学ではなく、ゲストのプレゼンテーションそして、池田氏によるクロストークが行われ、受講者を含めて活発に議論される場があると聞きました。

聞く人が誰かによって、話し手から引き出せるものが全然違うと思っています。その分野に詳しくない人が聞くと、わかっている範囲の質問しかできないですが、私は色んなスポーツビジネスを見ている中で、突っ込んで聞いてみたいことを聞いているので、全部の回の講義を聞いてみると、新しい発見だらけです。
受講者は様々な分野の人が集まっているので、その分野を知っているからこそ出来る質問をすることで、自分のビジネスに使えることもあるでしょうし、知らなかったことを知って、新しく興味を覚えることもあるでしょう。だから毎回、刺激的な内容です。

ーー聞き手の部分についてお話がありましたが、受講者はどのような属性の人が多いのでしょうか。

スポーツビジネスをやってみたいという人も当然多いけれども、自分で何かスポーツの周りにあるビジネスを開発したいと考えている人や、全然スポーツとは関係ないけれど、スポーツビジネスからアイディアを得て、自分のビジネスに活かしたいという人もいます。
プロチームで働きたいという人も結構多いのですが、その中で上を目指していける人は限られています。そのため、マイナースポーツや、これから立ち上がっていくスポーツなど、プロのチームで働く以外のビジネスの方が、私は可能性が大きいと思っています。

勝敗の結果より、いかにビジネスとして捉えるか

ーーこれまでの著書の中でも、ベイスターズ経営時の採用では、ファンよりも他のビジネスで活躍した経験をもつ人を積極的に採用したと書かれていました。それはスポーツ界に新しい風を取り込もうという意識からなのでしょうか。

ファンの人が働くと、勝ち負けに話が寄って行きがちなのです。勝ち負けに、話が寄っていってしまうスポーツ界の人って、結構多いのですが、勝ち負けではなく、ビジネスとして捉えられる人が重要になってきます。
先日、元・新日本プロレス会長の木谷高明さんとも話したのですが、木谷さんはもちろんプロレスが好きです。でも、試合の勝ち負けではなく、団体が持ちうるものすべてをコンテンツとして捉えてきたことが、新日本プロレスが成功してきた理由だと話していました。
選手至上主義や勝ち負け至上主義になっていってしまうと、試合の勝敗以外のエンターテイメントが作れない状況になってしまいます。

ーーとは言え、勝敗はスポーツの重要な要素だと思います。ある程度エンターテイメントを重視して進めても、勝ち負けは後から付いてくるという考えなのでしょうか。

そうですね。ベイスターズでも実際、勝ち負けの結果が付いてきました。最初はガラガラでお客さんに見てもらえない状態だった時は、ミスするとヤジが飛ぶわけです。けれど、満員の状態で、ミスしたり、結果が出ないと、ため息に変わるんですよ。何万人という観客のため息なんて聞きたくなくて、やはり歓声が聞きたいので、それが力になります。満員にすることが、勝利への大きなモチベーションになり、とんでもない火事場のクソ力になるのでしょう。

ーーしかし、メディアは勝敗だけを取り上げがちですよね。池田さんはベイスターズ時代にメディア戦略にも力を入れていた印象がありましたが、この部分にジレンマはありませんでしたか。

過去はそうでした。その中で、ベイスターズでは、ビジネスの側面を伝えてもらうようにしていました。Number Sports Business Collegeはその延長線上にあります。

Numberもかつては試合結果を伝えるメディアでした。私がやりだしたのは、Numberにページをもらって、球団経営に関してのコラムを書き始めました。良いことも悪いことも全部書きました。それがスポーツ誌でスポーツビジネスのことを書き始めた最初です。スポーツの勝ち負けしか伝えてくれなかったメディアの世界が、ビジネスのことも伝えてもらえるようになった。この5年で、スポーツの世界でビジネスという着目点を持つように変わってきました。
メディアはニュース性があり、着目しないといけないことだったら書いてくれると思っています。その価値に値することをしていかなければなりません。メディアは過去に報じたことは、報じてくれません。例えば、私がベイスターズでやったようなプロモーションを、いま他球団でやってもなかなかメディアは扱ってくれないでしょう。だからこそ常に最先端を見続けていないといけないのです。
過去の焼き直しの講義ではなく、もっと最先端を知り、自分で新しい価値を生み出せるビジネスマンを輩出しないと、日本のスポーツは発展していきません。

NSBCは、最先端のオマージュする素材を収集できる場所

ーー過去の著書の中で、コピーとオマージュの違いについて言及されていました。NSBCで学んだことを、それぞれの受講者がオマージュしてもらうことが理想的な形なのでしょうか。

コピーはそのまま真似をして誰でもできることですが、オマージュというのは、そこに敬意がなければいけません。敬意とは何かと言うと、発展進化させることです。同じことをするだけではニュースにはならないですよね。ニュース性を付加して、お客さんを楽しせなければ、口コミにならないですし、お客さんの心は掴めないでしょう。

ーーベイスターズ経営時には、音楽業界などスポーツ業界以外からもヒントを得たそうですね。

私はあらゆるところにオマージュする素材が転がっていると思っています。Number Sports Business Collegeもスポーツ業界だけでなく、オリンピックの演出をしていたライゾマティクスの人を呼んだり、冒険家の人を呼んでいて、色々な世界の話を聞くことができます。
音楽でいうと、私は先日のブルーノ・マーズの来日公演に行ったのですが、ステージ背景の照明の技術レベルなんかは圧倒的に進んでいました。スポーツ業界の外の世界で、どんどん進んで行っている技術を見続けていることが大事で、その中で、予算とも照らし合わせながら、何をスポーツ界に取り込んでいくかを考えていくことになります。
スポーツ業界の人は、スポーツだけを見ている人が多いのが現状です。私たちは、作る側として、競技性以外の要素をどれだけ作ることができるかが大切です。

ーー現状だと日本のスポーツは、海外の事例をコピーしている部分が多いと思います。そういう中で、日本のスポーツの”オリジナル”として発展できる部分はどのようなところでしょうか。

私の中で一番興味あるのは、スポーツを活用した街づくりです。海外ではスポーツが文化になっているけれど、日本はまだ遅れている状況です。これから高齢化社会や少子化といった多くの社会課題を抱えた日本であるからこそ、スポーツを活用した街づくり、社会課題の解決ができると思っています。
働き方改革などで、日々の楽しみを自分の街に求めるようになっていく中で、日本にはすごいスタジアムやアリーナが街にあるかと言ったら、無いですよね。スポーツで高齢化社会の問題を解決したり、街のランドマークになりうるものを建てて、そこに人が集まったり。スポーツを利用した街づくりが、まだまだできていない部分だと考えているので、沢山の社会課題を抱える日本でそれをどうやって解決できるのかというのが、楽しみな部分です。

ーー最後に、『最強のスポーツビジネス』は、どんな人に読んで欲しいか教えてください。

新しいスポーツビジネスが日本に生まれていけば、この国はもっと元気になると思っています。
また、この本には様々な課題に対して、解決策を見出した事例が沢山書かれています。スポーツのみならず、ビジネスのアイディアが欲しいと思っている人にとっても、沢山のヒントが見つかると思います。

Number Sports Business Collegeでは2018年4月から第二期の講義がスタートしました。NSBCならではの豪華ゲストを講師に招き、より具体的なスポーツビジネスに関する議論、そして実践の場が用意されます。『最強のスポーツビジネス』で興味を持った方は、門戸を叩いてみてはいかがでしょうか。




インタビュー:萩原拓也(Sportie編集部)
文:萩原拓也、五十嵐万智(Sportie編集部)